表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆笑三姉妹〜陽翔・結音誕生から、燈真・灯乃、彩羽・悠翔誕生まで  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

221/225

青柳光子×柳川優子 28歳 双子女優の素顔

 ■ 『青柳光子×柳川優子 28歳 双子女優の素顔』

 ― 公開記念 独自ロングインタビュー ―


 映画同日公開から1週間。

 SNSでは「泣いた」「心が浄化された」「双子の表情が全然違う…!」と

 連日トレンド入りしている。


 そんな中、M&Yがゆっくり言葉を語る 独占ロングインタビュー が公開された。


 ◆ Q1. 撮影で一番印象的だった瞬間は?

 ● 青柳光子(小樽ロケ)


 光子

「小樽のあの港……朝4時入りで、まだ暗い中ね。

 海霧がすーって漂って、

 “ここで凪が再生するんだ”って直感したんです。


 凪が初めて泣くシーンは、

 演技じゃなくて……あの景色に胸が震えて泣いてしまった。

 監督からは『それでいい』って言われて、

 あの瞬間の感情は一生忘れません」


 記者

「濡れ場を撮ったのも、小樽の港町の旧建物だったとか?」


 光子

「はい。石造りの小さな部屋で……

 あの静けさの中で、

 あのシーンの“息遣い”が全部自分に跳ね返ってくるんですよ。

 怖かったけど、

 終わった瞬間に監督に抱きしめられて泣いてしまいました」


 ● 柳川優子(仙台ロケ)


 優子

「私の作品は仙台が舞台で、

 “震災で時間が止まった心が、ゆっくり動き出す”ような話なので……

 街の空気がまるごと物語に寄り添ってくれました。


 特に、広瀬川の橋の上で瑠璃が

 『私もう逃げない』って言うシーン。

 風がね……本当に優しく吹いたんです。


 監督が『これ、奇跡のカットだよ』って涙ぐんでて……

 本当に忘れられない瞬間です」


 記者

「優子さんのラブシーンは、とても繊細でしたね」


 優子

「ありがとうございます。

 仙台の夜景をバックにしたシーンで、

 “心を許した瞬間”をどう表すか……

 共演の藍沢くんと何度も話し合いました。


 瑠璃は、怖くて逃げ癖がある女の子だから、

 『抱きしめて』って言えないんですよ。

 それを表現するために、

 指先の震えとか視線の揺れに全部入れました」


 ■ Q2. ロケ地巡りツアーがものすごい人気です!


 映画公開の翌週には、すでに旅行会社から

「M&Y映画ロケ地とうたの旅」

 がリリースされており――


 小樽ツアー(光子の作品)

 ・夜明けの港散策

 ・劇中に登場した石造り倉庫

 ・凪が歩いた旧運河沿い

 ・朝焼けホットミルク体験

 仙台ツアー(優子の作品)

 ・瑠璃が一人で泣いた広瀬川沿い

 ・商店街のロケ地

 ・恋の“告白ベンチ前”

 ・劇中カフェ特製デザートセット


 どちらも連日満席。

 旅行会社のコメントは、


「ここ数年で例を見ない人気です。

 特に女性グループと親子女子旅が非常に多いです」


 ◆ Q3. ロケ地巡りの人気、どう受け止めていますか?


 光子

「小樽を歩いてくれるのがすごく嬉しいです。

 あの町の“静かさ”が映画の核だったので……

 観光客の方が『映画の余韻が残ったまま歩ける』って言ってくださるのが

 本当にありがたいです」


 優子

「仙台の皆さんがすごく温かくて……

 『映画をきっかけに、また来てほしい』って言ってくださってて。

 ツアーの方が商店街で美味しいもの食べたりしてくれるのが、

 地元の方にも喜ばれてるみたいで、ほんとに嬉しいです」


 光子

「私たちもロケ地にお礼参りしたいよね」


 優子

「うん。冬になったらまた行きたい。

 小樽の港、雪の季節絶対きれいよね」


 光子

「仙台は光のページェントがあるやん。

 絶対ロマンチックやん」


 優子

「映画の続編撮れそうやん」


 二人

「(笑)」


 ■ Q4. お互いの映画を観た感想は?


