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2-4.新しい依頼

結局、何もせずに私とノアちゃんは家に戻ってきた。

せっかくだから、私の過去も話してしまおう。

こういうのはタイミングを逃す前に済ましてしまうに限る。



私はノアちゃんを膝に乗せてこたつに入ると、

これまでの事を少しずつ話していった。


別の世界で生まれたこと。

別の世界でどんな生活をしていたか。

別の世界から転移してきた事。

冒険者になった事。

世界を旅した事。(流石に理由は話していない。)

結局この町に戻ってきたこと。

等など



ノアちゃんはあっさり信じてくれた。

いわく、私はそんな手の込んだ嘘つけないと。

いやまあ、そうだけど!そうだけど!



「どうして話してくれたんですか?」


「それは、ノアちゃんが勇気を出して自分の事を話してくれたのに、私が自分の事を隠しているのはフェアじゃないもの。」


「それだけですか?」


「ノアちゃんには知って欲しかったからかな。

初めて会った時にも言ったと思うけど、

一人でいることが寂しかったの。

町の皆は良くしてくれるけど、

本当の事を話せて一緒に居てくれる人が欲しかったんだと思う。」



「怖くなかったのですか?」


ノアちゃんは自分の時を思い出しながらそう聞く。



「うん。そういえば怖いとは思わなかったわね。

ノアちゃんなら受け入れてくれるって当たり前に思ってた。」


「そうですか」


ノアちゃんが嬉しそうに微笑む。

たまらず抱きしめる。



それからしばらくじゃれ合いながら時間が過ぎていった。






----------------------






またしばらくは穏やかな日々が過ぎていった。

2、3日に一度ギルドに顔を出し、

たまに爺さんの店にも冷やかしに行き、

家でのんびり過ごす。そんな毎日が。



やっぱりというか、

何時いつまでもは続かなかった。




「護衛依頼!?私に務まると思ってるの?」


「だから、ノアも含めて二人に依頼してるんだ。

というか、そんな事を開き直るな!」


「なんで今さら?最高ランク冒険者なんて割に合わないでしょう?」


私への指名依頼は高い。

普通の商人が一護衛に払う金額ではない。


商隊が規模相応の人数ではなく、

私一人を雇って済まそうなんて馬鹿なことを考えない限り護衛任務など指名されないだろう。



「それが先方は身分の高い人でな。

お前をどうしても指名したいと言っているらしいんだ。」


そっち?


「でもそういう人なら普通はわざわざ冒険者なんて雇わないわよね?

しかも個人の戦闘能力が高すぎるやつなんて側におけるはずないじゃない」



護衛の一人がずば抜けて強いと、

その護衛が裏切った場合に他の護衛では対処できなくなる。

しかもそれが信用もない冒険者等、普通あり得ない。




「そうは思うんだがな。よっぽど奇特な方なのか、

他にも信頼できる強力な護衛がいるのか。

少なくとも罠の類では無いはずだ。

先方の身元確認は取れている。」


冒険者ギルドは金さえ貰えれば何でもやる組織とは違う。

依頼の内容や依頼者の確認はしっかり行われる。




そもそも、護衛依頼自体若干グレーなところもある。


あくまでもこの世界の冒険者ギルドは魔物とダンジョンに対しての組織だ。

ダンジョン外では出現した魔物の討伐と未開地の探索が主な役目だ。



当然、旅の道中に魔物が出没する可能性はあるので

依頼として一見問題は無いのだが、

わざわざ街道に現れる魔物などそう多くはない。

魔物だってそこまで馬鹿じゃない。

そんな所で大暴れしたらすぐに人間に殺されてしまう事くらいわかっている。



あいつらは狡猾だ。強い人間と弱い人間の区別はつく。

弱い人間が集まる小さな村を襲うことはあっても、

強い人間がすぐに仕返しにくるようなところに出てこようとはしない。



まあ、食うに困った弱い魔物や、人間の味を覚えてしまった魔物等が出てこないわけではないのだけど。


という事で、殆どの場合想定される敵は人間である盗賊達だ。



冒険者だって襲われそうになればやり返す。

降りかかる火の粉は払って当然だ。

だが、盗賊達を倒す事を目的に冒険者は動かない。

個人的な事情があればともかく、それは基本的に国や傭兵の管轄だ。




冒険者ギルドへの護衛依頼とは魔物対策の名目で

盗賊対策の戦力を求めているにすぎない。


冒険者ギルドもそれはわかっているのだが、

一応大義名分はあるし、一商人が国に護衛を依頼する事など出来るはずもないので、需要と供給を考慮した結果、護衛依頼自体は禁止されていない。




普通は自前で護衛を用意できる立場の者が

冒険者ギルドに護衛依頼をすることはないし、

冒険者ギルドも素直には受けないはずだ。


今回のように一見すると怪しさしか感じない依頼では尚更だ。

最高ランク冒険者が罠にかけられて始末されましたなんて、

冒険者ギルドからしたら大損害だ。



さて、どうしようか。

相手の情報を聞いてしまえば断ることは出来ない。

守秘義務もしっかりしている。


まあ、指名依頼として私の元まで来た以上、

既に断ることは出来ない可能性も高い。

それでも今回は異例な事であるため、

こうして確認をとっているのだろう。



別に今更護衛依頼なんて低~中ランクの冒険者が受ける依頼をやりたくない、なんて思っているわけじゃない。



話を聞く限り今回のことは依頼者の一存で決められたのだろう。

普通は周りの者達が止めるはずだ。

それが出来ない人物という時点で不安が大きい。

とんでもない我儘な人か、周りを力や恐怖で従えさせるタイプの人か。


後者の人間は冒険者ギルドになんて依頼はしないだろう。

そういう人間は相応にプライドも高いはずだ。



我儘なお姫様?高飛車なお嬢様?女好きの貴族?

いずれにしたってあまり関わりたくはない。

ノアちゃんにだって変な人間を近寄らせたくない。



断りたいな~断れないかな~

断っても良いんじゃないかな~


「断わ」

「受けましょう」


「ノアちゃん!?」


なんだ一体どうしたんだ!?


「ノア、どうしてそう思う?」


ギルド長が冷静に問う。



「今回の依頼者はアルカを名指しで指名しているのですよね?

最高ランクの冒険者をという事ではなく。」


「ああ。そうだな。」


「ならば受けるべきです!

先方はアルカの事を知っているのでしょう?

そして、アルカを頼りにしている。

答えてあげましょう!アルカは頼りになるって!

万が一妙なことを考えたって、そんな人はアルカの敵じゃありません!」



まさかの感情論!?さっきまでの私の葛藤は!?

いつも冷静なノアちゃんとは思えない論法に私とギルド長は困惑する。



「ならば、了承ということで受けておこう。」


一瞬早く立ち直ったギルド長が有耶無耶の内に決定する。


「させるか~!」



私は反論するも、結局ノアちゃんからのきらきら視線攻撃に撃沈して、依頼を受けることになった。


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