エピローグ
ゴツゴツした山間部を二台の馬車が走っている。一台は研究所のエンブレムの付いた黒塗り。後ろを走るのは機材を積み込んだ荷馬車だ。
——あまり木がないのね。
ハイレーナは窓から連なる山々を見ていた。岩場が多い街道なのに、揺れが少ない。
「もう二週間にもなるのに、本当に疲れが出ませんね」
正面に座る、声の主に顔を向けた。
「でしょう?やはり揺れないものね」
「さすが、レーナ博士の開発されたやつは、耐久性も今までとは段違いですよ」
ふふふと笑って、青年を見る。
「この坂を馬二頭で走るんですから。いやぁ僕も早くこんな成果を出したいなぁ」
フィラ蛾の巣開発プロジェクトに参加して、三年。この馬車はやっと完成させたタイヤ、フィラン外輪を装着している。
「ラナスの王都から結構離れているんですね」
「鉱山の遺跡のすぐそばにあるんだもの。でも、もうそろそろ着くんじゃない?」
「ああ、新しい挑戦ですね。僕、頑張ります。ご指導、よろしくお願いします」
「大丈夫。メイトは優秀だもの」
青年は顔を赤らめて帽子を握りしめた。
少しずつ馬車の速度が落ちていく。窓へ視線を移すと、研究所の建物と鉄の門が近づいていた。高鳴る胸を抑えるように、深く息を吸う。あと少し、もう少し。
鉄の門が開かれ、速度を落としたままの馬車が通過する。そのまましばらく走って、止まった。
ハイレーナは深い息を吐いて、馬車の外へ一歩踏みだす。青年の声がしたが、もう聞こえない。ハイレーナの視線の先にいるのは大股で歩いてくる、もじゃもじゃ頭の背の高い男。長い腕がふわりと広がる。
それに向かって、一気に駆け出した。
長い間、お付き合いくださり、ありがとうございました。
初の小説を完結できて幸せいっぱいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
番外編では本編で書ききれなかった、裏話を一話完結でお届けしています。そちらもどうぞお楽しみに。