 光子

「優子の……ずるいくらいうまかった。

 もう“息してるだけで役”やんって思ったもん」


 優子

「光子の演技、まじで化け物やった。

 あの濡れ場の表情、反則やで?

 客席で思わず涙出たもん」


 光子

「いやいや優子のあの“告白できない表情”が反則やって!」


 優子

「いや光子の“救われていく表情”の方が……!」


 記者

「喧嘩せんでください(笑)」


 二人

「(笑いながら)すみません!」


 ◆Q5. 最後に、これから映画を見る人へ


 光子

「どちらの映画も、

 “生きてたら痛いこともあるけど、それでも人は優しくなれる”

 というメッセージを込めました」


 優子

「泣きたくなったら泣いていいし、

 少し冷たい風が吹く日には、

 この映画をふと思い出してもらえたら嬉しいです」


 光子

「そして……小樽も仙台も最高やけん!」


 優子

「ツアー行ったら絶対楽しめるよ!」


 二人

「ぜひ観て、歩いて、感じてください!」


 ■ ロケ地巡りツアー、社会現象へ!


 公開から1ヶ月以内で――


 小樽市 観光客前年比 +280%

 仙台市 小劇場通りSNS投稿数 10倍

 “凪の倉庫前”“瑠璃の橋” 聖地化

 地元商店の売り上げ急増

 ロケ地カフェ、毎朝整理券発行


 “光子の朝焼けスポット”は

「恋が叶う朝日ポイント」として女子高生の間でバズり、

 “優子の橋”は

「泣いてから告白する聖地」として大人女子の聖地に。


 テレビでも特集が組まれ、

 M&Yの映画は “令和のロケ地ブームを作った双子” と呼ばれるようになる。





 朝の光がカーテンのすき間から差し込んで、

 スマホのカレンダーの「2051年7月7日」の文字をやわらかく照らしていた。


 1.「20代最後の七夕」


 青柳家の寝室。

 翼の腕まくらに顔をうずめていた光子が、画面をちらっと見てニヤリとする。


 光子

「……七夕やん。うちらの誕生日やん。

 しかも、20代ラストイヤー突入やん」


 翼

「うん。29歳も、よろしくお願いします、奥さま」


 そう言って額に軽くキスを落とされ、光子はふにゃっと笑う。


 光子

「なんかさ、10代のときは、29歳の自分なんて

 “もう完全に大人代表”って感じやったけどさ」


 翼

「実際は?」


 光子

「中身、あんま変わっとらん。

 ただ、爆笑ネタの在庫が10倍に増えただけ」


 翼

「誇らしそうに言うことじゃないけど、

 それが光子の“仕事”やけんね」


 同じ頃、柳川家の寝室。


 結音が「ママ〜、おきて〜。きょう、ママのたんじょうび〜」と

 布団の上でぴょんぴょん跳ね、その向こうで陽翔が

「おかあさん、29しゃいおめでとうございます」と

 なぜか敬語でお辞儀している。


 優子

「……ちょっと待って、朝から年齢をきっちり祝うのやめてくれん?」


 拓実

「事実は事実やけんねぇ。29歳、おめでとう」


 優子

「ありがと。

 なんかさぁ……中学の頃は、

 “結婚して子どもおって、世界飛び回ってて”なんて、

 夢物語やと思いよったけど」


 拓実

「今、ほぼ全部やっとるやん」


 優子

「……せやね。

 でも、一番の誤算は――」


 陽翔&結音

「ママがいちばん爆笑大魔王なとこ〜」


 全員

「(大爆笑)」


 2.静かな会話 ―「変わったもの」と「変わらんもの」


 昼すぎ。

 博多の街を見下ろす、小さなカフェの個室。


 光子と優子は、久しぶりに“2人だけ”で顔を合わせていた。

(キッズたちは、美鈴園長先生(=おばあちゃん)たちが総力戦でお預かり中)


