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第十九話 『別れ、そして其々の道』

 「何処かで朝ごはん食べましょうか。」

 「そうですね。」


 この街に着いたということは、俺の仕事もこれで終わりだ。後は、報酬を貰って、さっさと帰ろう。


 「…」


 お嬢はずっと黙ったままだ。

 まぁ、しょうがない。向こうからすれば仲良くなった友達が引っ越す見たいな感覚だろうし、この世界にスマホの様な通信手段は無いから、別れたら最後、もう二度と会えないことだってある。


 俺達は報酬の話に入る為、店の一番奥の席に座った。


 「では、ジルさん。約十カ月、お仕事お疲れさまでした。それで、報酬は『上級回復魔術のスクロール』でよろしかったですか?」

 「はい。」

 「本当は、お嬢様も気に入ってるみたいですし、同年代の子なら、ずっと一緒に居てほしかったんですけどね。」

 「ど、同年代?何のことですか?」

 「大丈夫ですよ。身元の確認の為、冒険者カードを盗み見た事があって、その時に気が付きましたから。

 最初は少し、子供っぽさが無さすぎて奇妙に思ってたんですけどね。

 5歳児が何故か一人で旅をしているし、依頼を受けてるし、謎に強いし。」

 「5歳?!ジルって5歳なの?!」

 「…今はもう6ですけどね。」

 「教皇の家族が受ける教育はかなり高度なはず無んですけど、それを遥かに上回る知能。

 まるで大人ですね。何処かの貴族か皇族だったりします?」

 「…運が良かったただの一般人ですよ。」

 「…まぁ、これ以上深くは聞かないでおきます。」

 「それで、報酬の方ですが、何時頃受け取れますか?」

 「材料自体はあの辺で買えるんで、後はお嬢様が作るかどうかですね。」

 「…嫌だ。作らない。」

 「…何でですか?」

 「…描いたら…ジルが…居なくなっちゃう…嫌だ!」

 「…僕にもやる事があるんですよ。」

 「…お嬢様、ジルさんにはかなりお世話になりましたので、対価として報酬は支払わなくてはなりません。

 それが上に立つ者としての最低限の規則です。」

 「…」

 「…ハァ、これは言うつもりは無かったんですがね。

 …ジルさん。実は、お嬢様はこれから更に南下し、『ハラル魔術学校』に入学中の三女様に匿っていただくつもりなんです。」

 「え?頼る所は無いって…」

 「黙っていてすみませんでした。」

 「いえ。亡命の観点から見れば、疑わしい者に情報を与えない事は鉄則です。」

 「お嬢様はそのまま長女様の支援のもと、入学するつもりです。ですので、後最低でも8年はその学校周辺に居ます。

 ですから、必ずまたお嬢様に会いに来てください。その約束ならお嬢様もどうですか?」

 「…8じゃ長い。1。一年以内に来て。」

 「1年はちょっと流石に厳しいですね…ここもある程度は家から距離が有るし、それに、やっと家に帰ってきてまた直ぐ家を出ていくのは許してもらえないし、僕も嫌です。」

 「…じゃあ、3!3年以内!それなら良いでしょ!」

 「…分かりました。3年ですね。良いでしょう。必ず『ハラル魔術学校』に訪れます。」

 「あの辺は色々と賑やかな街ですので、よかったら、ご家族と来てください。」

 「ジル。」

 「はい。何でしょう。」

 「約束破ったら、シナに斬って貰うから!」


 ぇ゙…っと言う感じでシナさんを見ると、「じゃあ、そういう事で〜」って感じでニコニコしてた。

 これは仮に1秒でも遅れたら、本当に殺されるやつかもしれん。


 「…肝に銘じておきます。」

 「なら良いわよ!」

 「…そういう事で、これから宿で制作に取り掛かります。おそらく、1日、2日でできると思われるので、それまでお待ちください。」

 「分かりました。」

 「それから、長い間、本当にお世話になりました。」

 「僕もいい経験させてもらいました。

 3年以内にまたお会いしましょう。」

 「フフッ…斬らないで済むように願ってますよ。」


 俺達は硬い握手を交わした。


 2日後、俺はスクロールを貰い、門の所で二人に見送られた。

 『ブルケルマ』の位置はここからちょうどトリニア山脈を挟んで西側にある。

 長かった。だが、もう少しだ。

 これを届けて金を手に入れたら、急行の馬車も使えるようになる。

 そしたら、家まで後数ヶ月だ。


 早く帰ろう。やっと、皆に会える!



 [シナ視点]


 「…ジルさん。行ってしまいましたね。」

 「…そうね。」

 「…もう、泣いて良いんですよ。」

 「…ッ……ッ……ぅあああぁぁぁん!」

 「良く、涙を見せずに別れられましたね。」


 貴方は、こんな小さい頃から、厳しい運命を強いられた。

 でも、大丈夫。

 彼の様に、貴方には手を差し伸べてくれる者はきっと出会える。


 「貴方はきっと強く成れる。」

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