3-4.今後のこと
それから私とギルド長は話し合った。
私はセレネを保護すると決めた以上、
魔王とその眷属一行への対策をする責務がある。
そのためには、勇者と聖女を立ち向かえるように
していかなければならないだろう。
私自身も魔王に立ち向かう手段を見つける必要がある。
特別な力が得られないのであれば、
今使える手段を強化していくしかない。
そして今足りないのは攻撃力だ。
勇者と魔王に共通する耐久力。
聖女のみが魔王の耐久力を減少させられる。
それは、神に与えられた力だと思われる。
そして、その耐久力を上回る力さえあるなら、
神の力が無くともダメージを与える事ができる。
このあたりの事も、私の考察をまとめてギルド長にも伝えた。
「模擬戦でもしてみたらどうだ?」
「気安く言ってくれるわね。
クレアを誘ったら最後、
下手したら死ぬまで戦わされるのよ?」
まあ、でもせっかくクレアというサンプルがあるのだから、
検証しないわけにはいかない。
それはわかっているのだが・・・
いずれにせよ、今の私の力が足りていない事はわかっている。
そして、これは普通に鍛錬するだけでは足りない。
魔王の力の一部を取り込んだ、エルドス枢機卿にさえ、
ダメージを与える事ができなかった。
魔王本人はそれ以上だろう。
クレアにバフをかけるのは、今回は通じたが
魔王にも通じるとは限らない。
あれは物理的にゴリ押しただけだ。
やはり、聖女の力が使えるに越した事はない。
そして、こっちは完全に予測でしかないが、
聖女の力を得るにはセレネが信仰心を得なければならない。
聖女でありながら、幼少期からの歪んだ教育により、
信仰心を持たないセレネが
すぐに聖女の力を取り戻すことはできないだろう。
「神の力か・・その辺りの伝承はこちらでも調べておこう。
何かしら書物や伝聞でヒントが残っているかもしれん。」
「頼むわ。」
「場合によってはギルド本部からも呼び出しがかかるかもしれん。
覚悟しておけ。聖女を始末してしまえばと考える者も出てくるだろう」
「そうね。」
唯一の対抗手段であるはずの聖女。
それと同時に魔王の封印を解く鍵でもある。
魔王復活を阻止する為に殺してしまえと主張する者もいるだろう。
いずれは過激な行動に出る者も出てくるはずだ。
私と長い付き合いのギルド長ですら、
この町に住む事に難色を示さざるを得ないのだから。
私がノアちゃんもセレネも必ず守って見せる。
そのためには強くなろう。
そして、二人(後クレア)の事も強くしていこう。
私達が皆で強くなれば全て上手く行く。
きっと大丈夫。
「そろそろ戻ってる頃だろう。
お前も行ってやれ。」
「そうするわ。また来るわね。」
私は会議室を出て、ギルドの入口に向かう。
「「アルカ~!」」
二人が手を振っていた。可愛い。
「お昼食べに行きましょう。二人共何が良い?」
私達は仲良く町に繰り出していった。
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昼食後、ドワーフ爺さんの店に向かう。
「「こんにちは!お爺さん」」
「お?おう」
ノアちゃんとセレネの顔を見て驚く爺さん。
この二人そっくりだからね。
ギルド長も話が落ち着いた後は
なぜ似てるのかかなり気にしてた。
初めて見ると驚くよね。
ノアちゃんはいたずら成功みたいな顔で笑ってる。
ノアちゃん楽しそう。可愛い。
「帰ってきたわよ爺さん。
この子はセレネ。新しい家族よ」
「セレネです。宜しくお願いいたします。」
余所行きモードで礼儀正しく挨拶するセレネ。
「おう」
「ノアちゃんとそっくりなのは偶然よ?
後別に、似てたから拉致してきたわけでもないからね?」
「そうか。遂にやっちまったわけじゃねえのか。
お前さんのノアへの態度見てるとおかしくはないと思っとったが。」
「そんなわけないでしょ」
セレネが聖女である事はむやみに伝えない事にしている。
聖女がここにいる事は広まらないに越したことはない。
「旅先でいろいろあって連れて帰ってきたの。
これからはこの子の物もいろいろ作ってもらうからお願いね。
後・・・」
私は、猫耳の作成を依頼する。
爺さんは最初、何言ってんだお前って顔で見てきたが、
私が本気なのを知ると渋々承諾した。いつもの事だ。
細かい仕様とか相談している間、
ノアちゃんはセレネに商品の事を説明していた。
いつか爺さんに教えてもらった事を披露しているようだ。
感心しているセレネに満更でもないという顔するノアちゃん。
仲良しさんズ可愛い。
最近ノアちゃんが私よりセレネに付きっきりで
ちょっと寂しいけどね!