 光子

「……静かやね」


 優子

「静かやね。

 キッズの“うんばぁ砲”が飛んでこんだけで、

 こんなに耳って休まるんやね」


 運ばれてきたアイスコーヒーにストローをさしながら、

 2人はふっと笑う。


 優子

「20代最後って聞くと、

 “ちゃんとせな”“大人の女として”とか

 いろいろ考えそうになるんやけどさ」


 光子

「うちら、10代のときから“ちゃんとしてなかった”けんね」


 優子

「そうそう。

 笑わせて、鳴らして、時々泣かせて。

 あの頃からずっと、それしかやってない」


 光子

「でもさ――」


 少しだけ真面目な顔になる。


 光子

「結婚して、子どもが生まれて、

 由香さんや瑛一くんみたいに“人生の底”を見た人たちとも

 一緒に歩くようになって……

 “笑わせる”って、あの頃思ってたより

 ずっと責任重大な仕事やなって思う」


 優子

「わかる。

 笑いって、ただの“おもしろい”じゃ足りんくなったよね。

 “生きててよかった”って

 ふっと思える瞬間を作るもんなんやな、って」


 光子

「それでも、うちらが目指すとこは変わらんっちゃんね」


 優子

「うん。

 “世界でいちばん、人を笑わせて泣かせる双子”」


 光子

「それと――」


 2人同時に、同じ言葉を重ねる。


 光子&優子

「“子どもたちの味方でおる”」


 一拍置いて、2人は顔を見合わせ、微笑んだ。


 優子

「10代のころから言いよったもんね。

 “いつか、自分たちの笑いと音楽で

 世界のどこかの子が救われたらいいね”って」


 光子

「気づいたら、LAの子どもたちとか、

 ジュネーブとか、ウクライナとか、

 いろんなところの笑顔と繋がっとった」


 優子

「でも、一番近くで笑ってほしいのはさ」


 光子

「陽翔と結音であり」


 優子

「燈真と灯乃であり」


 2人

「彩羽と悠翔、やんね」


 再び、2人で笑う。


 3.「20代最後の、ささやかな決意表明」


 夕方。

 小倉家のリビングには、

 ささやかな誕生日ケーキと、

 キッズ手作りのクラッカー(紙くず大量発生型)が準備されていた。


「ハッピーバースデー、マ〜マ〜♪」

「ママ、だいしゅき〜!」


 子どもたちのハモりと、

 後ろで手拍子を送る翼と拓実、美鈴と優馬、美香とアキラたち。


 ロウソクの火が揺れる中、

 光子と優子は、顔を見合わせる。


 優子

「……なんかさ。

 有名になったり、海外行ったり、映画出たり、

 いろんな“すごそうなこと”やってきたけど」


 光子

「最強に贅沢な瞬間って、

 結局ここやなって思うとよ」


 優子

「うちらの一番の“ステージ”って、

 このリビングやもんね」


 光子

「29歳の抱負、言っとく?」


 優子

「言っとこうか」


 みんなの視線が集まる中、

 2人はそろってケーキの前に立つ。


