2-6.二人旅
私は旅の道中にある大きな川に到着すると、
河原に収納魔法から取り出した物を広げていく。
大型のテントを広げ、床に少し柔らかい板を敷き、
その上に藁で出来た茣蓙を広げる。
さらにその上にこたつとクッションを出して、お茶を入れる。
「外なのに温かいですね~」
早速こたつに潜り込んだノアちゃんが蕩けている。
魔力があれば使えるこたつはこんな時に便利だ。
作ってもらって本当に良かった。
お陰で旅生活でも快適だ。
いつか畳も欲しいな。
収納魔法で持ち運べるしこんな時も便利だ。
「今晩はここで休もうね~」
「は~い」
しばらくのんびりした後、
私は渋々こたつから抜け出し、
テントから出て魔法で火を起こす。
続けて鍋に具材を入れていき調理していく。
今回の旅の間の料理は私がすることにした。
いつも通りノアちゃんにお願いしようかとも思ったけど、
旅に慣れている私がやってしまう事にした。
ノアちゃんは自分がやるとなかなか引かなかったが
次回以降、もっと暖かい時期に一緒にやろうと
説得したらようやく納得してくれた。
ノアちゃん寒いの苦手だからね。
ドワーフ爺さん特製防寒着のお陰で寒さもかなり軽減されているが、
それでも手や顔はどうしようも無い。
火で暖を取りながら、鍋を煮詰めていく。
そうして出来上がった物をこたつに運んだところで、
ようやくノアちゃんがこたつから顔を出した。
こたつむりノアちゃん可愛い。
「流石に顔まで入ってたら息苦しくない?」
「だって顔寒いんだもん・・・」
あまりの寒さにキャラぶれしてる!
いつもの丁寧語がどっかいってて可愛い。
ノアちゃんのだもんとか初めて聞いた!
あかん、また暴走してる。いい加減自重しよう。
「ごはん食べたら暖かくなるよ~」
「いただきます!」
良い食べっぷり。
いっぱいはしゃいで体力使ってそうだもんね。
食べ終わるとノアちゃんはあっという間に寝てしまった。
私は魔法で温水を出しながら、川で洗い物をして、
一通り片付けてから、結界を張り、
ノアちゃんの隣で眠りにつく。
そんな調子でしばらくの間二人旅を満喫した。
----------------------
そうして、ようやく依頼者との待ち合わせ場所の
教会がある都市にやってきた。
聖女というだけあって、
私達の町とは比べ物にならない大都市に住んでいた。
「凄いですね・・・」
ノアちゃんは規模の大きさに驚いていた。
こんな大都市は生まれて初めて見たのだろう。
なんか尻尾がクネクネしてる。
猫の場合ってどんな感情なんだっけ?
イライラしてる時はパタパタ振るのは知っているけど、
あのクネクネはワクワクしてるんだっけ?
リラックスしてる時は私や自分に巻き付けてる事が多い気がする。
私がノアちゃんの真っ白な長い尻尾に目を奪われていると、
振り向いたノアちゃんから声がかかった。
「行きましょう!アルカ!」
ノアちゃんが驚きから戻ってきたようだ。
早速興味が勝ったようで、私の手を引いて町の中をどんどん進んでいく。
まだ予定の日までは時間がある。
数日は観光できそうだ。
私達はこの町のギルドに到着の報告をした後、
町の皆へのお土産を購入したり、
屋台で食べ歩きをしたり、おしゃれなお店を巡ったりと、
数日間、思いっきり大都会を満喫した。