福岡高校に顔出し
冬の福岡高校。
11月初めの冷たい風が、校門の銀杏並木を揺らしていた。
土曜日の午後、部活の時間。
吹奏楽部の部室前に、見慣れない四人が立っていた。
青柳光子・柳川優子・赤嶺美香・赤嶺アキラ
全員、今やプロのミュージシャン。
でも、今日はあえて「普通のOB・OGの顔」で、福岡高校に戻ってきていた。
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◆ 音楽室前 ― 静かな帰還
「……懐かしかねぇ、この匂い」
光子が、音楽室の前で深呼吸をした。
金管と木管、古い譜面の紙の匂い、ワックスの床。全部、あの頃のまま。
優子が扉の上のプレートを見上げる。
「“吹奏楽部・音楽室”。……変わっとらんね」
後ろで、美香が少し笑う。
「そりゃ変わらんよ。
私がここおった頃から、プレートあのまんまやけん」
アキラは、手に持ったトランペットケースを軽く持ち上げた。
「なんかさ……
ここ戻ってくるってわかった瞬間から、ずっと心拍数おかしいんやけど」
「何ね、世界ツアーの本番より緊張しとるやん」
優子がツッコむと、光子も「それな」と笑う。
そこへ、ガラッと音楽室のドアが開いた。
⸻
◆ 前原先生、現る
「おー、来とったね。待っとったよ」
顧問・前原先生。
すっかりベテランの風格で、白髪が混じり始めたが、笑うと昔のまんまの優しい顔だった。
「先生、お久しぶりです!」
四人の声が一度に重なって、廊下に響く。
前原先生は、目尻に少し涙を浮かべながら、肩をすくめた。
「まさか福岡高校吹奏楽部から、
世界ツアー回っとるプロが四人も出るとは思わんやったよ。
……いやぁ、自慢の教え子たちたい」
美香が照れくさそうに笑いながら、頭をかく。
「先生のおかげですよ。
あのときの“基礎練やり直しー!”がなかったら、今ここにいません」
アキラも苦笑い。
「“リズム悪い奴は、まず歩け!”って言われて、
体育館の周りぐるぐる走らされたの、未だに夢に出ますもん」
「お前ら、いらんことまで覚えとるなぁ」
そう言いながらも、前原先生の顔はうれしそうだった。
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◆ 誰が来たか、まだ誰も知らない
「それじゃ、紹介するけん。中、入って」
ドアが開くと、音楽室の中では、現役部員たちが譜面を並べていた。
クラリネット、サックス、トランペット、ホルン、トロンボーン、チューバ、パーカッション……
総勢60名ほどの大所帯。
だが、四人が入ってきても、反応は薄い。
(……シーン)
フルートの一年生が、こそっと隣にささやく。
「え?誰?保護者?」
「いや、なんか大人の人たち来たね……OBさん?」
「なんか、あの黒髪ポニテの人、どっかで見たことある気はするっちゃけど……」
みんな、
「声は聞いたことあるような気がするけど、まさか本人とは思わない」
という、あの独特の空気。
前原先生が前に出る。
「はい、整列ー」
部員たちがざっと並ぶ。
「今日は、ちょっと特別ゲストを連れてきた。
この福岡高校吹奏楽部の、大先輩たちや」
一旦、間を置いてから――
「ファイブピーチ★とM&Yのメンバー、
青柳光子・柳川優子。
それから作曲家でトロンボーン奏者の赤嶺美香、
トランペット奏者の赤嶺章。
うちのOB・OGです」
一瞬の静寂のあと――
「えええええええええええええええええええ!!?」
音楽室の天井が割れそうな悲鳴が上がった。
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◆ 祭り会場モード、突入
「ちょ、ちょっと待ってください先生!!」
トランペットパートの二年生男子が、譜面台を倒しそうになりながら立ち上がる。
「その……M&Yって、あの……
“しゃんしゃいママ”と“よんしゃいママ”の、あの!?」
光子が吹き出す。
「紹介の仕方よ!」
優子も肩を震わせて笑いながら、ぺこりと頭を下げた。
「M&Yの、しゃんしゃいママ担当・柳川優子です」
「同じく、よんしゃいママ担当・青柳光子です。
……て、役職ちゃうけどね!?」
爆笑。
後ろの打楽器パートの女子が、ドラムスティックを握りしめて震えていた。
「え、え、え、え……
ファイブピーチ★とファイブシード★、
毎年ライブ行ってるんですけど……
今、夢ですかコレ……?」
ホルンの一年生が、友達の袖を引っ張る
「ねぇ……あの人たち、うちらの教科書に載ってた人たちよね……?