 光子

「えー、29歳になりました。

 20代ラストイヤーも、変わらず――

 世界中のこどもたちと、大人たちも含めて、

 よう笑わせて、よう泣かせて、よう生きていきたいと思います」


 優子

「そして、忙しくても、どれだけ遠くまで行っても、

 “ただいま”って帰ってくる場所と、

 “おかえり”って言ってくれる人たちを

 絶対に守りたいと思います」


 光子

「あと――」


 優子

「あと?」


 光子

「お酒で幼児化モードは、

 控えめに……できたらいいなぁと思います」


 優子

「そこだけ“弱気”やん!」


 リビング、大爆笑。


 翼

「まぁ、そこは変わらんでいいかもね」


 拓実

「うん、“うちらのママ”感が増すけんね」


 子どもたち

「ママ、しゃんしゃい〜」「ママ、よんしゃい〜」


 全員

「(さらに大爆笑)」


 笑い声に包まれながら、

 2人はロウソクの火に、静かに願いを込めて吹き消した。


 4.夜、ふたりだけのメッセージ


 その夜。

 子どもたちが寝静まり、家の明かりが落ちたあと。


 ベランダに出た光子と優子は、

 並んで夜空を見上げる。


 博多の街明かりの向こうに、

 かすかな星たちが瞬いている。


 優子

「なぁ、光」


 光子

「ん?」


 優子

「10代のうちらに、なんか言うとしたら、何て言う?」


 光子は少し考えて、笑って言った。


 光子

「“だいじょうぶ。

 あんたら、想像しとるより、ずっとしぶとくて、

 ずっと優しくなるけん”かな」


 優子

「……なんか、それええね」


 優子は、夜空に向かって小さく手を合わせる。


 優子

「じゃあ、私は――

 “そのままアホのままでいて。

 その代わり、誰かが泣いとったら、

 そばで笑ってやれる人になって”って言うかな」


 光子

「それ、うちら今、ちゃんとやれてる?」


 優子

「完璧にはムリやろうけど……

 少なくとも全力ではやっとる」


 光子

「なら、上出来やね」


 2人は顔を見合わせ、

 いつものあの、いたずらっぽい“爆笑前夜”の笑顔になった。


 光子

「よし。20代ラストも――」


 優子

「世界中まとめて、整骨院送りにしてやろか」


 2人

「ふふっ。いや、それはちょっと言い方ぁ!」


 夜空の下、

 20代最後の一年が、

 また新しい笑いと音楽と涙で、静かに動き出していった。



 5.「29歳になりました」七夕スペシャル生放送


 7月7日 夜7時。

 都内・某ラジオ局 第1スタジオ。


 ブースの外には、七夕飾りがこれでもかと吊るされ、

 短冊にはスタッフやリスナーからの願い事がびっしり。


『爆笑発電所 presents

 M&Yの「29歳になりました」七夕スペシャル!』


 オープニングジングルが流れ、

 ON AIRランプが赤く灯る。


 優子

「みなさんこんばんは〜!

