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3-11.研究

「なるほど。君は面白い事を考えるものだね。

魔術の知識に造詣が深いわけでもないのに、

私の発明した転移魔術と似たことを既に知っているとは。」



あれから私達はグリア教授の元を毎日訪れ、

転移魔法の改良を進めていた。


電池をきっかけに、

私は様々な意見を求められ、

アニメや漫画で得た知識を披露していく。



電池については、

魔石が近い役割を果たす。


魔石には魔力を貯める事が出来る。


しかし、純粋な魔力として取り出す手段が無い。

あらかじめ魔石の種類に応じた属性の効力を発揮できるだけだ。

火の魔石なら温度の上昇や火の生成、

水の魔石なら温度の低下や水、氷の生成などだ。


通常の魔石にはそこまで多くの魔力は込められない。

とても転移魔術の魔力には程遠い。


そして、これは魔術の知識だけでなく、

鍛冶師の技術等も必要になってくるそうだ。

どんな効果を発揮させられるかは鍛冶師の腕次第。


ドワーフ爺さんはあっさり作ってくれるが、

本来この技術を持つものは殆どいないらしい。

やっぱりあの爺さん凄い人のようだ。


町に帰ったら爺さんにも相談してみよう。




グリア教授は私の教えた話の中でも、

ワームホールの知識に食いついた。



現在やっている転移は物を直接引き寄せている。


実はこの時、引き寄せる際に一瞬、

空間に穴を開けているらしい。


そこから物を引っ張り込むのではなく、

その穴を広げて固定できないか挑戦してみる事になった。


今ある術式を途中から変えていく形だ。

ただし、やること自体は一工程減るので、

効率が良くなるかもしれない。らしい。





私の魔法の基本部分は殆ど独学だ。

最初はギルドで借りた書物で基礎を学び、

転移前の知識を元に実戦の中で改良を続けてきた。


幸い、その手の漫画やアニメ、ゲームは

それなりに見ていたのでイメージは掴みやすかった。

そのせいか、一部は感覚で使っているものすらある。



対してグリア教授は極端な知識専門だ。

だからか、彼女は魔法の事を魔術と呼ぶ。


彼女いわく、この世界の研究者の間では魔法と魔術の呼び分けは

時たま論争になるそうだ。ちなみに魔術派は圧倒的に少数だとか。


面倒なので初対面の相手には魔法で通しているようだが、

私が気にしない事を知ると、魔術と呼ぶようになった。

研究者の面倒なこだわりはどこの世界でも変わらないらしい。


ちなみにこの世界の一般知識としては、

魔法と魔術は呼び方の違いでしかなく割と混合されている。


私自身もそのあたりは適当だ。


「どっちでも通じるんだし良くない?」

とうっかりグリア教授に言ってしまった時は、

長々と彼女の演説を聞かされる羽目になった。

魔法大学にいる間は気をつけよう・・・

まあ、他の人と喋ることなんて無いだろうしいらぬ心配だ。



本人の申告通り、あまり魔法の才能は無いようだ。

発動出来ないにも関わらず魔法の研究に心底惚れ込んでいる。

もはや執着と言ってもいいくらい熱心だ。


何が彼女をそこまで急き立てるのだろうか。

また話が長くなりそうなので聞く気は無いけど。




そうして、グリア教授が魔術式を組み、

私がそれを発動させを繰り返していく。

そんな日々がしばらく続いていた。




する事の無いノアちゃんとセレネには悪いけど、

王都で目の届かないところに行ってしまうのは不安だ。


二人共毎日暇そうにしている。

最初は私がいつ倒れるかとハラハラして見守っていたが、

そんな心配も無いようだとわかると、手持ち無沙汰になったようだ。


ノアちゃんならそこらのゴロツキは相手ではないが、

魔王眷属一行の誰かが潜んでいるとも限らない。



どうしよう。

大学内を出歩くくらいなら探知できないわけでもない。

一生敵に怯えているわけにもいかないのだから、

ある程度は自由に動いてもらうべきかもしれない。


私達の町では自由に出歩いていたけど、

やっぱり土地勘の無い王都というだけでどうしても不安になる。



「アルカ大丈夫ですよ。確かに退屈ですけど、

私達もアルカに何かあったら困りますので側にいます!」


ノアちゃん優しい。

隣で凄い勢いで頷いているセレネもね。





良いことを思いついた!

私は収納魔法からオセロを取り出す。


「「やった~!!」」


その声に反応したのか、グリア教授がこちらに注目する。

その時、私は収納魔法を消すところだった。


「君!今何をしたのだ!」


「話してなかったっけ?これは収納魔法よ。私のオリジナル。」


「聞いていないぞ!なぜそんな事を隠していたのだ!

空間の穴を固定する手段あるじゃあないか!」


「あ!」


「その魔術を教えてくれたまえ!」


「・・・ごめん、それは無理」


「なぜだ!いや、それだけの魔術だ秘匿したい気持ちもわかる!

条件はなんだ何が欲しい!さあ、言いたまえ!」


「違うのよ、そうじゃなくて、

この魔法はなんとなくで使ってるから術式に落とし込めないのよ

こんなの出来ないかな~って頑張ったら出来たというか・・・」


「はあ!?そんなわけあるか!全ては積み重ねだ!

結果が先にあるなどあり得ない!」


「そう言われても・・・」


「グリア教授!落ち着いてください!

アルカが困っています!」


「困っているのは私の方だとも!

さあ、わけのわからん事を言っていないで、

吐きたまえ!君も転移魔術を求めているのだろう!」



それからしばらく、荒ぶるグリア教授に詰め寄られた。


確かに忘れてたのは悪かったけど、そんな事言われても

私は学者じゃないんだから知らないわよ!



グリア教授が落ち着くまでにかなりの時間を要するのだった。




「これだから天才という奴は!

いつでも理屈に合わないことばかりする!」


ようやく落ち着いたと思ったけど、

何やら若干別の思いを刺激してしまったようだ。



「甚だ不本意だが、君の言い分を認めるとするならばだ。

一先ず指定の座標に空間の穴を開けるところまでの術式を用意しよう。

その先は君の好きにやりたまえ。私はその結果を観察させてもらう。

私ならばそこから理論に落とし込む事もできるはずだ!」



また無茶を言う・・・

感覚で使ってる物をさらに他のものと組み合わせるって

本当に出来るのだろうか。



何故か収納魔法の魔力消費は殆どない。

そもそも、どこに収納されているのかも実はよくわかっていない。


私は今まで気にしていなかったが、指摘されると若干気にならない事もない。


飛行魔法の方はどうなんだろう。

こっちも私のオリジナルだ。

そして例のごとくなんとなく使ってる枠だ。


この教授に解析してもらえば、

魔力消費量の問題が解決するかもしれない。


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