56-08.神話の再現
「悪いけど手は貸せないの」
アマテラス様は挨拶も抜きに開口一番切り出した。
「抗争中なのよ。バカ弟と」
えぇ~……。
アマテラスとスサノオってまだ喧嘩してたの? 神話の時代から? 現代に至るまで? ずっと?
「相変わらずね。あなたたち」
「あんたに言われたくはないわ。恩知らず」
アマテラス様はギロリとメグルを睨みつけた。
どうやら喧嘩別れしたという話も本当らしい。
とはいえこの場で争うつもりもないようだ。
「アマノ。ウズメ。あんたらどっちかここに残りなさい」
なんだかやたらと露出の激しい二人の少女神が現れた。
「そう。ウズメが残るのね。いいわ」
少女神の片割れが私の方へと近づいてきた。
「メグル。あんたに任せてやるわ。精々上手くやりなさい。それで手打ちにしましょう」
最後にそう言い置いて、アマテラス様はアマノと呼んだ少女と共に姿を消してしまった。どうやら船に戻ったらしい。
残されたのはウズメと呼ばれた少女神だけだ。
「一方的ね。私が許すとは言ってないじゃない」
「もういいじゃん。許してくれるって言ってるんだし」
メグルの負け惜しみじみた呟きを諌めるマグナ。
「何で喧嘩したの?」
「たいしたことじゃないよ。アマノイワトの増築案で揉めただけ。所謂方向性の違いってやつだね。メグルはロマンに走りすぎるところがあるから」
「私だけじゃないわ。あいつだって気に入っていたのよ。それを土壇場になってひっくり返したのよ」
「アマノイワトはアマテラス様の持ち物でしょ?」
「何よ様って。なんでアマテラスだけ様付けなのよ」
……なんとなく?
「小春ってミーハーなのね」
そこはほら。しゃーなくない?
じゃぱにーず・すぴりっつ的にはさ。
「よかったじゃない。向こうはお近づきになりたいそうよ」
「(こくり)」
ウズメさんがメグルの言葉に頷いた。
「ありがとう。よろしくね。ウズメさん」
界賊について色々聞かせてもらいましょう。
「(こくり)」
ウズメさんが私の手を取った。
「え……? これって……」
パスを繋がれたの……? 何故そんなことを?
『婚姻よ~♪』
……は?
「あら。小春ったら知らなかったの?」
メグル!? 気付いてたの!? なら先に言ってよぉ!
「あなたはサルタヒコとして認められたのよ」
サルタヒコ? 確かアメノウズメと結婚した神様だっけ?
「まさか……よくあることなの?」
「ええ。アマテラスは側近にアマノとウズメの名を与えて連れ歩くの。これはと思った相手には嫁として送り込むのよ」
えぇ……。
「だから尚の事彼女は討てないのよ。中央の連中もね」
……あっちこっちに親族を作っていると。そうして繁栄を盤石なものとしてきたのね。
根付くべき世界を持たずに放浪する民としては、必要な処世術なのかもしれない。
……それはわかるんだけれども。
「どうしてそういう事を先に言わないのよ」
「うっかりしていたわ。ごめんなさい」
そう言われたら、これ以上は言えないけどさぁ。
「(?)」
どうしてウズメさんが首を傾げているのかしら。
そうしたいのは私の方だと思うのだけど。
「まあいいじゃない。歓迎してあげなさいよ。折角情報源の方から心身を捧げてくれると言っているのだから」
「メグル。わざとでしょ」
「ウッカリよ。言ったでしょ」
白々し~。
ところでウズメさんは話せないのかしら?
まだ一言も喋っていないのよね。
「待って。ウズメさん。ストップ。その手を止めて」
何故か脱ぎだそうとしたウズメさんの手首を握って制止する。
「(?)」
何故首を傾げるのか。
「小春がジロジロ見ていたからでしょ」
真意を測りかねていたからね。他意は無いわ。本当よ。
「シーちゃん。メタモルステッキを渡してあげて」
『イエス。マスター』