 七夕生まれ、今日で29歳になりました、柳川優子です!」


 光子

「同じく七夕生まれ、29歳になりました、青柳光子です。

 地球のみなさんも、火星と木星付近のみなさんも、

 今夜はどうぞよろしくお願いしま〜す」


 優子

「ちょっとエリア広げすぎやろ」


 スタジオ内にクスクス笑いが広がる。


 ◆ いつものノリで始まる、いつもよりちょっとだけ特別な夜


 優子

「いや〜、29ですよ、29。

 ついこの前まで“JK双子”とか言われとった気がするんですけどね」


 光子

「ついこの前はさすがに盛っとる。

 でも、20代があと一年しかないって実感は、

 …あんまりないね」


 優子

「ないね。

 ただ、“体力の回復がワンテンポ遅れる”っていう

 地味な変化は感じとる」


 光子

「そこリアルなこと言うなや」


 メールの山が、スタッフの手元で積み上がっていく。


 ディレクター

「じゃあさっそく、“29歳おめでとうメール”読んでこうか」


 ◆ 由香&瑛一からのサプライズメッセージ


 優子

「ラジオネーム・“ボールはともだち親子”さんから」


 光子

「あ、これ絶対あの親子やん」


 優子が読み上げる。


 優子

「『光子さん優子さん、29歳のお誕生日おめでとうございます。

 昔の私は、正直、ラジオから聞こえてくる笑い声が少し眩しくて、

 遠い世界の話みたいに思っていました。

 でも今は、あのとき勇気を出して手紙を書いて、

 みなさんと出会えて、本当に良かったと心から思っています。


 瑛一は、相変わらずボールと友達です。

 そして私は、あの頃より少しだけ、自分と友達になれた気がします。

 これからも、私たち親子の“笑顔の先生”でいてください。


 博多ドンタクス新入部員・由香 より』」


 光子

「……うわ、反則やん、それは」


 優子

「スタジオやのに、涙腺ゆるむやつ来た」


 ディレクター

「ちょうどね、電話つながってます。由香さん?」


 スピーカーから、少し緊張した声が聞こえる。


 由香

『……あ、もしもし。由香です』


 光子

「由香さん! ありがと〜! もうね、メールの時点で

 泣きそうになっとったよ」


 由香

『いや、泣かせるつもりはなかったとですけど……

 でも、改めて言いたくて。

 あのとき、笑いと音楽で救ってくれて、ありがとうございました』


 優子

「いやいや、うちらも救われとるけんね。

 由香さんがおるから、“笑いはやり直す勇気を支える”って

 本気で言えるようになったけん」


 由香

『……あかん、電話でも泣きそうです』


 瑛一

『あ、かわりまーす!』


 一気に元気な声に変わる。


 瑛一

『光子さん、優子さん、誕生日おめでとうございます!

 オリンピック金メダル取ったら、

 優勝インタビューでまた名前出すけん!』


 光子

「約束したけんね? そのときは、

 うちら全力で“全国応援おばちゃんモード”入るけん」


 優子

「コートサイドで“おらぁ〜!ボールは友達やろがい!”って

 叫ぶけんね」


 瑛一

『それはちょっと恥ずかしいけど……やってほしいです!』


 スタジオ中が笑いと拍手に包まれた。


 ◆ 世界中の“支部”から入電ラッシュ


 続いて、爆笑発電所・各支部からも中継ラッシュ。


 ・江津支部:

 春野家の楓ちゃんが

「おねえちゃんたち、29しゃいおめでと〜。

 大人になっても、う○ちネタ言っていいからね〜」

 → 全員ズッコケ。


 ・札幌支部:

 小雪と晴馬が

「吹雪の中でも爆笑を忘れない二人に乾杯です」と

 キメ台詞を送った直後、

 後ろから環奈の娘・美咲の「ふぶきより、ぶはぁ〜!」が入り、

 スタジオ崩壊。


 ・LA支部:

 孤児院の子どもたちが拙い日本語で

「ミツコ、ユウコ、ハッピーバースデー!」と合唱。

 光子、完全に声が震える。


 ・ウクライナ支部:

 ソフィーアから

「あなたたちの笑いは、戦火の夜にも灯りを残しました。

 29歳も、世界に“息をする光”を届けてください」という

 しっとりコメント。


 優子

「いやもう、これ、普通のバースデー特番ちゃうやん。

 なんか“人生振り返り番組”になっとるやん」


 光子

「まだ29やけんね? やめて? 最終回みたいにするの」


 6.「変わらない約束」を、あえて言葉にする


 番組も終盤。

 ディレクターからメモが回ってくる。


 《最後に、ふたりからの“宣言”もらえますか》


 光子

「……じゃあ、真面目モード入ってもよか?」


 優子

「いつもスイッチ壊れとるけど、今日は特別にどうぞ」


 2人はマイクに向き直る。


 光子

「改めまして。

 10代の頃から、うちらを見守ってくれた人。

 途中から知ってくれて、一緒に笑ってくれてる人。

 そして、今日初めてラジオつけたら、

 “なんやこの双子”ってなってる人も、全部含めて」


 優子

「うちらからの、29歳の宣言です」


 光子

「うちらはこれからも、

 “笑いと音楽で、生きる力をちょっとだけ増やす”

