第2-2話 イライラな12歳と、ユージの今
朝の陽射しにガンガン照らされて、眩しくて顔を枕に押し付けた。そうすると光が遮られ、また眠りに付けるのだ。
二度寝……なんて素晴らしい響きでしょう。このままスーッと眠りに……「ギギャーギギャー」
また来たわね。ギャオちゃん。あなたが来ると二度寝が出来ないのよ。
あと3時間くらい後に来てくれない?そしたらギャオギャオ鳴いても許してあげるわ。
ウル《yoyoベリーyo、サンシャイン太陽、窓辺で愛鳥が鳴いてるyo。モーニングだyo、キラキラ笑顔でハッピーday!ズンチャ、ズンチャカ、ジャン!》
「……ウル……今度はラップ?はぁ~朝からご機嫌ソングありがとう……」
毎回毎回、何処からネタ仕入れてくるのかしらね。毎日楽しそうなのは良いけど、朝からテンションマックスはやめて欲しいわ。
これでも私、落ち込んでるのよ?このアホウサギ。
ウル《んもぅ、暗い、暗いよダークだよぉ?なんか辛気が臭いよ?まだ、学園入学にダメ出しされたの気にしてるの?そんなに行きたかった?》
そう!そうなのよ。パパンに「入学します!」って伝えに行ったら、執務机からガタタッて立ち上がって、ツカツカと近寄って来たと思ったら、両肩に手を乗せて……
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【数日前の出来事】
侯爵「どうしたんだ?何だって?「入学したい」と言ったのかい?剣闘士科に?生意気な子息を叩きのめしに行くのかい?
いいかベリー。学園は『学ぶ』ところであって、決闘をする場所じゃない。分かるかい?」
「いや、あの…」
侯爵「うんうん。ベリーなら分かってると思う。剣のスキルを磨く!素晴らしい志だ。なぁ、セバス!」
セバス「ええ。そうで御座いますね。ただ、ベリーお嬢様には護衛がいらっしゃる!傍に凄腕剣士が!」
「…………」
この後も口を挟む隙さえなく、パパンとセバスが「やはりベリーは…」「志は立派で御座いますが…」と話し続けていた。本能で悟った。(OKされねぇな)って。
「もう少し考えてきます」って言ったら、超イイ笑顔で「そうかそうか」って見送られた。
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で、私すねてる。いまナウ。そしてアホに辛気臭いと言われた。いまナウ。
「辛気が臭いって……まぁ確かにジメジメしてるわね。自分でも分かってるわよ。
学園は、《《絶対入りたい!》》ってわけじゃないのよ?カーストがあるような所に喜んで行く程バカじゃないわ」
(……が欲しいのよ)ボソッ。
ウル《ん?なんて?何が欲しいのぉ?》
「だから!……ちが欲しいの!」
ウル《血が欲しい??ベリーちゃん、バンパイアにはなれないよ?あれは悪魔だ……》
「そんなこと言ってないから!バカ?やっぱりウルってバカでしょ。「バンパイア」になんてなりたがるかボケー!」
ふぅーふぅー。興奮しすぎたわ。頭に血が上ってクラクラするわ。
ウルが最近ウザイのよ。サイラスも、ちびっ子メイド達も。何か言われる度にイライライライラ。
ニコチン不足だわ。吸ったことないけどね!
ユージが居ないから?って?違うのよ。なんか、こう、『アンネちゃんの日』に近いような……
あ、『アンネちゃんの日』って知ってるかしら?俗に言う『女の子の日』ってやつね。
「は!そうだわ!それよ!だからイライラしてたんだわ!え、この世界って、ちゃんとした用品あるのかな?」
身近に教えてくれる人が居なかったから分からないわ。出たら毎回クリーンするのかな?
え、出る度に《クリーン》《クリーン》って唱えなきゃいけないの?あんなの数分置きにデロッとするじゃない!
あ、《クリーン》を付与した下着を履くのかな?何処で売ってるの?服屋?見た事ないんだけど。
「下着に付与……」あのドロワーズってのに付与されてるの?アレ買わなきゃダメってこと?ダサくて履きたくないのよね。
自分の持ってる下着に付与する?あー、出来るわね。魔法陣付きのパンツか……男性には見せたくないわね。
ウル《……ちゃん、ベリーちゃん!戻っといで》
「は!あれ、何話してたっけ?」
ウル《どうしても学園に行きたいの?ってことと、何かが欲しいって言ってたことぉ。
ボクが分からなかったから怒った?『血が欲しい』って聞こえたから、それに答えたんだけどぉ》
「あ、それよ。女の子の友達が欲しいって言ったの。だから、学園へ行けば作れると思ったのよ。
なのに、お父様が遠回しにダメって言ってたでしょ?なんで!?って感じじゃん?