“21世紀音楽史の歩み”の……」
「教科書の人が目の前におるってどういうこと?教科書から出てきたと?」
音楽室、完全にお祭り状態。
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◆ 軽い挨拶 ― でも、言葉は本気
前原先生が、手を叩いて場を落ち着かせる。
「はいはい、一旦静かに」
光子が前に出て、マイクもないのに通る声で話し始めた。
「改めまして。
福岡高校吹奏楽部OGの、青柳光子です。
担当はチューバとエレキベース。
いまはM&Yとファイブピーチ★で、いろいろやらかしてます」
「同じくOG、柳川優子です。
打楽器とドラム担当。
いまは、全世界の整骨院を忙しくさせよる女です」
どっと笑いが起きる。
美香が、少し柔らかく微笑んで頭を下げた。
「私は赤嶺美香。旧姓・小倉。
トロンボーン吹きで、作曲家もやってます。
福岡高校のこの部屋で、音楽に救われた一人です」
アキラも、少しだけ緊張した顔で続けた。
「赤嶺章です。
トランペットとサックス吹いてます。
今は春介と春海の父ですって言った方が、
みんな分かりやすいかもしれんね」
「えっ、双春のパパさん!?」
どこからか、そんな声が飛ぶ。
⸻
◆ ミニ・トーク&質問タイム
前原先生が、いたずらっぽく笑う。
「せっかくやけん、質問タイム、いっとくか」
すぐに、あちこちから手が上がる。
質問①「どうやったらそんなに上手くなれますか?」
クラリネットの一年生。
「光子先輩、どうやったらそんなに……
低音、安定して吹けるようになりますか?」
光子は少し考えてから、にやっと笑った。
「“上手くなろうとせんこと”やね。」
ざわっとする部員たち。
「もちろん、練習は死ぬほどやるとよ?
でも、“うまく吹かなきゃ”って思うと、
身体が固まって、音が細くなるっちゃん」
チューバケースを軽く叩く。
「“この楽器で、目の前の人を笑わせちゃろう”“泣かせちゃろう”
って思って吹いた方が、結果的にうまくなる。
うちも、M&Yも、ずっとそうしてきたかな」
前列でメモを取っていたフルートの女子が、小さくうなずく。
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質問②「緊張で手が震えるとき、どうしてましたか?」
トランペットの男子。
「アキラ先輩。
本番前、どうしても手が震えるんですけど……どうしてました?」
アキラは苦笑い。
「俺、今でも震えるよ?」
「えっ」
「ただ、ここからがポイントでね。
**“震えと仲良くなる練習”**をした」
部員たちが前のめりになる。
「手が震えると、“ああダメだ”って思うやん?
でも、“うわ、俺今日も生きとる〜、アドレナリン出よる〜”って、
あえて楽しむ。
その代わり、基礎練は死ぬほどやって、
“震えても当たる”ところまで体に入れる」
優子が横から口を挟む。
「あと、トイレは早めに行っとくことね。
ステージ上がったあと、お腹ギュルギュルなったら、
どんな名演も台無しやけん」
爆笑。
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質問③「M&Yみたいに、笑いと音楽を両立させるには?」
打楽器パートの女子。
「優子先輩たちみたいに、
音楽も笑いも全力でやるにはどうしたらいいですか?」
優子は、にやーっと笑う。
「簡単よ。
“自分が一番笑えるボケを、まず自分でやる”」
「え、自分で笑っていいんですか?」
「いいっちゃろ!
