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第17話 まだまだ開店には遠そう?

「リョーヘー、これからどうしよっか?」


「そうだ、店の中をまだ見てないんだった。入ってみよう」ガラっ


真新しいニスの香りが漂う5席の木製カウンター、

4人テーブル席が4つある。

店の中は定食屋という感じではなく、

和風居酒屋といった雰囲気の内装だった。


「わぁ!きれいなお店!木のいいにおい!」


「おぉ!理想的通りの内装だ!皿や調理器具まである…!

信長公が気を利かせてくれたのか。ありがたい…」


ニキちゃんがカウンター席に座った。

「てんちょー!ごはんが食べたいです!」


「お。お客さん一号はニキちゃんかぁ

はいよ!何にしましょう?」


「お肉がいいのだ!」


「はいお肉料理ですね。それでは…」


上機嫌に様々な肉を生成し、魔道コンロで次々肉を焼いていくと

店中に香りが漂った。


「ふわぁ…いいにおいなのだ…」


(調理機材もいい感じだ…。よし、熱した鉄皿に盛りつけて…)


「はい、特製ミートプレートお待ち!」


大きめの鉄皿に牛ロース&フィレのステーキ、

ハンバーグ、チキンステーキ、ポテトのよくばりお肉セットだ!

ライスとスープもセットで!


「ステーキソース、オニオンソース、おろし醤油、塩胡椒

のお好みをかけて食べてね」


「わぁ~~~~!!!すごいのだ!!いただきま~す!!

あちあち…もぐもぐ…。

ん~~~!!おいしいのだ~!!

いろんなお肉とソースが楽しめる!

これ最高なのだ!!」もぐもぐ!


目をキラキラさせて肉を頬張るニキちゃんを眺める。


((まおう食堂の看板娘にピッタリだな良平よ))


(同じことを考えていた。元気で可愛くて

その上腕っきき。理想的な看板娘だな。

おっと、アレを用意するのを忘れてたな)


「ニキちゃん、ステーキにこれを試してみてくれよ」


俺は小皿に少し盛った緑色のペーストを差し出した。


「これなんなのだ?」


「俺はステーキにこれを乗せて食べるのが好きなんだけど

ニキちゃんも試してみてくれるかな?

ワサビっていうんだけど」


「リョーヘが好きな?うん!食べるのだ!」パクぅ


「あっ!ちょっ!?少しだけ乗っけて食べ…」


ピタッ…


ワサビをそのまま口に頬張ったニキちゃんは固まった。


「ニキちゃん…?」


「くあああぁぁぁ!!??

くぁっ…くぁらいのだあああぁぁぁ!!!」バタバタ!!


涙と鼻水を流してのたうち回るニキちゃん!


「は、吐き出して!!ほら!これを飲んで!」


床でバタバタしてるニキちゃんに

チューブのマヨネーズを咥えさせる。

マヨネーズはワサビの辛味を消すのに一番良いのだ。


「ちゅうちゅう…

あっ…からくなくなってきたのだ…ちゅぅ」


赤ちゃんが飲む哺乳瓶のように

マヨネーズを必死に咥えるニキちゃんだった。

ちょっとかわいい。


「ごめんね…注意が遅れて…

少しだけお肉に乗っけて食べて欲しかったんだけど

苦手になっちゃったかな?」


「うう…ちょっとダメかも…

あっ、でもこれと一緒に食べるとおいしいかも…ちゅうちゅう」


(ワサビマヨネーズ…

最初にこっちで出すべきだったな…)


「…体に悪いからあまり飲み過ぎないでね?」


食後、機嫌と口直しにアイスクリームを出した。


(ふう、そうだ店の設備や部屋周りを見ておかねば…)


「ここはトイレ…(ガチャ)ここは倉庫…か。

居住スペースは無そうだな…よし」


逸る気持ちを抑えられない俺は

裏口から外へ出る。


(先ずは定住出来る環境を作らねば…

建築物の生成は初めてだが魔力量は十分なハズだ。

よし、この辺りに…)


住み慣れたマンションの一室を思い浮かべる。


(家具は後回しにして間取りと建築材のイメージだ…よし)

((魔力の澱み…?いかん!良平―――))

「…生成!」シュゥゥゥ…


ぐらっ…


(なんだ…?あれ…地面が迫って…)


((良平!!!))

