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第2-3話 12歳。国の依頼と、勇者&悪魔くん

セパレート鎧で冒険者ギルドへ行き、受付嬢のシャインさん(サブマスの奥さん)に「可愛いわ!」と褒められ、


ウィリスさんとベリックさんに「格好良い鎧じゃねぇか」と頭を撫でられ、

ご機嫌ルンルンで依頼を受けに行った日から2日後、パパンから呼び出しがあった。



「むー。行くけどさぁ。『遠回し拒否』された時から避けてたからちょっと会いずらいんだよねぇ」



サイラス「お気持ちは分かりますが、侯爵様をあからさまに避けるのは如何なものかと。

ハッキリ「ダメだ」と言われた訳でもないのですし、本日伺った際にもう一度お聞きしてみては如何です?」



「そうね。何時までも子供みたいに拗ねていたらダメね。お父様の所へ行って、きちんとお話してくるわ。サイラスはベリー邸に居ても良いわよ」



サイラス「いえ、私はベリー様の傍にいます。絶対に離れないと誓いましたから」



「そ、そう…あーのね?この間から言葉に熱が籠りすぎてない?行動にも目にも熱があるっていうか?」



サイラス「あの鈍感なベリー様も成長しましたね。いつ気付くのか?と、一生気付かないのでは?と思っていましたが」



そりゃ、手の甲にキスとか、眠れない時に「寝付くまでお傍におります」って寄り添われたらねぇ。いくら鈍感な私でも「これは?もしや?」って思うわよ。


でもなぁ…と、横を歩くサイラスにチラッと視線を送ったら、ニコッて微笑まれた。


くっ……お母さんが、男になってしまったよ。


下を向いて悶々としながら歩いてたら、「困らせてしまいましたね」って呟いたのが聞こえた。


顔をあげてサイラスを見たら、眉尻を下げて「すみません」と謝られた。そして……



サイラス「ハッキリと伝えるつもりも、気持ちを受け止めて欲しいとも思っておりません。

ベリー様にはユージーン殿下がいらっしゃいますし。私は専属護衛として傍にいられたら幸せですから」



つて、哀しそうに笑うから、何も言えなくなってしまった。


何時もならこういう時ウルが《ベリーちゃんモテ期キター!》ってはしゃぎ出すんだけど、

昨日の朝《ユージの所に行ってくるにゃあ!》って飛んでったっきり、帰って来てないのよね。


なんかあったのかな?と心配になるけど、確認のしようがないのよ。念話も届かないし魔力も追えないし。


八方塞がりね……って、ウルやユージの事は心配だけど、サイラスをどうする?って……どうも出来ないわ。


「う~ん、う~ん」と顎に拳を当てて唸ってたら、


「ははっ。私の事を考えて悩まれてる姿を見られるとは…それだけで嬉しいですね」と宣った。


口をパクパクさせてサイラスを見てたら、「ベリー様、到着致しました」と、いつの間にか侯爵邸に着いていて、執務室の前まで来ていた。


コンコンとノックをし、入室の許可が出てから中に入り、いつものようにパパンに挨拶をした。


ソファに座った私の後ろにサイラスが立ち、向かいのソファにお父様と、後ろにセバスが控え、話が始まった。


何時もなら傍にサイラスが控えてても気にならないのに、数分前に言われた言葉が頭にチラつき落ち着かなかった。


それでも、対話はきちんと行おうと真剣に耳を傾けた。



侯爵「すまんな急に来て貰って。少し話したい事があってな。で、極秘事項なので防音結界を張らせて貰った」



サイラス「!?では私は……」



侯爵「いや、サイラスには聞いて貰おう。ベリーの護衛として、そして『英雄(仮)』としてだ」



サイラス「ッ!?畏まりました」


分かったと返事をしたが、サイラスは心の中で愚痴っていた。(仮でも既に『英雄』扱い…なんだか居た堪れない…英雄になれる素質なんか持ってねぇよ…)と。



侯爵「うむ。ではセバス報告を」



セバス「はい旦那様。これは極秘事項となっており、称号持ち必須案件となります。他言しないよう名に誓って頂きます」



「あ、はい。ストロベリー・ディ・シュタイザーの名の下に、他言しない事を誓います」



「サイラス・プレストンの名の下に、他言しない事を誓います」



名に誓うとは、また大層な話だな。面倒臭い匂いがプンプンするよ。

称号持ち案件とか意味不だし…私の称号のどれが関わってるんだろう?