それで落ち込んで、更に最近ちょっとした事でもイライラするから、ウガーー!ってなったのよ。ごめんねウル、八つ当たりしちゃったわ」
ウル《八つ当たりね。まぁ、それで気が晴れるなら幾らでもしてよ。ボクは全然平気だし。
で、学園に行って友達が欲しいと。しかも女の子の。いやぁ、正直ベリーちゃんには同年代の女友達はムリだと思うよ》
「え、なんでよ。喫茶店行って女子トークとか、市井に遊びに行くとか、そんな友達が欲しいだけなのよ?」
ウル《……それなら、市井で友達作ったほうが良いよ。学園に通うような女の子は、だいたい貴族だからさ、花の話とかドレスの話、宝石の話、人の粗探し、婚約者自慢、そんなのばっかりだから、ベリーちゃんにはムリだと思う》
おお……なるほど?その辺を良く考えてみよう。
花の話は出来る。私だって好きだからね。
ドレスの話は……普段着ないし、この世界のドレス私の趣味じゃないから、何処を褒めていいか分からないわ。
宝石の話ねぇ。「貴女の胸に輝くエメラルドが、キラキラしてて綺麗ですわぁ」とか?言うの?……ムリね。
人の粗探しか。粗探しというか、気になった部分の指摘しとかはするわね。
「〇〇様の髪はパサパサですわね。老けて見えますのよ?」とか、
「ドレスのサイズが身体に合っていなくてよ?歩くだけで痩せますわ」とか、
「まぁ!肌がカサカサね!お手入れはしてますの?」とか言っちゃうな。
あ!そっか!そんな性格だから嫌われてたのかな!!超分かる気がする。
立夏ちゃんは私と同じで、バッサバッサと言いたい事を言ってたけど、なんかカリスマ性みたいなのがあって、慕われてたんだよね。
苺花に足りなかったのは、『カリスマ性』だったのか。それはストロベリーに転生しても無いな。
なら、学園へ行っても友達作れなくて孤立するか。
それに婚約者の話とか、今んところ婚約者いないから出来ないもんな。
ユージ?約束はしたけど、帰って来ないんだもん。
ウル《それにさぁ。推薦されたのが剣闘士科でしょ?そんな所に女生徒は居ないと思うよぉ。
あと、ユージにバレたら即効辞めさせられると思う。男しか居ないしぃ》
「ユージなんか知らないわよ。連絡ひとつ寄越さず放置よ?どうせ、貴族令嬢と見合いでもしたんでしょ。
で、意気投合したんじゃない?私の事なんて忘れてるわよ。捨てたいなら捨てたら良いわ」
ウル《ベリーちゃん…泣くくらいなら、ウソでもそんな事を言っちゃダメだよ。「捨てたら良い」なんて》
(それに、縁談を断って大変な目に合ってるんだよぉ。「ベリーには言わないで」ってさぁ。2年もバカじゃない!?もぉ~ウルは言いたくてぇ言いたくてぇ)
「ぐすっ。泣いてないわよ。これは汗よ汗。はぁぁ、ふぅぅ。今日はギルドに行こうかな。街依頼なんかないかなぁ。あ、ウルは来なくて良いわよ。街依頼の時、退屈だって言ってたもんね」
今日は一人で依頼を受けるわ。サイラスが今日休みで、ユージの代わりに護衛として派遣された『オスカーくん』なら撒けるわ。
というか、もう12歳になったし、強くもなったし、貴族令嬢じゃないし、護衛って要らないんじゃ?って思うのよね。
前にそれをサイラスに伝えたら、「私は一生ベリー様の騎士です。貴女が必要無いと言っても、私は傍にいます」
ってさぁ。手を取ってチュッだよ!恥ずかしくて顔赤くなったわよ!何処ぞの王子かと思ったよ。
世の女性にあんな事したら、一発ノックアウトだわよ。大人の色気ムンムンよ。女狐ギルド長なんて想像妊娠しちゃうんじゃない?
全く。サイラス恐ろしい子。
ウル《ベリーちゃん。ボクは確かに街依頼が退屈だと思うんだ。それはね、ボクが手伝う事が出来ないからなのだぁ!討伐なら手伝えるじゃん!
