04-004-02 俺君剣聖、満一歳冬、打倒ハリネズミ
「へ? あ、うん。わたしお師様が可愛すぎるのでずっとお師様見てた。ルシア何?」
「ライエン様の頭を支えてくれ」
「うん、良いよ?」
「お願い」
「──心配ご無用。任せて」と、アリムルゥネは平たい胸を張った。
◇
「すず……(あれ? 俺様頭がスカッとする。なんだ?)」涼しい? 頭が寂しい? なんだろう。風邪引きENDだろうか)」
頭がメチャクチャ寒かった。ぺたぺた頭を触る俺。
なんだが変。まるで毛がないみたい。そして頭を動かすと枕の繊維と髪がそれぞれ引っ掛かり、ちょっとだけ感じるごわごわ感。
これってつまり、丸坊主?
「まーぼーうー」
気づけばアリムルゥネが俺君のベッドの脇の椅子に座り、なにやら手作業をしているようだ。
「あーお師様、お目覚めですか?」といつもとは違うフラットな笑みを浮かべるアリムルゥネ。手元に集中していたのかもしれない。
その手には長い赤毛を何本も寄り合わせ、三つ編みを作っているように見える。って、その毛ってばもしかして俺君の!? 俺君のだよね!?
「これは腕飾りです。玉や宝石も混ぜて腕飾りにしましょうね! 左手首はその『星々の腕輪』で埋まってますので、今作ってる飾り紐は右手用になります。こちらもルシアに渡して「素早さ」を付与してもらう予定です。ですから後数日待ってください!」
──おおお、ルシアの剃刀攻撃にはそんな秘密が。
俺の髪の毛を素材にして強力なマジックアイテムを作るつもりだったのか。産毛には魔力が宿るとか。民間信仰であり、胡散臭いがアリムルゥネとルシアがそれを実行する辺り、単なる迷信ではないのかもしれない。と、鳴ればあの二人は俺の成長を待って、本当に俺のためを思って俺に仕えてくれているのだと実感できる。俺もかくありたい。俺の意識がまた晴れた。俺君、弟子達の俺への思いにジンと来た。俺様レベルアップ! 祈る気持ちを大切に。ああ、観音様観音様。ありがとうございます──!
俺が暖かい窓際で、日の光に手を伸ばすように、何かを掴むように、一生懸命右手を上げていると──あ」
プス。ブスブスブス!
「ぎゃーーーーーーーーー! は、は(針が、針山の針が刺さったー!)」
どどどどど! 痛えよ、チクチクだ!
「ぎゃー! あー、るー。ありぃが──」俺君涙。
しかし、アリムルゥネは俺を見もしない。
「ええ。お師様、お師様の感謝の台詞、今休んで知るルシアにも伝えておきますね」
──違う! 「針」だ!
「ありー」
「きっとルシアも喜びますって!」
「ぎゃー!(だから違う、『針』だ!)」
やっとアリムルゥネが俺を見る。
「ん? あれ? あ! 針がこんなに! これは大変。直ぐ針を抜きますね、お師様」
と、やっと無数の針を抜いてくれた。
俺は涙を浮かべてアリムルゥネの針抜き作業を見守る。
全ての作業が終わり、アリムルゥネが「痛かったですね」と俺の頭をナデナデするのだった。
だが、その動きは丸坊主の頭にザラッと引っ掛かる。
「でみょ、あたま、まるー」
「ええ、お師様は丸坊主です。気に入りませんか? でも小さい時に毛根を刺激しておくと、次ぎ伸びるときは髪の色がくっきりはっきり見るようになるそうですよ? ですから、ご安心を」
「かー」俺君泣く。おおお、俺君丸坊主!
「そうですね、三月ほど我慢されるか、ルシアに髪を伸ばす魔法を使ってもらうことですよ!」
──ルシアに頼む?
ありえるかッ! また髪で遊ばれるだけだろッ!
と、俺の予感が告げていた。
そんな俺は部屋に入ってくるもう一人の人物を見る。
──満面笑みのルシアだ。
ルシアが真っ直ぐ俺のところにやってくる。
俺はおののく。相手の手に剃刀が無いのを盗み見る。
おでこに一滴汗が伝わった。
──おお。おお、おおお。俺君ピンチ、ピンチなの!?
俺は寝返りでルシアから伸びる手から逃れようと──ぐにょ!?
俺の頬は足を引っ張られてシーツに強く押し付けられ、ホッペがシュワッと擦れる。
「ぎゃー! なにぃをしゅるー!」
「うん、お締めじゃないな」
──俺は脱力した。
すると……だめ、今はダメだ! しかし、その欲求に我慢せよとは至難の──!
──にょ、みょーーー。
あ。漏れた。
今日の俺はどう足掻いても弟子二人の遊び物となる運命からのがれないのかッ!
──トホホ。
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ここで一句。
春やさし お守りの風 神強し (ライエン)