自分が楽しくないのに、人は笑わせられんけんね。
わたしも光子も、リハーサルから爆笑しながら、
でもメトロノームだけは鬼みたいにきっちり合わせとる」
光子が付け足す。
「笑いも音楽も、**“リズム”**が命たい。
どっちも外さず真剣にやるけん、
“爆笑しよるのに音はガチ”っていう、変な生き物になったと」
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◆ 一緒に吹こうか ― 合奏スタート
前原先生が、手をパンと叩いた。
「よし。しゃべりも良かったけど、
やっぱ“音”を聴かせてもらおうかね」
光子がケースを開け、愛用のチューバを取り出す。
ベルに息を吹きかけ、軽くロングトーン。
(ぶおぉぉぉぉぉん……)
ただのロングトーンなのに、
部屋の空気が一瞬で“プロの現場”のものに変わる。
優子は、スネアとセットを確認しながら、スティックで軽くリズムを刻む。
美香がトロンボーンをスライドさせ、
アキラがトランペットを試し吹きする。
「曲は……やっぱり、これかな」
美香がニヤリと笑う。
「エルガーの《威風堂々》、第1番。
うちらが高校のとき、死ぬほど練習したやつ」
部員たちの顔が一斉に輝いた。
「うわ、マジでこのメンツと威風堂々吹けると!?」
「一生分の運使い切ったかもしれん……」
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◆ 合奏 ― 威風堂々、笑っても泣いても本気
前原先生がタクトを持つ。
「じゃあ――
福岡高校吹奏楽部 × OB・OGスペシャルバージョン。
《威風堂々》、いきまーす」
静寂。
そして――タクトが振り下ろされる。
Tpのファンファーレ。
ClとFlが柔らかく支え、Hrがハーモニーを厚くする。
その中に、アキラのトランペットが自然に混ざり、
高音でキラッと光るフレーズを重ねる。
中低音のうねりの中で、美香のトロンボーンが
さりげなく“歌い方”を引っ張る。
低音パート、チューバ。
光子が「これでもか」とばかりに、
太く、まろやかな音をフロアに広げた。
(ドォォォォン……と床から響き上がるような低音)
後ろで吹いていた後輩チューバ男子は、
その音圧に半分涙目になりながら必死で食らいつく。
打楽器セクション。
優子のライド、スネア、バスドラが、
まるで“ひとつの楽器”みたいにうねり出す。
(タッ・タッ・タカタカ・タッ)
(ドンッ ……ドドンッ)
そのリズムに、パーカッションの後輩たちも
「うわ、これがプロの“ノリ”か」と、
笑いそうになりながらも必死で乗っていく。
中盤の盛り上がり。
木管セクションが歌い上げるメロディ。
そこに、
光子がふと、低音でちょっとだけ“遊び”を入れる。
(ズン、チャッ、ズン、チャッ)と
ほんの少しだけスウィング感を滲ませる。
優子がニヤッとして、シンバルを
ギリギリ真面目のラインであおる。
「そこ笑わすライン攻めてくるんやね!?」
クラリネットパートの何人かは、
笑いをこらえながらも、目は真剣。
そして、クライマックス。
あの有名な旋律がホールに満ちる。
トロンボーン、美香が
ほんの一瞬、音を“前に出す”。
それにホルンが乗っかり、
トランペットが上から包み込む。
歌っているのは、
ただの「エルガー」ではなかった。
この部屋で、
過去・現在・未来の福岡高校吹奏楽部が
全部まとめて鳴っているような、
そんな音だった。
最後の和音が、天井まで駆けのぼって――
静かに消える。
一瞬の無音。
そして――
「「「うわあああああああああ!!!」」」
拍手と歓声と悲鳴と、
なぜか「ひゃぁぁぁ!」という謎の叫びが複雑に混ざり合った。
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◆ 泣いて、笑って、整骨院送り未遂
トロンボーンの二年生女子が、ハンカチで目をこすりながら叫ぶ。
「ずるいです……!
