第49話 宝探し
帆に風を受け魔法でさらに風を受けている船はかなり速く、あっという間に港が見えなくなっていった。そして水平線を眺めているルディールにダッチマン船長が話しかけてきた。
「おう、嬢ちゃん。隕石と言うか、異界の魔神のなんかを探しているんだろ?」
「うむ、というか船長も知っておったか」
「まぁ、あんだけの事件だからな。普通は隠す方が無理だわなと言うか俺の場合、沖に出てたから双眼鏡で見てたからな」
と、ダッチマン船長と話していると、その事を知らないソアレが話しかけてきた。
「…ルディールさん、異界の魔神とは何でしょう?」
「船長、この話は人に教えたら打ち首とかになるのか?」
「ならんだろ。言いふらしたならまだしも、知ってる奴はかなりの数いるからな~」
そう教えて貰ったので、ルディールはかいつまんでソアレに説明し、スナップも分かる範囲でその事を伝えた。
「…そんな事があったんですね。私や上の世代でも学校では隕石が落ちて今の形になったと教えられましたよ」
「まぁ大きな問題がないのならそれでいいと思うがのう。気にしなければ気にならないしのう」
「つっても、アンデッドが沸いてるからな、何かあるのは間違いないと思うがね……っと着いたぞ」
ダッチマン船長がそう言ったのでルディール達は辺りを見渡したが、違いの分からない海の上だった。
「船長ここは?どういう所なんじゃ?」
「ここは、異界の魔神と戦闘があってちょうど消滅した辺りだな、嬢ちゃんが来たがってた所だな」
「海の上なのにどうやって場所が分かるんじゃ?」
ルディールがそう聞くと、船長は笑いながら陸地の目立つ所を二つか三つ見てそこからの距離で見ていると教えてくれた。
「ほーすごいもんじゃな。ここからどうやって探すんじゃ?」
「ああ、ここからは、大昔に大賢者ノイマンが発明したソナーってヤツ使って探すんだ。簡単に言やー、なんだっけな?」
と、船長が悩んで居るとスナップが教えてくれた。
「魔力を音に変えてその音が帰って来たら、また魔力に戻して形や大きさを読み取る物ですわ、生物か無機物かも分かったはずですわ」
と、教えてくれたその顔は少し誇らしげだった。
「わらわがいた国でも似たような物があったのう」
「何かあったら深海でも無い限りは、水よけの腕輪をつけて潜ったら数時間は持つからそこから回収って感じだな」
船長が船員に命令を出しソナーでその付近を調べたが特に変わった物は見つからなかった。
「あるか無いかも分からぬ物を探しておるからのう、そうそう見つかる物ではないか」
「だが、あると思って探さないと見つからないけどな、陸ばっかり目が行きがちだが、海の生物の死骸とかもアンデッドになってたりするから何かあるとは思うんだけどな」
海流や嵐が来て波にもまれるから最後は消滅するとも教えてくれた。
「さてと、どうするかじゃな?」
「嬢ちゃん、水よけの腕輪を貸してやるから一回潜ってみるか?」
船長が提案してきたのでソナーを信用してない訳ではなかったが、一度自分で確かめて見たかったので、ルディールは一度潜ってみる事にした。
「すまぬが、一度潜って見てこようと思う」
「わかった。魔力糸を船に縛って潜れよ。上と下で海流が違うからかなり流されるぞ」
それから魔力糸を船体に結び、さらにシャドーステッチを船体に巻き付け行く準備ができた。
「わたくしも行きますわ」
「…私もいきます」
「ちょいと見に行ってくるだけじゃぞ?」
ルディールはそう言ったが二人は頑なに着いてくると行ったので断る理由も無かったので、三人で潜る事になった。
「スナップとソアレは水よけの腕輪をつけたか?わらわはこの海神の羽衣が似たような効果が付いておるからこのまま行けるはずじゃ」
「わたくしとソアレ様は大丈夫ですわ」
「…ルディールさんが行けるならおーけーです」
「了解したのじゃ、では船長行ってくるぞ」
「おう、海を楽しんでこい。だが海の底はここじゃない何処かに繋がってるって言うからな、二時間だ。二時間経ったらその魔力糸を巻き取って引き上げるからな」
船長のその言葉に了解といい、ルディール達は海に飛び込んだ。
海に入ると空気の泡の様な物がスナップとソアレを包み込んだ。ルディールはそのままだったが、海神の羽衣のおかげで海中や水中でも何かデメリットを貰う事が無く、海中や海上にいる限りは常に魔力が回復し続けるメリットがあり魔力増幅の効果もある。
(ゲーム中じゃとこの羽衣の効果でPTメンバーとは水の中でも普通に会話出来たが、こっちの世界じゃとどうなんじゃ?)