セバス「では話を進めますね。情報提供者はスウィーティオ王国の元宰相で御座います」



え!?スウィーティオ王国…って、ユージの祖国じゃない!そこの《《元宰相》》が情報提供?


吃驚している間にもセバスが報告を続けていた。



4年ほど前、突然その国の王や王妃、皇太子殿下、他数名の貴族家が散財を始めたとの事。


当時、宰相だったクルゼフ(※情報提供者の元宰相)や大臣達が苦言を呈したが止まらず、

国庫が危うくなると入国料や領間の通行税を引き上げたり、国民の徴収税を上げたりしていた。


徴収が追い付かなくなると、侍女、侍従、執事、近衛、私兵、を次々に解雇。

それでも足りなくなり、家財道具、調度品、絵画、更に宝物庫の遺物までも売り払い、城の中が寂れていった。


善良な下位貴族や中位貴族、高位貴族、各商店から財産を巻き上げたりとやりたい放題。


苦言を呈し続けていた宰相や大臣を根こそぎ解雇。自分に従う者だけを側に置き、それぞれに役職を与えた。


国がどんどん荒れていき、人が他国へ流れ人口が減ると税収も減るので、子供を攫って売り飛ばしたりと金策を行っている。


子供が足りなくなると困るので、第二王子や貴族子息に現宰相の娘や、未婚の令嬢と無理やり婚約を結ばせ、子作りするよう指示。嫌がる素振りもなく、毎晩励んでいるとの事。


子供の購入先の一つ、スパイシー王国のカリャール侯爵家が、三女と持参金をたんまり送るから子供をもっと寄越せと要求。


三女は要らないが金は欲しい王は了承し、余った女をどうするか考え、ユージーン殿下の婚約者として引き取り、早急に婚姻させ僻地へ飛ばす予定。



セバス「ここまでが腐った国の内情となっております。次の報告が称号持ち案件で御座います」


ここまで聞いてても吐き気が込み上げてきて、続きを聞くのが恐ろしくなった。サイラスも顔が真っ青だ。


耳を塞ぎたくなるのを堪え、(ちゃんと聞かなきゃ!)と自分を叱咤し、続きの情報に耳を傾けた。



国が腐り始める前、王太子殿下が書庫で見付けた古書に書かれていた《《悪魔召喚》》を行った。

と、その当日一緒に儀式を見ていた侍従から、解雇後にクルゼフ元宰相が聞いた。


それから国が腐っていったので、国を滅亡の危機に陥れたのは『悪魔』の仕業だろう。との事。


魅了魔法や精神魔法、闇魔法を操る『悪魔』の術に掛かり、王や王子、貴族達が狂っているのでは?と考え、

術の解除や『悪魔』の討伐が出来ないか?と調べた結果、神級光魔法か、『聖女の祈り』で浄化できるのを突き止めた。


それで過去に『聖女』がいたと言われている国に情報を回した。助けてくれ。と。



セバス「以上が極秘の機密情報になります。元宰相達は必死に『聖女』を探していらっしゃるようです」



全部聞き終わり、無意識に身体に力が入っていたのを「はぁぁ」と溜め息を吐いて力を抜き、ソファの背もたれにドサッと深く寄り掛かった。


振り返ってサイラスの様子を確認したら、今にも崩れ落ちそうになっていて、慌てて隣りに座らせた。


「ベリー様…職務中ですから…」と、立とうとしたのを「良いから座ってなさい、今にも倒れそうだわ」と制し、お父様に了承をとった。


皆が暫く沈黙し、数秒シーンっと静まり返った室内に、最初に声を発したのは、お父様だった。



侯爵「報告書を読んでな、ベリーは『聖女』ではないが、神々の寵愛児。そして種族が『半神』だろ?なら、『悪魔』をどうにか出来ないか?と、考えたのだよ」



確かに私ならどうにか出来るかも?と思っちゃうよね。なんたって、『聖女』より高位存在ですからね。



ベリー「なるほどですね。『聖女』では無いけど、実は『乙女の祈り』っていう、最上級浄化魔法は使えます。『悪魔』に効くか分かんないんですけど」



侯爵「ふむ……愛娘に頼むのも心苦しいが、スウィーティオ王国まで行ってきてもらえないだろうか。出来たら、居るか分からないが、『悪魔』を討伐してきて貰いたい」



ユージの祖国だし、なんだか国の中もかなり悲惨そうだから、スウィーティオ王国には行くよ。あわよくばユージに会えるかもしれないしね。


