第27話 どう言うことかな?
旗艦ヘレルシュテルン号 艦橋
―第6紀 370年2月11日(風曜日)3刻
「どう言うことかな?」
「どうした?ファンデルメーデン副軍団長.」
「いえ,敵の動きが良すぎるのです.こちらが土壁を作り出したら,隊を分けて左右に分かれて壁を回られそうです.まるで…上から見ているかのように.」
全員で上空を見上げる.
パスカルは自分なら何処に偵察を置くか考え,【千里眼】で上空だけでなく,近くの山も確認する.
「魔族軍の軍師は本当にすごいです.土極基準,5刻20分方向,距離4600メルテ,高度2000メルテにドラゴニュート,それに,8刻方向にある山の頂に偵察部隊が見えます.たぶん,ヴェスティリローテヴァント山脈にも偵察部隊を出していますね.そうすればエーデルシュタインが全部見れますからね.こちらの動きは丸見えだったとは.」
「どうする?」
「脱出の邪魔なので,目は潰しましょう.山頂は”尖四角錐の光槍“でいきます.」
右手で杖を持ち,左手を三方法印にして【精密方位測定】魔法で方向を確認する.
旗艦ヘレルシュテルン号はその速度を活かして,敵偵察部隊のいる山に5キロメルテまで接近した.
「砲撃手,照準を私にさせてもらえますか?」
「ええ,構いません,副軍団長.」
パスカルは杖を真上に上げ,九つあるリングを回して調整する.
「数えるので3で撃ってください.…1,…2,…3!」
ピカッ.船首にある”尖四角錐の光槍“が光り,目標の山頂で爆炎が上がる.5キロメルテ先の目標に誤差2メルテで的中させた.
「何で,一発で当たるんだよ.俺,自信なくしそう.」砲撃手は嘆いて,ひとりぼやいた.
旗艦を大きく旋回して,少し東に移動して,イルミンスールからやってきた部隊に船首を向けた.
「次はドラゴニュートですね.クリスさんをこちらに戻して来るか.いや,時間がもったいない.誰か規格2号魔晶石を持ってきてください.魔法を使います.」
パスカルは杖を持って甲板の魔法祭壇へ行く.“魔法祭壇”とは魔法を使いやすくするための祭壇のような場所あるいは施設/設備である.規格2号魔晶石を舞台に転がしてもらい,足で踏みつける.なお,パスカルの杖もアラグニア大消失の前に作られた杖“ノインツィファン”であり,とても高精度な制御ができるものであった.
【魔力励起,右手掌握法印にて杖に接続 杖にて第30領域内で第29領域を円柱展開 左足接触法印にて魔晶石に接続 消費マナを魔晶石に代替-第28階梯魔法 真空領域 発動-1.1Gマナエルグ消費,真空領域解放 上方解放 発動-6マナエルグ消費,……励起解除】
リザードマンのストラスシャールシズスは考え過ぎのウァサーゴシュラゼズスと【視界共有】魔法を使って,人類種連合の動きを監視していた.海抜2000メルテ,この辺りの土地は海抜800メルテ以上あるので,地面から1200メルテくらいを【羽飛行】魔法を使って浮遊していたのである.突然,魔法領域に囲まれたと思った瞬間,息ができなくなった.
「!」
パスカルの魔法で周りの空気がなくなったので,飛べなくなり重力に引かれて落ち始める.すると今度は上から大量の空気が押しよせてきた.とてつもない圧力を感じ,勢いよく落ちる.
羽を広げ【羽飛行】魔法を再発動するが,上からくる空気の流れが羽に当たり,加速度が強すぎてどうにもならない.慌てて羽をたたみ【浮遊】魔法に切り替える.どんどんと地表が近くなる.
(止まらない!)
バーン!
ストラスシャールシズスは約500メルテ/周秒の速度で地面にたたきつけられ,地面の赤い染みとなった.ストラスシャールシズスは魔法の選択を間違ったのだ.
「ストラスシャールシズス様! あああ!」
冷静沈着なウァサーゴシュラゼズスでも,ストラスシャールシズスが見ていた状況そのままを見せられて,落下して地面が迫る恐怖に襲われた.そして,彼がどうなったのか,理解した.
「リザードマンの現人神に等しいドラゴニュートの彼を,だれが魔法で殺したのでス!」と,怒りをあらわに叫び,
「シャァァァァァッ! 許しません!」と,激高した.
エーデルシュタイン街中 最後尾最前線
―第6紀 370年2月11日(風曜日)4刻
「青い女魔族.やっと出て来やがったな,おい.」
「こいつ強いですね,王子.」
「てめぇにもわかるか,おい.こいつは強ぇえぜ.」
ベリアラビアはすべてを知っている王子と再会でき,前回のことを思い出して,ニヤニヤ笑ってライオネルたちの前に堂々と立つ.
「今度は油断しねぇ,おい.行くぞ,イクセル.」
「了解です.」
ドゴーーーーン.ドゴーーーーン.
