パート19
困った。かえって拗らせてしまったようだ。
「あー、わかりましたわかりました。難しすぎましたね。つまりこう捉えてください」
俺は話を要約する。要約、得意なんだ。仕事上。
「あたしはある男を待っている。さる理由からその男に演奏を是が非でも聴いてもらいたい。そいつは50近いおっさん。恋愛対象でもなんでもない。ヨーロッパの件は正直悩んでいて、返事はすこし待ってほしい」
「わ、わかった。そういうことなら、時間をすこしずらせるか運営に交渉してみる。部員何人かに言って入り口付近で中年の男に声かけするようにいっておくわ」
さすが部長。聡明である。こういう頭のいい人には「整理して伝える」に限るのだ。
俺は自分の容姿を部長に伝えることにした。
「…で、たぶん、黒のスゥエットのパーカーを着ていると思う」
「なんでわかるの」
「休日はいつもそうだって言ってたから」
・・・・・・・・
ゼイゼイゼイゼイ。
「歳をとるってこういうことなのか。全く体が動かない」
あたしは途中の階段に座り込んでいた。あと数百メートルほどで会場だ。でも無理。もう一歩も動けない。
「み、水、水ちょうだい」
「はい、お疲れ様、これ水」
アッコ、アッコじゃない。
階段を見上げた。たくさんの現代音楽吹奏楽研究会、略して「げんすいけん」の仲間が階段の上に並んでいた。
「おーい、おっさ…いや、さちのー!」
「はやくこーい」
「みんな待ってるぞ〜」
「もう怒ってないぞ〜」
「歯磨けよ〜」
誰だ、ドリフなんか知ってるヤツは。担任か?
「サンキュー、アッコ、もう少しがんばる」
「ううん、いいのこれしき。友達じゃない」
あたしは泣きそうになった。変なことで喧嘩なんてしてごめん。これからは真面目にやるよ。
「で、あんた、部長と何があったわけwww?」
「え?俺が?あ、いや。あれ?なんでだろ」