でも、ベリーちゃんが街依頼を好きなの知ってるから、否定はしないよ。一人で行かせられないから一緒に行くからね!》
「むー。一人で行けるのに」
ウル《あー、ダメダメ。ほら、行くなら支度しないと。朝食は屋台で食べる?》
「んー。ハクが用意してくれてるんじゃない?」
ウル《空間収納に入れとけば良いから、食べなくても大丈夫だって。ほら、今日の装備ね》
「ありがと…って、何コレ。セパレートの鎧だ。可愛いね!作ってくれたんだ!」
以前、市井で見掛けたんだ。セパレートの鎧装備で歩いてる子。それ見て可愛いって思ってたんだよね。欲しいなぁって。
何故それがウルに分かったんだろ。相棒って凄いね。朝からラップ歌う変態ウサギだけど。
ウル《ベリーちゃんがガン見してたからさぁ。欲しいのかなぁって思って。ゴンチャに頼んだのぉ》
「マジかぁ。神様作かぁ。《鑑定》あ、破壊不可とか、防汚とか、使用者限定が付与してあるね。凄い性能だよ装備するの怖いね…でも感謝。ゴンチャ神ありがとう!」
手を組んで感謝を伝えたら、《はっはっは。また何か作っちゃるわい》って、念話が飛んできた。
吃驚したぁ。大聖堂じゃない所で聞こえるとか、初めてじゃん。
せっかくだし、身に付けるか。あ、鎧の下はどうしたら?ビスチェとミニスカで、へそ出しかな。ニーハイとブーツで可愛い冒険者装備。
ウル《わぁ、ベリーちゃん可愛い!でもお胸がギチギチだね。潰れちゃってるよ》
「ホントそれ。はぁ…邪魔くさいわ。150cmしかないのに、Dカップくらいあんのよ。削りたいわ、走る時痛いのよね」
ウル《Dカップ?が分かんないけど、大きいって事は分かるぅ。ユージが喜びそうだねぇ》
確実に喜ぶな。小声で「巨乳グッジョブ」とか言ってたの聞こえてたし。私が寝てると思って、たまにブツブツ呟いてたのよ。(やっぱ男の人ね)って思ってたわ。
はぁ…そんなスケベなユージは今頃なにしてるんだろう。向こうで出会った子とピーーしてんじゃないわよね。
そんな事してたら往復ビンタよ。
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ベリーが自分の浮気を疑っているなど、微塵も思ってないユージは、スウィーティオ王国の、王城敷地内にある離宮の地下に監禁されていた。
『魔力吸収の魔法陣』の上に固定され、無限にある魔力を抜かれているのだ。
ユージ「ぐっ…はぁ、はぁ、はぁ…無限でも…キッツ…」
『魔力供給器』になったのは最近の事だった。こうなった原因を、「クソっ」と悪態吐き、顔を歪ませながら思い出していた。
『帰還命令』があった次の日には転移魔法で門前まで飛んだんだ。移動にひと月掛かる距離を、一瞬で移動してきた事がバレたら、『勇者』だと知られてしまう。
それを危惧した俺は王族証で入門せず、一応作っておいたギルドカードで入国した。
依頼はカード維持の為に2、3度受けただけだから、当然ランクは底辺のEランクだ。
そんなカードを提示したもんだから、門兵がクソ笑ってた。他のヤツも出て来て一緒になって笑ってた。
「その歳で雑草かよ!」(※Eランクを雑草と揶揄する)
「弱っ!メスゴブリンの餌かよ!」
「高ランクに集るモスキートじゃね?」
「いや、フェマアドベ専用の娼年じゃね?」
とか色々と言ってたな。「腐ってんなぁ」って呟き、カードを返してくれないから、《アポーツ》と手元に戻し、入国料の銀貨3枚を放り投げて、スタスタと脇を通り抜け入国した。
「雑草が!」「底辺が!」って怒鳴ってたけど、無視したんだ。
ユージ 「全く、法外な入国料に門兵がクソ。どうなってんだこの国は」
(ひと月どうすっか。やっぱベリーの所でひと月過ごしてから来れば良かったな。帰るか)と思案しながら歩いてたら、影がスっと来て耳打ちしてきた。
影 (ユージーン殿下、城から迎えが来ます)コソコソ。
ユージ (え?何で戻って来たの知ってんの?)コソコソ。
影 (門にいた近衛が連絡したか、魔力登録されてて感知されたかだと)コソコソ。