というか、ユージが巻き込まれてる可能性大だよね。



侯爵「此度の件は、国から称号持ちへの依頼となっており、愛し子ストロベリー、英雄(仮)サイラス、そして、勇者の子孫で先祖返りのエドワード、3名で行く事になる。

『機密事項なので、パーティや出発式が出来なくて申し訳ない』と、国王からの言付けだ」



もうさ、《《国から》》って事は『NOと言えない依頼』であるし、私達3人にお願い(行け)って事でしょ?返事してないうちから《《言付け》》するなんてさ。



「パーティとか出発式?何を寝惚けた事を言ってるんでしょうね。そんな事するってもし言ってたら、国王でも張っ倒しますよ。そんな事に税金使うな!それより貧困街をどうにかしろよ!」



侯爵「あ、ああ。うむ分かった。貧困街の事は私から国王に進言しておくから、そうカリカリするな。大変な任務を頼んでしまって申し訳ない」



「すみません。イライラしてしまって。国の一大事なのに『パーティ』の心配をされて、プチッときてしまいました。国王には是非とも進言のほう宜しくお願いします」



ダメね。イライラしてるからって当たり散らして。癇癪起こした子供みたいだわ。



侯爵「あい、わかった。ではサイラスも頼んだぞ。(仮)ではあるが英雄だからな。エドワードにも宜しく伝えておいてくれ。

それと、もしスウィーティオ王国へ行き、現状厳しいと感じたら、ムリをしないで帰って来なさい。

お前達は『称号持ち』の前に、限りある命を持つ人なのだからな。無駄に命を散らす事のないようにな」



サイラス「は!お任せ下さい!侯爵様のお言葉、しかと胸に刻みました。ベリー様を傍でお守りし、必ず3人で無事に戻って来ます」



この秘密の会議の数日後、スウィーティオ王国へ向けて出発した。


ウルが帰って来ないので転移が使えず、騎馬での移動となったが、「通常移動は騎馬か徒歩だ」と、エドに言われ、「さようですね」と頷き出発した。



エド「しっかし悪魔とは…そんなん居るのかね。

あー!国の依頼じゃなきゃ絶対受けないぞ面倒臭ぇ!可愛い娘と離れるの辛い!!」



サイラス「……さっさと行きましょう。苦しんでる方達が沢山いらっしゃるんです。ベリー様しっかり掴まってて下さいね、スピードあげますよ!はっ!」



「はぃぃぃいい!!」(超跳ねる!ケツいってぇぇえ!!)


-----------------------------------------------------


【スウィーティオ王城内、離宮地下】


悪魔くん《勇者の坊やは何で嫌われてるんです?》



ユージ「いや、普通に喋れるんじゃん。さっきまで《怨みが~》《憎んで~》って胸反らして言ってたじゃん。

で、嫌われてる理由は『側妃の子』だからかな。あと魔力の多さと、この無表情だな」



悪魔くん《ヒッヒッ。あれはですね、悪魔(私)を呼び出した側の人間が、私を見て恐怖したんですよ。その時の表情にゾクゾクしたわけです。

もっと感じたくて、ああして人間を煽ってたのです。貴方以外は上手くいったのですがね。全く困った勇者の坊やですよ。ヒッヒッ。

その困った勇者が嫌われてる理由が、そのような事とは…嘆かわしいですねぇ。ヒッヒッ》



ゾクゾク…言い方がヤラシイな変態。そして、憐れむな変態。隷属解除しろよ変態。



ユージ「で、悪魔くんがオークキング共に従ってる理由は?恐怖や怨みの感情が欲しいだけか?」



悪魔くん《ええ、ええ、そういう事ですねぇ。召喚は一種の契約ですからねぇ。お願いを聞く対価に負の感情を要求したわけです。はいぃ。ヒッヒッ》



ユージ「そのお願いの一つに、俺の隷属もあったと。はぁぁ。なぁ、解除してくんね?」



悪魔くん《そうですねぇ。「いま門を通った奴が私に従わなかったら、謁見後に隷属してくれ」と言われましてね。扉前で待ち構えてたんですよ。ヒッヒッ。

隷属解除は、女神か聖女、若しくは私を排除するしかないですねぇ。ヒッヒッ》



ユージ「はぁ。じゃあムリか……」



悪魔くん《おや?お前を排除する!とは言わないのですか?》



ユージ「言わないし、思わない。ただ対価を貰って、お願いを叶えてるだけだろ?

