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近い・太一

俺はなっちゃんを傷つけたくなかった。

なっちゃんが好きな音楽や美術の話を楽しそうにする姿が好きだった。俺となっちゃんは趣味は全くといっていいほど合わなかったけどお互い笑顔で話を聞いていた。

会う回数が少なかったからか気付いたら14年も経っていた。互いに異性の友人が居ることは知っていたから嫉妬も喧嘩もしなかった。

だから、別れを言おうと思った。

こんなにも曖昧で喧嘩もなにもない関係を続けるなんて辛かった。

14年も待たせて先も見えず、なっちゃんにこっちに来いだなんて言えない。言ったら絶対についてくることはわかっているから。

けれどもうあの姿は見れない。右隣で笑う姿も、いつも帰り道は強いこと言ってるのに別れ際に両手で顔を覆って泣く姿も、浴衣姿で散歩したときに綺麗なほおずきを見つけて駆け寄ってキラキラした目で見ていた姿も。

もうすぐ夏がくる。会うのは春以来だ。

最後に最高の笑顔を見て、見せて 俺たちは未来へ歩こう。

最高の分岐点にしよう。

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