ユージ (あー。洗礼の時に登録したな。それだわ)コソコソ。
影 (来ました。では…)コソコソ。
という、影と会話をした後、豪奢な馬車が目の前に止まり、ニタニタした陰険そうな男が出て来て、馬車に乗せられ、城へとドナドナされたわけだ。
んで、「こっちだ」って破落戸みたいな騎士に顎で案内され謁見の間に行ったんだよな。
すっごい雑な案内にまず驚いた。「側妃の子だから」って理由じゃねぇなって思った。他に理由があると。
城の調度品や装飾品が根こそぎ無くなってたし、メイドと執事、侍従が見当たらなかったからな。
しかも異臭が凄くて、鼻が曲がりそうだったわ。
んで、(こりゃアカン感じの帰還命令だな)ってすぐ分かったから、さっさとお暇しようと思ってたんだわ。だから、「謁見も適当に終わらそう」と足を踏み入れた。
玉座をチラッと見たが、デラックスオークキングみたいなのが座ってた。その隣には子分のオークが俺を見下ろして立っていた。
(ありゃ誰だ?)と膝を付き頭を下げてたら、「フンガッ、顔をあげろブヒ」って聞こえた。笑いそうになるのを歯を食いしばって耐えた。俺エライ。
そして顔をあげたら、子分オークがニタニタしながら「喜べ愚弟、貴様に縁談だ」と宣った。
言ってる意味は分かったが、目の前のオークが『兄』だというのに驚いて、凝視していた。その間にデラックスが話し出した。
DX「ブヒッ。スパイシー国のカリャール公爵が、我が国と取引をしたいと、土産に縁談を持って来た。相手はカリャール侯爵の三女。アマーロス令嬢だ。
第一王子ダーティーは、この国の王子であるからして、彼の国には行けまい。
第二王子は既に宰相の娘と婚約しておるので行けぬのだ。よって、側妃の子ではあるが、お主に白羽の矢が刺さったのだ。フガッ」
(はいキタコレ。スパイシー国って何処やねん!『カリャール』じゃなくて、《《カレールー》》じゃないんか?)
ちょいちょい名前ネタをぶっ込んできますよね。『ダーティー』って、《《汚らしい》》じゃん。まんまかよ!
ユージ 「その縁談、謹んでお断りさせて頂きます」そう言って立ち上がったわけだ。
そして「貴様!王の御前ぞ!」と、ダーティーオークが吠えて、(え!あれが父上!?)と驚きながらも無視して出て行こうとしたら、扉を開けた所に馬車で迎えに来た陰険野郎が居た。
訝しげに見てたら、「ヒヒッ」って笑ったと同時に隷属魔法を掛けられたんだよ。
んで、「素直に応じていれば…ヒヒッ」とか言われてバッタンキューだったわけだ。
気付いたらどっかの部屋のベッドに寝かされてて、(しくったなぁ)と、(ウルかヤミーちゃん解除出来んか?)と考えて、転移魔法を使おうとしたら使えなかった。
他の魔法も同様で、うんともすんともいわない。扉を開けようとしたら、「バチッ」って弾かれる。「詰んだ…」と思ってたら、目の前にウルが現れて、
ウル《やっほーユージ…え?どしたの?クンクン。隷属されてるね。強力なやつ》
ユージ「よおウル。さっきぶり?なぁ、コレ解除できないか?」
ウル《……こりゃボクじゃ無理かなぁ。なんか、命令が複雑で、魔法陣の構築解除が難しいね。一歩間違ったら『ドカンっ!』ってなるね》
ユージ「はぁ…人間にそんなの掛けれるヤツいんの?」
ウル《昔いた、大魔導師なら可能かな?あとは悪魔ね。で、凄く薄~い可能性だと、闇の上級魔法を使える人かな?魔国の王とか、大賢者とか》
ユージ「マジかぁ。解除出来るのは?それも同じヤツら?」
ウル《解除出来るのは、光の神級魔法を使える『癒しの女神』と、聖属性を操る『聖女』だね。『大魔導師』でも解除出来るかな。後は、ユージが術者を殺すか》
ユージ「え?なら、ダメじゃん。ムリじゃん。俺ずっとこのままか?あ!ウルが転移で俺を飛ばせないのか?」
ウル《やってみるねぇ……転移!》
ユージ「い゛ッ!ギャァア!グァァア…い゛ぎぎぎ…」
ウル《ああ、ダメだ。術者以外に干渉出来ないようになってる。
あ!聖属性ならベリーちゃんが居るじゃん!連れて来るよ!》