――――――――――――――…

「リョーヘーごちそうさま!

…?リョーヘー?お外かな?」ガチャっ


店の外には石で造られた立方体の建物があった。


「わわ!?…これってリョーヘーがつくったのかな?

おーい!リョーヘー!リョー…」


「リョーヘー!!!!」


建物の隅には倒れた良平の姿が

――――――――――

((気を失った!?

ヒール!!…何故だ?何故効果が無い…?

今の生成はもしや制約上の…タブーにでも触れたというのか…?))


――――――――――


神界


「…あーしのアホ!!

何で説明しておかなかったのよ…本当に間抜けよ…」


記憶生成はとてつもなく強力なスキルだ。

魔力を消費するだけで記憶上の物体を生み出せてしまう。

そんなチートスキルにも弱点があった。


それは生命を生み出せぬ事。

もう一つが術者の質量を超える物を生成すると

魔力量に関係なく一瞬で魔力が枯渇してしまう事だった。


スキルを与えた女神スペクトラはもちろんこのスキルを使える。

しかし、神界における神は無限の魔力を持つ為

リスクなしで発動が出来たのだ。


故に女神はこのリスクを失念していたのだった。


――――――――――


「リョーヘー…!心臓は…

動いてる…気を失ってるだけ…?

どうしよう…!こんな所にお医者さんなんて居ない…

…はっ!?」


「ギャァァァァ!!!!」シュッ!!!


空から急襲してきたのは

パラドレイクと呼ばれる飛竜の一種だった。


気配に気づいたニキちゃんは良平を抱えて攻撃を躱した。


「パラドレイク…!?こんな時に!早くリョーヘーをお店の中に」


ぶしゃぁぁぁ……


飛竜は口からガスのようなものを吐き出した。


ぐらっ

「まずい!麻痺ガス…少し吸っちゃった…

あたししかリョーヘーを守れないのに…からだが…うごか…」


飛竜の牙が良平に向かおうとしている。


「いやだよ…せっかくリョーヘーと…いっしょに…

こんなの…いやだよ…

せめてあたしがアイツの標的にならなきゃ…」


更にガスが充満し、意識は遠のいた…


(ごめんね…リョーヘー…)







「「オオオオオオオォォォ!!!!」」



森中に咆哮が響き渡る!

充満していたガスはその咆哮にかき消された。



咆哮の主は―――漆黒の



「グォ…!?」ビクッ!



「「雑魚ガ…我ガ友二手ヲ出シタ報イヲ受ケロッ…!!」」


禍々しいその姿を見た飛竜が空へ遁走する!

「「逃ガサン!!消エ失セロ!!!」」カッッッ!!


「!!!!???」ドシャッッ!!


口から放たれた閃光は天空へ一直線に伸び

飛竜を消し裂き雲を貫いた。


「「……ヒール」」


漆黒の手が倒れた二人にかざされた。


((何とか間に合ったな…))


――――――――――

神界


「ヴェルトロ!?ナイスよ!!」

――――――――――


二人の窮地に魔王ヴェルトロは顕現した。

実に千年ぶりの地上だった。


((二度とこの地を踏むつもりは無かったが…

この窮地、黙って見過ごせん))



辺りを見渡し、感覚を研ぎ澄ました。


((…思った以上に危険な所のようだ…

人にとってはだが。

今の内に辺りの敵性生物を減らしておくか…?))


「うーん…」


((マズイ、ニキちゃんが起きてしまう!

気配遮断!肉体透過!))


「あれ…あたし確か…?

はっ、リョーヘー!!…良かったぁ…無事だった…

でも何で…」


((…))


「ひとまずリョーヘーを安全な所に…(ガチャ)

わ、この中お部屋だ!ここでリョーヘーを…」バタン


((…良平はこれを生成した瞬間に…?

これといって変な物では無いようだが…

もしや、良平の質量を超える物体を生成したせいか?

