8 狂乱、人知られず 1
国が誇る最強のエージェントが介入する中、ついに実験機達の出会いが生じた。
生を取り戻すがために命を捨てた戦いが始まる——。
森の中を走る竜鱗蛇頭の人造巨人、Aカルネージアポピス。
その操縦席でゼナは喜び、同時に焦ってもいた。
(見つけたわ! 逃がさない、逃がさない!)
琥珀色の実験機、自分の乗っている機体の兄弟。それを早くも一つ見つけた。
ゼナが真のゼナイド=ジダン侯爵令嬢に戻る、その第一歩なのだ。
森を抜け、荒野に出る。
開けた視界の向こうに、山を背にした町が見えた。
(あそこに逃げ込んだの?)
ゼナの乗るアポピスが足を止める。
直後、爆発が起こった!
吹き飛ばされるアポピス。
「きゃあっ!?」
熱波と爆風の中、ゼナは悲鳴をあげた。
それを空から見下ろす、鳥の頭と翼をもつ機体・Aヘブンベンヌ。
高出力の光線を撃ったばかりの、両腰の大きな砲身……それの狙いを再度、地面で倒れるアポピスにつける。
操縦席ではアーロンが冷酷な目で敵機を見下ろしていた。
ナーラー国最強の代理人、魔王軍との最終決戦にも参加したランという聖勇士。その名と存在は元魔王軍親衛隊のアーロンも知っていた。
いつかは倒さねばならない相手だという認識とともに。
だが強敵である事はわかっていたので、他の実験機と同時に正面から相手にするのは避ける事にした。だからここまで逃げて来たのである。
しかしアポピスは単機でアーロンを追って来た。
ならばこれを仕留める好機なのか。
しかし戦っている間にランが追ってくれば窮地に陥る可能性はある。
ベンヌの飛行能力ならば、このままなら確実に逃げられる筈だが……
(先ずはこいつから片づけてみるか)
イチかバチか。
結局、アーロンは迎え撃つ事に決めたのだ。
照準を合わせ、ようやく立ち上がったアポピスに向けて引き金をひく。
二門の砲から再び高出力の光線が放たれた。
地上に着弾し、それは大爆発を起こす!
アポピスの姿はその中に消えた。
後には無残な残骸が残るだけだろう。
秘宝の欠片を回収するため、アーロンはゆっくりと機体を降下させた。
その目が驚愕に見開かれた。
収まりつつある爆炎の真っただ中、あちこち焼けただれたアポピスが立っている!
しかも損壊した全身の各所は、目ではっきりわかる速度で埋まってゆくのだ。
(再生している? 自己修復能力があるのか!)
理解した直後、アポピスが黄昏色の息吹を吐き出した。
空へ噴き出す魔の奔流!
黄昏色の息吹は天を埋め尽くさんばかりに荒れ狂い、ベンヌを呑み込んだ。
アーロンとて咄嗟に急上昇をかけたのだが、息吹の勢いはそれに追いつき、包み込み、押し流したのだ。
無論、その光景はアポピスの操縦席でゼナも見ている。
彼女は大声で笑った。
「は、ははは……やったわ!」
気が強くとも可愛らしかった顔に、狂気じみた笑みが浮かぶ。
だが、その顔が一転した。
黄昏色の破壊の気流が晴れた時、全身各所が破壊されつつも、まだ空を飛び続けるベンヌの姿があったからだ。
その砲身は既に構えられている!
再び光線が放たれた。
それはまともにアポピスの腹を撃つ!
「きゃあっ!?」
吹き飛ばされる機体の中でまたもや悲鳴をあげるゼナ。
通信機から敵の声が届いた。
『互いに油断したようだな』
ベンヌの破損個所もまた徐々に埋まってゆく。
この怪鳥機にもまた自己修復能力があったのだ……!
『くぅっ……うわぁあ!』
悲鳴なのか雄叫びなのか、ゼナが通信機の向こうで絶叫する。
それに応じてアポピスが黄昏色の息吹を吐き出した。
だがベンヌは高速で旋回し、それをギリギリで回避する。
(注意さえすれば、こちらの運動性なら避けられる)
そう考えつつ反撃するアーロン。
しかし避けながらでは最大までパワーをチャージした一撃は撃ち難い。やむなく片方の砲だけで素早く光線を撃つ。
だがその一撃に、アポピスは踏ん張って耐えた。
装甲表面で光線が弾けるが、致命傷には遠い。そしてダメージは時間とともに修復される。
(こちらもそうそう決定打は撃てんか!)
膠着状態の中、アーロンは奥歯を噛んだ。
(しかし、腕はこちらに分がある)
再びアポピスの息吹を避けながら考えるアーロン。
(そして地の利も、な……)
他所で掲載したものと異なるストーリー展開。
それをこの世のどこかに発表するためにこのサイトでも掲載する事にした。
自分でも自己満足が過ぎるのではないかと思わないでもない。