ユージ「ダ…ダメ…だ…はぁ、はぁ。ベリーを…ぐっ…こんな所に…どうにかしてみる。ふぅ…ベリーには言うなよ絶対」
というやり取りがあって、《でも》「ダメ」《でーも!》「ダーメ」と攻防を続けたんだよ。
その日は《バカー!》って言いながら帰って、それから3日置きに来ては、同じ事を繰り返しをしている。
飯も出ないしトイレも行けない、風呂も入れない状態で放置されてて、ウルが色々やってくれるから助かってた。
それから半年後くらいに、スパイシー国から使者ってのが来て、俺と会って、「側妃の子は…」と渋られて、
でも俺しかいないし…ってなって、渋々「侯爵に確認してきます」と言って帰って行った。
その2ヶ月後にまた使者が来て、「了承を得ました」ってなって、そこから半月後にカリャール侯爵と、真っ黒い布で顔を隠した怪しさ満点の令嬢?が来て、「では婚約成立という事で」となった。
隷属魔法で、自分の意思じゃないのに身体が動き、サインさせられそうになったんだけど、
ウルが《サイクロン!》と書類やら羽根ペンやらインクを吹っ飛ばしてくれて、サインしなくて済んだ。
俺とウルは((うまくいった))とほくそ笑んだ。
まぁ、勿論ブチギレたカレールー侯爵は、「全くなんて国だ!」とか言って、ドレス着た男を連れて帰って行った。
そう。サイクロンで布がパサっと捲れて、見えた顔はThe男だった。
(女装趣味のある男か?)(オネェさんか?)ってちょっと混乱したなあの時は。
一瞬だけ目が合ったけど、(申し訳ない)って目がいってたんだよな。だから、(無理やり系か)と思った。
その後がまぁ、大変よ。破落戸兵士に離宮地下に連れて行かれ、殴る蹴るの暴行。サンドバッグ状態だった。
で、ボコボコのまま放置され、気付いたら『魔力供給器』になってたわけ。
ユージ「ウルが次に来るのが……いつだ?窓もねぇし、昼夜がわっかんねぇ」
魔力を強制的に奪われながらブツブツと呟いていたら、コツコツと石の上を歩くような音が聞こえた。ガチャッと扉を開けて入って来たのは陰険男だった。
そいつはニタニタしながら魔法陣ギリギリまで近付き、仰々しく、愉悦に浸りながら話し始めた。
陰険男《ヒッヒッヒ。ど~うです?今代の勇者よ。無限に湧き出る魔力!それを自分を陥れた国に奪われ続ける!なんて屈辱的なんでしょう!
しかも相手が実の父親!妬ましいですかぁ?悔しいですよねぇ。殺したいほど憎いですよねぇ!
その感情が私たち悪魔の最高のご馳走なんですよ!さぁさぁ、もっと憎みなさい!怨みなさい!
おやおや、やはり『悪魔』は怖い存在ですよねぇ。分かります!その恐怖もご馳走です!もっと怖がって下さい!》
《《自称》》悪魔の演説を聞きながら感じていたのは、『恐怖』や『怨み』『憎しみ』ではなかった。
ユージが思ってたのは『なんだコイツ面白ぇ』だった。だから、感じてた感情は『楽しい』『面白い』だった。
その後も、「怨みを~」「憎しみを~」とずっと語っていた。監禁されてから初めて楽しいと思える時間だった。
だから、語り終わって「ど~うですか?」って聞いてきたから、「お前、面白いなぁ」と素直な感想を口にした。
ら、《そ~うじゃないんですよぉお!》と言ってまた語り出した。最後は肩で息してたから、「悪魔くんお疲れさん」って労わってあげたら、《ガッテム!》と崩れ落ちた。
四つん這いでブツブツ呟いていたと思ったら、急にピタッと止まり胡座をかきだした。そして頬杖ついて普通に話し掛けてきた。
悪魔くん《で、貴方は誰なんです?》と。
「いや、あんたさっき言ってたやん!」と思わずツッコんだ。
悪魔くん《ああ!今代の勇者でしたね。魔王討伐は行かれました?》
って、なんで普通に喋り掛けてんの、この自称悪魔くん。
この日から、離宮の地下で監禁されてるユージと、《《自称》》悪魔くんの奇妙な関係が始まった。
解放されるまで後少しだ。それまで頑張れユージ。
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