プロって、なんでそんなに楽しそうに吹くんですか……!」
優子がスティックをクルッと回して、笑う。
「楽しいけんよ?」
光子も頷く。
「“うまく吹かなきゃ”から解放されたら、
勝手に楽しくなってくるっちゃん。
もちろん、そこまで行くには、
みんなみたいに基礎練ガチでやる必要はあるけどね」
パーカッションの男子が、腰を押さえながら言う。
「笑いこらえるのに、腹筋と腰、もげるかと思いました……
これ、長時間聴いたら整骨院送りだ……」
「よう耐えたね。
全国の整骨院を守ったんは君たちたい」
美香が笑うと、
みんな、またどっと笑った。
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◆ 最後のメッセージ
時間も押してきた頃、
前原先生が、最後にマイクを渡すような仕草をした。
「じゃあ、最後に一言ずつ。
後輩たちに、メッセージ頼む」
美香から。
「……私が高校生の頃、
家も、心も、いろいろボロボロでした。
でも、この部屋に来て、音を出してるときだけは、
“自分でいていい”って思えたんです」
静かに部員たちを見渡す。
「うまく吹けない日もあるし、
先生に怒られてへこむ日もあると思います。
でも、“ここに来れば音を出せる”って場所を、
どうか、守ってあげてください。
自分自身のために」
拍手。
アキラ。
「俺は……えーっと、そうね。
音楽の道に行きたいっていう人もおるかもしれんし、
全然別の道に進む人もおると思う」
トランペットを軽く掲げる。
「でも、どんな仕事に就いても、
“ここで本気でやった時間”は絶対裏切らん。
音楽がうまい下手やなくて、
“自分と仲間と向き合った時間”が財産になるけん。
どうか、いま隣におる仲間、大事にしちゃってください」
また拍手。
優子。
「うちはね――
この部屋で、“泣きながら笑う”ってことを覚えたと」
少し照れくさそうに笑う。
「悔しくて号泣しながら、
合奏のあとに謎のギャグ大会始まったりね。
……でも、あの時間があったけん、
今、しんどい現場でも“笑い”で踏ん張れる」
パーカッションセクションを見て、ニッと笑う。
「真面目にやる。全力でふざける。
両方できる人間が、一番強い。
うちらはそう信じとるけん、
みんなも“真剣にふざけて”よかよ」
最後は光子。
「……うちはさ」
少しだけ喉が詰まり、息を整える。
「この学校で、いろんなもの失いかけて、
でも、そのたびに“もう一回立ち上がろう”って、
ここの仲間と一緒に決めたんよね」
チューバを抱えたまま、部員たちの顔を一人ひとり見るように視線を動かす。
「夢は、何でもいいと思うと。
プロになってもいいし、ならんでもいい。
でも、“ここで吹いとった自分”を、
一生、笑って思い出せるようにしてほしい」
ふっと笑って、肩をすくめる。
「それができたら――
将来、どんな仕事しとっても、
たぶん、めっちゃカッコいい大人になっとるよ」
音楽室に、
自然と拍手が広がった。
⸻
◆ 記念撮影&祭りの後
そのあと、
楽器を持っての集合写真、
パートごとの写真、
なぜか“変顔オンリー写真”まで、
