第一話 隣人
僕は物音と異臭で目を覚ました。
カサカサという物音はどんどん近くなってる気がする。
隣の独房からか?
そしてこの匂いはなんだ?
焦げた肉みたいだ…。
なんだ、この最悪の目覚め、誰だよ。
鉄格子の小さな隙間から月明りが差し込んでいる。
「早く出たいなぁ…。」
僕は今日、刑務所に入れられた。
理由は、無実でもなんでもないから、自業自得と言ってしまったらそうだ。
ただ少しひどすぎないか?
寒すぎる。
ベッド…?
そんなものはない。
あるのはトイレと小さな机。
それに仲良くなった監守からさっきもらった、
新聞紙だけだ。
しかも半年前。
確か朝はは食いかけの、
不味いお菓子を持ってきやがった。
まぁ、ないよりは嬉しいけどな。
あぁー!思い出しただけでイライラしてきた!
懲役五年。俺が言い渡された判決だ。
ただの詐欺だぞ!?
ここ三年で罪が一気に重くなったとは、
元々弁護士から聞いていたが、ここまでとは…。
クソ!!
僕は意図せず壁を蹴ってしまった。
ドン!という音が独房に響き渡った。
おっと…
いけないな。
そう思った頃だった。
一つの異変に気づいたのは。
さっきの物音がしない…。
俺が起きてる事に気づいたのか?
仮にそうだったとしてもコイツと話すのは勘弁だ。
運が悪いことに隣の部屋だけ鉄格子ではなく密閉された鉄の部屋
セキュリティが良かった。
恐らく何か大きな犯罪を起こしたのだろう。
まぁ、俺には関係ない事だが。
とにかくコイツとは、話したくないのだ。
お願いだ、話しかけないでくれ!
「うぅ…」
唸りが隔ててある壁越しだが、
確かに僕には、聞こえた。
やっぱりな。
そういう物騒な事やらかす奴は、
みんな決まってイカれてる。
「てるのか…」
ん?
なんかブツブツ言ってるぞ。
そして何だこの声。
掠れた声だ。
喉が潰れているのか?
僕は耳を澄ませた。
「おきて…いるのか!」
男は少し高揚した様子だ。
最悪だ。
やっぱり今年は厄年だったようだな。
「起きてますよ。」
「は な し…」
「はい?」
カタコトな声でこの男は僕にそう告げた。
コイツ本当におかしい奴のようだな。
だが、そんな状況なのは少し同情する。
仕方ない、少しだけ付き合ってやろう。
「先輩、お名前は?」
「ジャリ…」
「そ、それはいい名前だ。」
「そうか…俺はこの名前が嫌いだ。」
そういって自身をジャリと名乗った男は、
大きなため息をついた。
第一話 隣人 終