 そんな仕事を、全力でやっていきます」


 優子

「しんどいときに無理に笑えとは言わん。

 でも、笑える日がまた来たとき、

 その笑いの中に、うちらがちょこっとだけ混ざっとったら、

 それで十分幸せです」


 光子

「20代最後の一年も、失敗もかまん、スベってもかまんけん」


 優子

「そのかわり、

 いつも誰かの“味方側”に立つ大人でありたいと思います」


 光子

「29歳になっても、

 M&Yは、相変わらず――」


 2人

「アホで、まじめで、全力です!」


 スタジオのガラス越しに、スタッフが大きく拍手する。


 ジングルが流れ、

「それではまた来週〜!」の声と共に、ON AIRランプが消えた。


 7.電源が落ちた後の、ちいさな本音


 生放送が終わり、

 すっかり夜も遅くなったラジオ局の廊下。


 マネージャー

「おつかれ〜。今日はよう喋ったねぇ」


 光子

「なんか、人生一本分くらい喋った気がする」


 優子

「でも、ああやっていろんな場所から

 メッセージもらうとさ」


 光子

「“ちゃんと歳とってきよるんやな”って、逆に実感するよね」


 優子

「わかる。

 昔は“全国のリスナー”って言われても、

 どこかふわっとしとったけど」


 光子

「今は、顔が思い浮かぶ人が

 日本中、世界中におる感じ」


 優子

「それが、ちょっとこわくて、めっちゃ心強い」


 マネージャー

「いいこと言うやん。

 はい、じゃあこのまま空港ね。

 明日は福岡戻って、幼稚園組と“しゃんしゃい・よんしゃい砲”ね」


 光子&優子

「結局そこに戻るんかい」


 8.七夕の終わりに ― 未来への小さな予感


 その夜。

 ベランダで空を見上げる前に、

 光子はこっそりSNSを開いた。


 《#MアンドY29歳》《#七夕双子誕生日》《#世界一の爆笑姉妹》

 トレンドには、お祭りのようなハッシュタグが踊っている。


 スクロールしていくと、ふと目に留まるコメントがあった。


「いじめられて学校行きたくない日、

 ベッドの中でこっそりラジオ聞いてます。

 まだ“生きててよかった”とは言えないけど、

 この声があるなら、もう一日だけがんばってみようかなって思えます」


 光子

「……一日、か」


 優子も隣からスマホを覗き込む。


 優子

「一日でいいやん。

 “もう一日”の積み重ねが、気づいたら一年になって、

 そのうち“生きててよかった”に変わるかもしれんし」


 光子

「うちらもそうやったもんね。

 あのとき、美鈴お母さんと優馬お父さんがおらんかったら、

 ここまで来れとらんかったと思う」


 優子

「今度は、うちらが

 “もう一日だけがんばってみようか”って思える

 きっかけ側におる番やね」


 光子

「うん。

 その代わり――」


 優子

「その代わり?」


 光子

「30代入ったら、

 “しゃんしゃいモード”から“じゅうさんしゃいモード”くらいには

 成長できたらいいなって思う」


 優子

「いや、そこは一生“しゃんしゃい”でよかろうもん」


 2人は同時に吹き出した。


 そこから先は、さっきまで書いた通り。

 ベランダで夜空を見上げ、

 “10代の自分たちへのメッセージ”を交わして、

 ロウソクの火と同じように、ゆっくりと一日が閉じていく。


 9.まだ「終わり」じゃないから


 2051年7月7日。

 20代最後の誕生日。


 笑いながら、ちょっと泣いて、

 また笑い直して締めくくられた一日。


 その翌日も、

 キッズの爆走ハイハイは続くし、

 幼稚園では陽翔と結音が新ネタを量産し、

 燈真は「恋愛相談カウンセラーもどき」として

 クラスメイトの相談を受け、

 灯乃は「はやく幼稚園行きたい」と駄々をこねる。


 その少し先には、

 30歳になる二人の姿も、

 それでも変わらず“爆笑大魔王”を続けている未来も、

 きっと待っている。


 でも今はまだ、

 29歳になったばかりの七夕の夜。


 光子と優子は、

「うちら、まだまだこれからやね」と笑いながら、

 そっと両手を合わせる。


 ——どうか、明日も誰かが

 “もう一日だけがんばってみようかな”って思えますように。


 そんな願い事を、

 短冊には書かずに、心の中だけで結んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