スマホの容量が限界ギリギリになるほど撮影会。
もちろん、光子と優子は
「変顔のレベルがプロ」と評されていた。
最後に、前原先生がしみじみとつぶやく。
「まさか、小倉家の三姉妹と、その仲間たちが、
ここまでの存在になるとはねぇ……」
美香が笑う。
「先生が“もう一回やり直そうか”って言ってくれたからですよ。
あの一言がなかったら、
多分、今ここに誰もいません」
光子と優子も、声を揃える。
「先生、ありがとうございました!」
前原先生は、照れくさそうに頭をかいた。
「よかよか。
その代わり――」
ニヤッ。
「また、後輩たちの前で吹きに来い。
そのときは、もっと整骨院送り増やしてええから。」
「任せとってください!!」
四人の声が、音楽室に響いた。
⸻
音楽室を出たあとも、
廊下の窓からいつまでも手を振る後輩たち。
スマホ越しに、
「やばい、今日のこと一生忘れん」「吹部やっててよかった」
そんな言葉が、SNSのタイムラインに飛び交う。
その夜。
福岡高校吹奏楽部の公式アカウントには、こう投稿された。
「本日、奇跡みたいな一日がありました。
10年後、20年後、私たちも
“あの先輩たちみたいな大人になりたい”――
そう思わせてくれる時間でした」
そして、
その頃ちょうど、
光子と優子の自宅のナビが、静かにこうつぶやいていた。
「……なんかさ。
ああいうの見せられたら、
ぼーっと走ってる場合じゃねーよね」
車も、人も、音楽も。
まだまだ、進んでいく未来の途中だった。
⸻
◆ 第1章‐2 ナビ、突然の「クラシック強化モード」発動
福岡高校吹奏楽部・音楽室。
現役部員たちの大歓声に包まれながら、光子・優子・美香・アキラがにこやかに手を振って入ってくる。
そこへ——
壁際に置いてあった 部室用のAIナビスピーカー から、突然ブォンッと青いランプが点灯した。
ナビ
「——特別ゲスト来室確認。
それでは本日の おもしろ強化学習 を開始します」
部員たち
「えっ!? 今日そんな予定あったっけ!?」「ナビ先輩しゃべり方変わっとる!」
光子
「ちょ、なんか嫌な予感するっちゃけど……」
優子
「絶対ろくなことにならんやつやん……!」
ナビのライトが赤に点滅した。
ナビ
「ではまず……流します。
エルガー:『威風堂々』第1番。iTunesより。」
\ドォーーーーン!!!!!/
音楽室のスピーカーから 校歌よりデカい音量 で「威風堂々」が突然再生される。
部員
「うおおお!?」「なんで今それ!?」「テンション上がるけど状況がわからん!」
光子
「ねぇナビ、アンタなんで『威風堂々』なん?」
ナビ
「吹奏楽部=『威風堂々』の初歩です。常識です。チコちゃんに叱られますよ?」
優子
「完全にチコちゃんモード入っとるやん!!」
美香
(吹き出しながら)「こらナビ! うちの後輩ば叱らんでよか!」
エルガーの壮大なテーマが部室に鳴り響く中、
ナビは突然 “鬼のようなクイズ” を出してきた。
⸻
◆ ナビ突然の“地獄クラシック抜き打ちテスト”
ナビ
「はい問題!
エドワード・エルガーのフルネームと、生年月日を答えなさい!
5秒以内!