…今ダンジョンに戻る訳にもいかぬし様子を見るか…))




「うぅ…」


12時間後

生成した部屋の中で良平は目覚めた。

傍にはニキちゃんが眠りながらシャツの胸元を掴んでいた。


(ここは俺の住んでた部屋…?

確か俺はこの部屋を生成した後倒れて…)


((気がついたか良平。かれこれ12時間は

眠っておったぞ?気分はどうだ?))


(もの凄い疲労感があるけど何とか…

何があったか教えてくれるか?)


((ウム。お主が倒れた後…))


ヴェルトロからこれまでの説明を受ける。


(なるほど…俺の質量を超えた生成が…か…

とにかく助かったよ。ありがとう…

そういえばトロ、久々の地上なんだよな?

まだここに残ってくれるのか?)


((ここには転移でいつでも来れるが暫くは

気配を消して地上で過ごすつもりだ。何せ千年ぶりだからな))


(そうか。あ、そうだ、ニキちゃんに会っていかないか?)


((うむ…直接会ってはみたいが…やはりオヌシ以外の者と

話せる自信が無い…この姿を見て怖がらせるかもしれぬ…))


(ニキちゃんなら大丈夫だと思うが…いずれ話せるといいな)


((ウム。我は暫く辺りの敵性生物を狩っておこう。

思ってた以上に危険な場所のようだからな。いずれ来る客に怪我をさせる訳にも

いかぬだろう?))


(ありがとう助かるよ。それと久々に直接料理を食べれるな?店の裏に用意しておくよ)


((おお!ならカレーを用意しておいてくれ!もちろん鍋ごとな!))


「むにゃ…?あっ!リョーヘー!気が付いたんだね!」


「ニキちゃん!心配させてごめん!」


~~~~~~~~

店で再び食事を済ませ今後店や周りの環境をどうするか話し合う事にした。


「リョーヘー、やっぱりここ危ないよ…本当にここでお店開くの…?」


「うーん…モンスターの問題はなんとか出来そうだけど

問題は客をどう来させるか…」


「魔王さまに相談する?それにおじさん達にも相談してみよ?」


「そうだ!親父殿!舞い上がってて店の事を話してなかった!

くそ、うっかりしていた…一度屋敷に帰ろう!」


「そうだね!」


店を出て屋敷へ転移を行った。


~~~~~~~~

ウィンチェスター家屋敷


屋敷に帰った俺達は親父殿達に事のあらすじを説明した。


「えぇ…!?そんな場所に店が?魔王様は一体何を考えて…」


「そうなんだ…それでこれから客をあそこにどう呼ぶかを相談したいんだ。

転移という手もあるけど一人一人移送させるのも違う気がするし…」


「フム…そうだ、良平君、ポータルは見たことあるかい?」


「ポータル…あ、冒険者ギルドにあった」


「アレを店の前に置ければ距離の問題は解決できるぞ!…ただ」

「?」

「ポータルは2種類があって、

展開型のポータルは扱える魔法師が発動させないといけない。

それに魔力量も相当必要になるからあまり現実的とは言えない。

そこでもう一つ。設置型のポータルがあるんだけど、

これは地面に術式を刻んだ魔石を埋め込んで展開する方式なんだけど

ポータルに使う魔石は相応の魔力量が無ければ発動出来ないんだ。

それに店を行き来するとなると魔石が2つ必要になるんだ…。」


「…つまり普通の魔物を狩って出た物だと発動しない…?」


「うん、かなり強い魔物から出た魔石ならあるいは…しかし2つ必要になるとなると…」


「おじさん!あたし達この前ホーンドベアーを倒したぞ!

それで丸ごとギルドに預けてあるのだ!」


「ホーンドベアー!?確かにあのクラスの魔物の魔石なら…」


「ポータルの算段が付きそうだ。親父殿に相談して正解だったよ」


「うん、良かったよかった」

「良ちゃん?ポータルが出来たら今度はちゃんと母さん達に報告することっいいわね?」

ルマリア義母さんがほっぺをツンツンしてきた。


「う…ごめんなさい…次は気を付けます…」




次の日に冒険者ギルドに魔石の相談に行こう。































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