無闇矢鱈と人間を襲ってるわけじゃ無さそうだし、なんかお前面白いし……!?……ゔっ……」



キタキター!魔力抜き抜きの時間がぁ!う〇〇出しっぱなしみたいな感覚が続いてキチーんだよ。終わったら二日酔いみたいになるし。


ユージが魔力を抜かれ始め、「ゔ~ゔ~」と唸って悶え苦しんでるのを見ながら、悪魔くんは顎を掴み思考していた。



悪魔とは悪魔界に住む者達で、人間界、天上界とは関わりを持たない存在だ。

食事は、人間界から流れ落ちてくる負の感情を頂いている。空腹を感じる事もあるが、飢えてるわけではない。


なので何も困ることなく自分達の世界で自由に暮らしている。中には《人間界へ行ってみたい》と言うヤツもいるが、


『悪を嫌う人間は、我々の存在を見ると束になって殺しに来る。人間界は恐ろしい所だ』


と、元祖様がよく言っているので、積極的に行く者はいない。


その、《人間界へ行ってみたい》と言ったヤツが、召喚された私だ。


『勇者が魔王を倒しに行く』という物語を、『小者半魔人』と呼ばれていた幼少期に聞いてから夢見ていた人間界。


《召喚された!》と気付いた瞬間、気分は有頂天!憧れの『魔王様』に会える!と思っていたからだ。


ただ、魔王に会う事より、私を呼び出した者から溢れてくる『恐怖の感情』に気分が高揚した。


素晴らしかった。だから、願い事の対価に『高揚する程の負の感情』を要求した。


契約主が与えてくれる『負の感情』はとても美味しかった。もっと欲しくて願い事はどんどん叶えてやった。


小さな子供を売り買いしている姿には、流石の私もゾッとした。《人間とは欲深く、罪深い》と初めて思った。


強欲、恐怖、憎しみ、怨み、そんな感情を流れ出るまま貪り続ける日々が過ぎたある日、一人の人間を「隷属してくれ」と言われた。


その国の王の息子で、契約主の弟だと聞いた。「了承した」と返事をし、実行した。


若干の反発があったが成功した。目の前で崩れ落ちた人間は騎士が連れて行った。



「カリャール侯爵が、持参金を持って来る日まで魔力供給器として使うか?

三女と婚約を結んだ後、両名を僻地へ飛ばし、そこで排除だ。不要物だからな」



国の王が、椅子にふんぞり返ってそう言ってたのを聞き、踵を返してその場を後にした。


私は、術の反発が気になり、隷属した男の元へ向かった。ベッドに寝かされてるソイツを鑑定した。


『勇者』だった。物語に出てくるあの『勇者』


それを確認してからウキウキと部屋を後にし、《今後の楽しみが増えましたねぇ》と、観察を始めた。


ただ、不思議な事があった。3日に一度、中の様子が見えない時があった。

しかも部屋に近付くと負が浄化されるような感じになり、とても不快だった。



《あれは何でしょうね。お近付きに成りたくない存在を感じます》



不快感が嫌で、勇者の観察を止めることにした。時が経ち、勇者の存在を忘れかけてた頃、「離宮の地下に餌があるから食べてこい」と契約主に言われ、その場に向かった。


近付いて分かった。《《餌》》が勇者だと。



《たまりませんねぇ。勇者の恐怖!負の感情!煽って煽って、存分に恐怖を与え、たっぷりとご馳走を頂きましょう!》



そう意気込んで、ジメジメする、実に私好みの爽快な場所に辿り着き、ドアを開け放った。


そして、何時ものように恐怖を与える為に煽った。自信たっぷりに!尊大に!


怖くて泣き出すか?陥れたヤツを憎むか?さぁ、勇者の負の感情を寄越せ!