答えられなかった人は……叱られます!」
部員
「は!? フルネーム!?!?」「誕生日!?」「無理無理無理無理!!」
光子
「うちらでも危うい問題出すな!!」
優子
「っていうか“叱られる”て何ね、チコちゃんか!」
ナビ
「5……4……3……2……1……
はい知らない〜〜〜!!!!!」
\どぉぉぉん!!!(謎の爆発SE)/
ナビ
「ぼぉ〜〜っと生きてんじゃねーよ!!!」
部室、大爆笑。
部員
「ギャーー!!ほんとに叱ってきた!!」
「AIに怒られるの初めて!!」
「ナビ先輩やばすぎ!!」
アキラ
「おいナビ、ちょっと落ち着け……! あとで設定戻すけん!」
ナビ
「嫌です。今日は“チコちゃん拡張芸人モード”なので。」
光子
「なんその地獄みたいなモード!!」
美香
「ちょっと誰よ、ナビにそんなアップデート入れたの!」
優子
(手を挙げて)「……あの、ごめん。うちやった。」
全員
「やっぱりお前かぁぁぁぁ!!!!!」
⸻
◆ ちなみにナビの正解発表
ナビ
「では答えです。
エドワード・ウィリアム・エルガー(Edward William Elgar)。
1857年6月2日生まれです。
覚えましょう。テストに出ます。」
部員
「出んわそんなテスト!!」
光子
「でも地味に覚えたね……!」
優子
「ナビのせいで強制的に暗記させられたわ……」
美香
「まぁ、これも吹部のいい思い出になるやろ」
アキラ
「……いや絶対忘れんわこれは」
部室は笑いで床が抜けそうなほどの騒ぎになり、
この日を境に 福岡高校吹奏楽部のナビは“チコちゃんAI” と呼ばれるようになった——。
⸻
⸻
◆ 第1章‐3 ナビ、意味不明の“距離当てクイズ”を始める
威風堂々の余韻がようやくおさまり、
部員たちはゼェゼェ言いながら椅子にへたり込む。
そこへナビのライトがピカッと点灯。
ナビ
「では第2問です。
あなたの自宅から福岡高校までの距離を……正確に答えなさい!!!
徒歩換算でも、直線距離でも可。
10秒以内!!」
部員
「いや無理無理無理!!!」
「GPSもってこんのに距離わかるわけないやろ!!」
「ナビ先輩!何の学問なんこれ!!?」
光子
「ナビ、どういう方向性で部員鍛えたいわけ!?」
ナビ
「吹奏楽部員は基礎体力が命です。
通学距離は重要です。ぼーっと通学するなとチコちゃんも言ってます」
優子
「チコちゃんそんなこと言わん!!!!!」
10秒カウントが始まる。
ナビ
「10……9……8……
答えられなければ……叱ります。」
部員A
「えっと、うちは……たぶん2.5kmくらい……?」
部員B
「うち自転車で15分やけん……たぶん3km弱……?」
部員C
「そもそも距離計ったことないんですけど!!」
ナビ
「3……2……1……
はい、知らない〜〜〜!!!」
\どーーーん!!(爆裂SE)/
ナビ
「ぼぉ〜〜っと通学してんじゃねーよ!!!」
部室、再び大爆笑。
部員たち
「ぎゃーー!!!また怒られた!!!」
「チコちゃんAI容赦ない!!」
「でもちょっと自分の距離知りたくなってきた!!」
光子
「ナビのせいでみんなGoogleマップ開き始めよるやん……」
優子
「まさか吹奏楽部で“通学距離調査”が始まるとは……!」
美香
「ていうか、
なんで“フルネーム→誕生日→通学距離”なん?
ジャンル飛びすぎやろ!!」
アキラ
「ナビ、お前絶対アップデートしてはいけん方向に進んどるぞ……」
ナビ
「まだまだ行きます。次は“自宅から学校までの標高差”です。」
全員
「やめんかーーーーー!!!」
⸻
◆ さらに地獄の追いクイズ
ナビ(無表情の音声)
「標高差を把握することで、通学時の消費カロリーを予測できます。
吹奏楽部は運動部です。」
部員
「知らんかった……!」
光子
「いや運動部やけどそういう計算せんでもよか……!」
優子
「ナビ、完全に科学者モードとチコちゃんモード混ざっとるっ!」
美香
「これ現役の子、帰ったら絶対家で距離調べるよ……」
アキラ
「まぁ……みんなで笑ったけん結果オーライやな」
ナビ
「今日の学習は以上です。
次回は“エルガーの身長体重クイズ”です。」
部員
「出るかそんな情報!!!!!」
⸻
福岡高校吹奏楽部の2050年12月訪問は、
ナビのチコちゃん暴走回 として語り継がれることになった——。




