表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/21

パート18

「わざとやってるんでしょう、そうなんでしょう?」


部長が激昂する。当然である。マー君は白々しく、同じところで間違えたふりをして、何度も何度も演奏を止めるのだ。


「い、いえ、なんだかこのレが、シに見えるんです。おかしいなぁ」


「ちっともおかしくない!ちょっとテューバ二人!私と化粧室に来なさい!」


「え?化粧室ぼ、僕もですか?」


マー君はなんだか嬉しそうだ。


「なんか嬉しそうだな」


「嬉しくなんかありません!一体何をされるのか…」


「怖い先輩がズラーっと並んで、ボコられた挙句、カーストの最下位が決定するんだよ。あーあ、一生あの女の下僕だな、おまえ」


「それはさちのさんも同じですよ!どうするんです、あなたのせいで、僕らの学園生活はめちゃくちゃです」


「なにしてるの、はやくしなさい」


俺たちは楽器を置き、スゴスゴと部長の後をついていった。まずい、女子便所はまずい。学生時代の彼女が読んでいた「別マ」では大抵こういう展開でボコられた挙句、主人公の学園生活が暗黒になってしまうのだ。


3人が化粧室に入ろうとすると部長がマー君を制止した。


「なにやってんの、あんたはここで待つの」


「でも、部長が女子便所って」


「あんたは単なる見せしめ。男が入れるわけないじゃない。頭おかしいんじゃないの?」


まずい、さらにまずい。強面の部長と二人きり。どんな辛辣な言葉が待っているのやら。


部長は洗面台に腰掛けると、こっちを鋭い目で睨みつけていった。


「あ…」


「あたしへの当てつけなんでしょう!そうなんでしょう。なんで?なんでそういうことするのヨォ!」


泣き出した。部長が泣き出した。こまった、こういう展開は予想していなかった。


「ラインしても返してくれないし、この間の返事もまだもらってない!」


「こ、この間の返事って…」


「とぼけないで、一緒にヨーロッパに行こうって話ししたでしょ!」


「一緒にって、つまりどういう関係で…?」


「こういう関係!」



中略



な、なんと。こういう関係でしたか。アッコちゃんになんと言えばいいのだ。女子高生にこんなことされるなんて、今生あるとは思わなかったが、これはなんというかラッキーなんだろうか。


部長は泣き止む様子もない。


「しかたない、すべて話すよ」


俺は部長に入れ替わりのこと、本物のさちのがこちらに向かっていること。それまで時間稼ぎが必要だったことを話した。


「な、そ、そんなことが」


「びっくりだろう?、俺も信じられないんだが」


「な、なんで」


「なんでと言われても」


「そんなこと本気にするわけないじゃない!なんでそんな嘘つくの!なんの得があるの!」



…ダメだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