3-13.教授の本気
「君の言う事をまとめるならばこういう事ではないかな?」
私は転移魔法が発動できた時の事、
収納魔法や飛行魔法を使える様になった時の事、
今まで転移魔法を使おうとしても使えなかった事を
グリア教授に説明した。
「心底認めたくは無いし、
学者としてこの様な事を口にしたくも無いが、
君の言い分から仮説を立てるとするならば、
君はイメージ通りの魔法を使う事が出来る。」
「そう、これについてはあえて魔法と呼ばせてもらうよ。
これは断じて、魔術では無い。理論的ではないのだよ。」
グリア教授は心底嫌そうにそう語る。
「そして、これには二つの条件がある。
一つは、魔力が足りている事。
一つは、イメージが正確である事。」
「おそらく転移はそのどちらも満たしてはいなかったのだろう。」
なるほど。
なんとなくしっくり来る。
「似たような仕組みの収納魔法についてだが、
君のイメージについては一端置いておこう。」
「君はどうやら何かしらの確信を持って
不可思議な知識を信じている。
この根拠を君が説明する気がないのも、
もうわかっているからね」
異世界転移については言わなかったけど、
私の話した日本で得た知識の内容からなにか察したらしい。
本当にこの人優秀だな。油断ならない。
「収納魔法の魔力消費が少ない理由については、
君の話していた並行世界という考えが近いのではないかな?
ただし、この場合はそのまま全く同じ世界が存在する
という意味での平行世界の事ではなく、
世界が隣り合って存在している事についてだ。」
「わかりやすくまとめるとだな、
空間の壁を行先を指定せずにただ壊せば
隣の世界に繋がっているという事だ。」
「おそらく指定先の空間に繋げるという行為、
そしてその繋がりの大きさによって、
大きな魔力消費が発生しているのだはないだろうか」
「空間に穴を開け、広げ、固定するという行為に
魔力消費は大して必要ないのだろう。
君はおそらく隣り合った世界との間に穴を開けているのだ。
だからどこからでも同じ場所に繋ぐ事もできるのだろう。」
「そして、その世界は時間の進みが存在していない。
もしくは極端に遅いのかだ。
入れたものの状態が保たれるのはそのためだ。」
「飛行魔法の件は今更言うまでもないだろう。
君は飛べるものだと確信しているのだろうから」
「そして、今回転移魔法が上手くいったのは、
二つの条件が満たされたからだ。」
「君の家まで空間を繋ぐだけなら、君の魔力で足りた。
そして今回はイメージも正確だった。」
「隣の部屋から本を転移した時と同じ程度の魔力消費という事は、
実は距離と魔力消費量は関係ないのかもしれない。
これは私の研究結果とは大いに異なるが、事実は事実だ改めよう。」
「もしくは、物質を移動させる際に大きな魔力が消費されているのかもしれない。
これについては検証してみればわかることだ。」
「さらに言うならば、収納魔法で利用している空間を経由するならば
魔力消費量は軽減できる可能性が高い。
わかるかい?一度、収納空間へ穴を開けて、
再度、収納空間の中から目的地への穴を開けるのだ。
こうすれば、空間同士を直接繋げるという行為をカットできる。」
「まあ、収納空間内の時間が止まっているという事が
どう影響するのかは未知数なのだが。
それでも取り出すことが出来ている以上、
その点も制御出来る可能性はある。」
うん。まあ、凄いなこの人。
ただの危ない人じゃなかった。
いあまあ、もうそんな事は疑ってなかったよ?
本当だよ?
というかそんなチート能力持ってたの私?
意識して使えば出来ないこと無くなるんじゃない?
これが異世界転移の特典?
転移放置キメられたから、誰も説明してくれなかったよ?
私は思わず、言われた通りに試していた。
まず収納空間への穴を開けてそこからさらに自宅への穴を開ける。
そうイメージして魔法を発動する。
あっさり、そこには自宅の光景が広がっていた。
殆ど魔力の消費もない。
「まだそこには入るなよ?
入ったら時間が止まって、空間の狭間から
一生出られないかもしれないからね。」
グリア教授は特に驚きもせず、
私に忠告する。
確かにその辺りは検証が必要だ。
それでも、遂に転移魔法を習得した。
だから、ノアちゃんそんな顔で睨まないで?
「舌の根も乾かぬ内に何やってやがるです」って顔しないで?