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7 不死鳥来訪 4

登場人物紹介

挿絵(By みてみん)

ゼナ:魔王軍の残した実験機Aカルネージアポピスの操縦者。滅ぼされた侯爵家の元令嬢。実家を復興するため蘇生の秘宝を求める。

挿絵(By みてみん)

ラン:ナーラー国最強のエージェント。実験機の調査に動く。乗機はSルビーフェニックス。

 ランは見た。

 爆発が起こした煙から、のし歩いて姿を現すカルネージアポピスを……!


(私の即死攻撃が効かない?)

 驚くラン。こんな事はそう何度も有った事ではない。

 だが実は、全く無かったわけでもない。堕天した元神族という敵に跳ね返された事が、過去にあったのだ。

(蘇生の秘宝とやらは生命の神々が造りし遺物(アーティファクト)とか言ってたっけ。それが死の魔力を跳ね返しているのかもね……)



 さらに気付く。アポピスの損傷が塞がり、どこにも傷が無い事を。いつの間にか修復されている事を……!

(……そう。あっちにも再生能力が有るわけ)


 そうなると一見では互角である。

 だが違う……違うのだ。

 モニターに表示されているデータによれば、アポピスは完全に回復しているが、フェニックスはまだ再生の途中である。

 耐久性、装甲の強度、再生力の高さ。それらの合計で、アポピスはフェニックスの数段上を行っていたのだ。


(こりゃ参ったな。はっきり言って分が悪いわ)

 劣勢の中、しかしランは強気に相手を睨んだ。

(ならね! こっちの最強武器をぶつけてやろうじゃない。エネルギーの続く限り!)

 再生能力を持つ敵への最も単純な攻略法は、再生速度を超える威力の攻撃で倒す事である。


 フェニックスが再び紅い光の弓を造った。だがそれはさっきとは段違いの大きさで、まるで上下二枚の翼のようだ。

 矢となる光の輝きも全く違う。膨大な光量が収束し——


 見上げるカルネージアポピスが禍々しい口を開け、再び黄昏色の(ブレス)を放つ。

 それを真っ向からフェニックスは射た。その腕から一羽の火の鳥が生まれ、放たれる。

 竜の吐息(ドラゴンブレス)不死鳥(フェニックス)の激突! 死の霧と炎が渦巻き、周囲の木々を薙ぎ倒した——!



 フェニックスは空で、アポピスは地で、互いの技が激突した余波に耐える。

 吹き飛んだ木々が煙をあげる中、二機は再度の攻撃に移ろうとした。

 だが二人の操縦者は、同時に、モニターに映る第三の影を見る。

 森の木陰に潜み、両者の激突を窺っていた物の存在を。


 琥珀色の鎧を纏い、鳥の頭と大きな翼をもつ鳥人。

 蘇生の秘宝を持つ六つの実験機の一つ・Aヘブンベンヌ。

『チッ……気づかれたか』

 その操縦席でアーロンは舌打した。

『あれは……あれは!?』

「六機のうちの一機なの?」

 驚くゼナとラン。ゼナの声は驚きだけでなく、歓喜も帯びていた。

 ゼナはもうランなど見もせず、アポピスは怪鳥ベンヌへと迫る。


 ランは戸惑ったものの、背を向けたゼナよりもどう動くかわからないベンヌの方が要注意だと判断したらしく、照準をそちらへと切り替えた。


 二機の注意をまとめてひいてしまった、とみるや——ヘブンベンヌは地を蹴って飛んだ。

(ナーラーの飼い犬がうろついていると聞いて探りに来たが、しくじったか。まぁいい……邪魔をするなら奴も消すまで。どう動くかは考えねばならんがな……)

 アーロンは機体を加速させてその場を離脱する。



 逃げるベンヌをアポピスは追った。

「ちょ、ちょっと! 待ちなさい!」

 慌てて声をかけるラン。

 だがゼナが激高した怒鳴り声をあげた。

『邪魔するなぁ!』

 振り向きざま、アポピスは黄昏色の(ブレス)を放つ。


 己の方から協力を要請はしたが、ゼナの中ではもう破談にされた事になっていた。

 そうなるとランは邪魔者でしかない。


 咄嗟に回避行動をとるフェニックス。

 だが片翼が(ブレス)を受け、破損し、体勢を完全に崩す。

 それでもなんとか宙で立て直し、両の足で着地してみせた。

 しかし——その時にはベンヌは空の彼方に、アポピスは森の中に消えていた。

 フェニックスの翼はほどなく再生するだろう。だがその頃には、二機とも追える範囲の外だ。


「ま、それでも収穫はあったけど」

 ランは操縦席で溜息をついた。

 正体不明機が現行の白銀級機(シルバークラス)を遥かに上回る、恐るべき機体であること。

 それは魔王軍の残した実験機で、蘇生の力を求める者が動かしていること。

 その情報は手に入ったのだ。

(とりあえず調べてみますか。まずはゼナ。それから……旧ナーラー圏内で魔王軍の生き残りがしでかした最近の事件かしら)

 ゼナの話が本当なら、実験機のどれかを起動させた者が六人の中にいるのだ。

 あんな物の在処(ありか)をしっていたなら、そいつは高確率で魔王軍の関係者だろう。


 まだ再生が完全ではないが、それでもフェニックスを飛ばせ、その場を後にした。


 三機の三人とも気付かなかった四人目がそれを見送っていた。

 離れた所に隠してある自機へと森の中を戻るのは——皇騎士・聖輝(せいき)

(俺のセルポパルドなら跡を追えるが……さて、どいつから狙ったものか)


 ここまでは他のサイトに掲載した物とほぼ同じ。

 次の回から別展開へ。

「登場人物達の選択や判断がもし違ったら?」というパラレルワールド思考。


設定解説


【とりあえず調べてみますか】


 ランは現ナーラー朝廷のエージェントだが、完全に一人だけで仕事をしているわけではない。

 諜報部というものが朝廷にあって、そこと相互に協力しながら動いている‥‥という設定になっている。

 国のエージェントが町ごとに酒場へ繰り出しオヤジさんから近隣の噂を聞く、というのでは国単位の仕事とかできそうにない気がするので。

 無論、諜報部と繋がっているからといって地元民から話を聞かないわけでもないのだが……それ「だけ」というのでは、ちょっと。

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