と、語りきった。熱弁を奮った。だが、返ってきた言葉は「お前、面白いな」だった。


耳を疑った。ん?空耳か?そう思って、もう一度熱弁を奮った。《殺してやる》とも言ってやった。《呪ってやる》とも。


まぁ、私は殺しはしないし、呪いは専門外なので口からデマカセなのだがな!ヒッヒッヒッ。


ちょっと喋りすぎて息切れしてしまいましたが、まぁ良いでしょう。これだけ言えば恐怖で震えるはすですからね。


そう思っていたのですがね。「悪魔くん、お疲れ様」って!《《お疲れ様》》ですよ!信じられます!?

恐怖を与えに来たのであって、《《仕事》》をしに来たのではないのですよ!?


悪魔の私を労う人間なんて初めて見ましたよ。し・か・も、悪を敵とする『勇者』がですよ?


ガックリ項垂れましたよ。四つん這いになって。そして悟りました。『勇者(コイツ)には勝てない』と。


そして、目の前の男が『勇者』だという事を頭から消したんです。スっと消えてスッキリしました。


で、床に座って、魔法陣の中心に転がってる男を見たわけです。消去したあとに。だから、誰か分からなかったんですよねぇ。


なので、《貴方は誰なんです?》と問い掛けたんですよ。


普通、目の前に知らない人がいたら聞きますよね?皆さんそうでしょ?なので聞いたんですよ。


そしたら、食い気味に叫ばれましてね?何故か消したはずの記憶がピッシャーーン!と戻りまして。


ヒッヒッ。『勇者』という存在は流石だと思いましたよ。


そこから世間話をしまして、色々聞いた結果、『私を排除する気は無い』と、『対価を貰ってるだけだろ』と、『面白い』と、そう言ったんです。


なんだか、胸がホッコリとしたんですよ。『負の感情』を貰ったわけでもないのに。


人間と会話をして『楽しい』と感じたのも、『嬉しい』と感じたのも初めてで戸惑ってしまいました。


そして、魔法陣の中で苦しんでる彼を見てると、『助けてあげたい』という気持ちが湧いてきまして、更に戸惑ってます。



ユージ「はぁ、悪魔くんさ、くっ、ふぅ、何か喋っててよ、ぐっ…気が紛れる…ゔ、からさ」



悪魔くん《え、あー。ふむ。私は『勇者と魔王の物語』が好きでしてね。中でも魔王様に憧れてるんですよ》



ユージ「ぐっ…へぇ。だからさっき魔王討伐の事を聞いてきたんだな。ふぅ…」



悪魔くん《ふむ。で、あるからして……間近で戦闘が見れたら、良いな……と、思って……》



ユージ「はは!…ッ…あれな、実際は《討伐大会》なんだよ。魔国の王を倒す!って輩が集まってきて、優勝者と魔国の王が最後に戦う大会。はぁ、はぁ」



むっ。苦しいなら喋るでない。えー、魔法陣の解除……《アナライズ》ふむ…なるほど…



ユージ「ふぅ、あれ?悪魔くん聞いてる?おーい」



悪魔くん《ええい。少しお待ちなさい。これを解除してみますから……これは!あー、そうか。《《死》》が解除の鍵なのですね。『魔力供給器』なるほどな名称ですね》



ユージ「え、マジ?悪魔くん解除してくれようとしてんの?優しいじゃん!久々の優しさに涙出そうなんだけど」



悪魔くん《ヒッヒッ。解除するのは『勇者』を助けて優越感に浸ろうかと思いましてね。ヒッヒッ。優しさではないのですよ。ヒッヒッ》



ユージ「ふ~ん……あ、吸収が終わった。はぁ、ダル」



陣の縁に座って、頭を捻りながら解除を試みてる悪魔くんを見ながら、(普通に助けようとしてるよな)と思ってたユージ。


その通り、悪魔くんはただ単に助けようとしてるのだ。そんな優しさ溢れる悪魔くんに天敵が迫ろうとしている。


その頃、悪魔くんの天敵は、朝からラップを披露しては主に鬱陶しがられ、依頼について行っては「退屈なら帰れば」と怒られ、それでもご機嫌に過ごしていた。


ヤツが目の前に現れるまであと1日。カウントダウン開始だ。

アルファポリスでも掲載しています

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