ライオネルとベリアラビアいる辺りを中心に,爆発がどんどん起こって街の建物が次々と倒壊していく.そして,エーデルシュタインの街はみるみる燃えはじめた.
「燃やし尽くすぜ!」
もう一人,エーデルシュタインの街を燃やしている奴がいた.本家,獄炎のフラウファボスである.こちらは逃げるのを諦めて隠れていたマグニルを見つけては,範囲魔法で街ごと燃やしていた.とにかく,燃やし尽くしていた.
エーデルシュタイン 南東方向 ウィルダネス 南東船団待機場所
―第6紀 370年2月11日(風曜日)4刻
『こちらキングトン.本部へ連絡.箒部隊誘導しました.』
東南方向に箒で撤退する部隊の隊長であったキングトンは一番乗りで,飛空艇に帰還した.南東側は集合場を移動したため,距離が一番近くなっていたからだ.
箒で飛んでいる飛空艇に直接乗り込むのは結構恐怖感がある.
「気をつけて着陸してくれ!」
と,後続のマギウスたちに気を使う.キングトン隊だけでも,2000人近いマギウスを撤退させていた.概ね,この部隊の作戦は成功している.
飛空艇から下を見る.
魔族軍が地上にいるアルミラージパンツァーを中心とした部隊に怒濤の勢いで迫りつつあった.
「下に残っている部隊が危ないぞ!箒を下の奴らに回せ!」
キングトンは飛空艇と地上の間を往復する.
「キングトン隊長,ありがとうございます.」
「ファンデヴェールトさん,気にしないでください.女性を魔族軍の真ん中に置いていってはなりませんので,当たり前のことをしただけです.」
キングトンはこんな美人が何で戦場にいるんだろうと,世の中を不条理に思いながら,
「では,逃げましょう.」
「はい,アルミラージパンツァーは爆破しますね.」
ドカーーーン.
3台とも爆破処分した.そして,東南船団はイルミンスールへ向けて出発した.
旗艦ヘレルシュテルン号 艦橋
―第6紀 370年2月11日(風曜日)4刻
「東南部隊は撤退が完了した様です.」
「席が空いている飛空艇は東船団に回してもらえ.」
「了解.」
東側脱出部隊はエリザベートが先頭で地上を走り,マグニルたちを引き連れて来ていた.エリザベートとしてはゆっくりと走って1刻で来たのだが,列は伸び切っていた.距離として18キロメルテなので,鍛えていないとついてこられない速度だ.
「到着順に乗ってくれ.早く!」
「はぁ,はぁ,はぁ,おねぇさん,足早すぎるよ.」
「え? ゆっくり走ったのですが….」
『こちら東南船団キングトン.席の空いている飛空艇を東船団に合流しようとしています.』
「了解です.」
『まずいことに魔族軍が走ってついて来ています.違う方向に引き連れて行った方が良いでしょうか?』
「ファンデルメーデンです.隊を4つに分けてください.
1隊はベヒモス街道を南西へ移動して,エーデルシュタインの魔族軍の背後を突くフリをして,そのままエーデルシュタインを大きく転回してイルミンスールへ.
1隊は西へ進むフリをしてエーデルシュタインと追って来る魔族の中間地点で南下して,その南にある山を迂回して,山の裏で攻撃性森林の低空で待機し,魔族軍をやり過ごして,追ってきている魔族軍の背後を抜けてイルミンスールへ向かってください.
1隊は北東に向かって進んで攻撃性森林の上空で魔族軍が見えなくなったところで,北西に転進して東部隊に合流.
1隊はエーデルシュタイン川東岸まで戻って川沿いを北上して北東部隊に合流してください.魔族軍がどの隊を追跡するか,連絡ください.」
『了解です.』
エーデルシュタイン付近 ウィルダネス 南東船団待機場所の東方向
―第6紀 370年2月11日(風曜日)4刻
「ウァサーゴシュラゼズス様,敵軍4つにわかれました.どれを追跡しますか?」
「地図を見せなさい!それとヴェステローテヴァル山脈に置いている偵察部隊に【念話】して状況を報告させるのでス.」
ウァサーゴシュラゼズスは人類種連合が3箇所に分かれていたのを知っていた.冷血非情のベリアナビアから連絡を受けていたし,ストラスシャールシズスが殺される前に自軍の前方の状況を確認していたのである.ベリアナビアから連絡があったから,昨晩は深夜に兵たちを叩き起こして,強行軍で今朝に間に合わせたのである.
「大きく動いているのは一番南に配置された部隊のみで,他の2隊は移動していないとのことです.」
「一番近い敵部隊ところに行きまス.場所はわかりまスね? ここでス.ヅォーク隊が先導して,襲撃しなさい.」
と,東船団の集合場所を指差す.ウァサーゴシュラゼズスはパスカルの策には乗らず,まっすぐ東船団の集合場所に行くルートを選んだ.
「はっ!」
ヅォークたちは走り出した.
※ マップは生成AIを利用しています.
何度生成しても,思ったようにならないため,妥協しています.なお,今回はすぐに妥協しましたw.そのため,マップには部分的に正確でない部分があります.




