第107話 エピローグ
悪魔討伐から百年余り後。
レイアは自室のベットで一人休んでいた。
「姉さま。」
枕元に一人の少年が現れた。
「ノア・・・。私、頑張ったけどこれが限界みたい。あなたを一人にしてしまうわ・・・」
レイアはベッドの横に立つノアを見て、力なくそうつぶやいた。
神聖力が極めて高かったレイアは普通の人より寿命が長く、すでに120歳を超える年齢になっていた。
ベルナー国民の平均寿命が70歳ということを考えるとかなりの長寿だ。
「姉さま。もう十分です。なんだかんだ言ってあの神聖石が完成するまであと百数十年です。それくらい一人でも耐えられます。姉さまの子供たちを見て過ごしたらあっという間ですよ。」
朗らかにそう言ったノアにレイアは視線を向けた。
レイアは自分が負うはずだったその宿命を引き受けてくれたノアに、出来る限りのことをしてあげたかった。
そしてずっとノアのことを気にかけていたのだ。
一方、ノアは常に自分を気にかけ大切にしてくれる姉に感謝していた。
「僕はもう大丈夫。だから安心して義兄さんのところへ行っていいんですよ。」
ノアは淡く微笑み両手でレイアの右手を握った。
「ノア。先に逝くけどエルと一緒にあっちで待ってるわ。」
数十年前に亡くなった最愛の夫のことを思い出したのか、レイアはとても綺麗な笑みを浮かべた。
そして、自分の手を握る弟の指を軽くキュっと掴むと目を閉じた。
自分の手の中で姉の手の力が急速に抜けていくのを感じ、ノアはしばらく動けずに永遠の眠りについた姉の顔を見つめていた。
やがて気持ちが落ち着いてくると立ち上がり、レイアの手を胸の前で組ませ上からかけ布団をかけてやった。
「姉さま。さようなら。また、いつか会いましょう。」
そしてレイアの額にキスを落とした後、かき消すようにその場からいなくなった。
※
救国の乙女の死からおおよそ百五十年後。
時のクルム公爵により、真っ黒に変色した大きな石が神聖石で造られた箱の中に納められ、何十にも封印がかけられた。
その箱はクルム公爵家の墓がある墓地に運ばれ、救国の乙女の遺言によりレイアとエルフリードが眠る墓の隣に埋められた。
そして、その墓標にはノア・フォン・クルムと名が刻まれた。
実の父に悪魔の生贄にされ、その悪魔を自らの手で倒しベルナー王国に平和をもたらした救国の乙女は、その死後も国中の人達から敬愛され語り継がれていったのだった。
Fin.