「スナップにソアレよ聞こえておるか?」
二人に声をかけると声が届いた様で、その顔は驚きに満ちていた。
「えっ?聞こえていますが、何故聞こえるんですの?」
「…はい、こちらも聞こえています」
「ふむ、なら問題なさそうじゃな。わらわが普段から着ているこのマントのおかげとしか言えぬのう」
「詳しく聞いた所で理解出来そうも無いですわね、そういう物だと思っておきますわ」
「わらわもそういう物だと思って着ておるからのう」
「…海なのでルディールさんの水着を拝めるかと思いましたが、装備の方が興味深いですね」
「それを見てどうするんじゃ……」
そう話し底へ潜って行こうとしたが、ルディールは空を飛ぶ様に海の中を移動できたが、スナップとソアレは水の抵抗があったためそこまで素早くは移動できなかった。
そこでルディールは二人の了解を得てエアエデンに行った時のように二人をシャドーステッチでミーナに言われた様に無理の無い程度に引っ張って海底まで行った。
海底はそこまで深くは無く。少し海藻等は生えていたが砂地で大きな岩なども全く無く、流れて来たであろう流木が所々にあるぐらいだった。
「なーんかさびしい所じゃのう」
「岩や珊瑚ぐらいあっても良いような気がしますが、昔にエアエデンから見た時の爆心地だと思えばそういう物なのかもしれませんわ」
「…私の魔眼で見ても少し変わった魔力の色になっていますが、もう時間が経ちすぎているのか普通の海と同じようになりつつありますね」
「さてと、この辺りの探索じゃな、わらわの魔法で命綱は作っておくがあまり遠くに行かないように頼むのじゃ」
それからしばらく海の底の探索を続けたが特に目新しい物は無かった。
「う~む、沈んだ小舟や木とかゴミばっかりじゃな」
「…もう少し何かあるかなと思いましたが何もないですね」
その場所から少し及びまた別の場所を探していると、鯨のような大きな魚の骨だけが泳いでいた。
「あれは、あのような感じのモンスターなのか?骨魚みたいな」
「…いえ、魔力が濁っていますからアンデッドですね」
「生きてるって何なのですわ……」
「浄化してやった方がええじゃろな……動きが休み無しの会社員みたいじゃしな」
その言葉に二人は頭に?を浮かべ、ルディールは指輪の力でその骨魚を浄化し消滅させると、光に集まる虫のように周りから他のアンデッド達が泳いできた。
「……あれじゃな。子供の頃に虫取りで夜の森に、明かりを持って入った状況に似ておるな」
「れっ冷静なのは良いことですが、早く浄化してくれる方が助かりますわ」
「…海の中の方が多いですね」
と悠長に話している間に敵意は無かったが、どんどん集まってきたのでルディールはまた指輪でまとめて浄化した。
「…ルディールさんの持ち物は意味不明な物が多いですね」
「本人の能力も大概、意味不明ですわ」
「どっからどう見ても魔法じゃろうに」
と、ルディールが言うと二人に魔法と言うと、何でも解決すると思っていませんかと言われた。
それからしばらく探索をつづけアンデッドを浄化したが何も見つからず、思った以上に時間が経っていたようで船長に引き上げられた。
「おう、おかえり。何かあったか?」
「夢と希望とちょっぴり変なアンデッドがおっただけじゃな」
「また変な事を言っていますわ」
「何も無かったって事か、海も元に戻りつつあるしな。何も無いかもな~」
「少し諦めるには早い気もするが、この辺りには無いような気もするのう」
「ああ、それがいいと思うぞ。この辺りなんかそれこそ百じゃきかないぐらい、皆潜ってるからな」
「よし、ならば後は船長の宝探しに付き合うのじゃ、こちらの宝探しの礼じゃ、わらわはアンデッドを倒すのはきっと役に立つのじゃ」
ルディールがそう言うとスナップもソアレも付き合いますよと言ってくれた。
「そうか?ありがとよ、こっちとしては魔法使いがいた方が心強いしな」
船長はそう言って豪快に笑いルディールの背中をまたバンバンと叩いた。
「船長はどんな宝を探しておるんじゃ?海上都市も探しておると言うておったが」
「ああ、海上都市にあると言われてる幽船の御霊って言うらしいお宝だな」
そう言うと船長は自分のアイテムバッグの中から一冊のそうとう古い本をだしルディールに特定のページを見せてくれた。
「古すぎて読めねーと思うが、海賊達に伝わる手に入れたら、海を手に入れられるお宝ってヤツが海上都市にあるらしいんだ」
「いや、読めるぞ。確かに海上都市にあると書いてあるのじゃ」
「ほー嬢ちゃんも読めるのか、博識だな」
「どのような形をしているかは分かってないんじゃな?」
「そうなんだよな~人の形とかも言われてるし、船とかとも言われてるしな~。海上都市に行って見るしかないんだよな」
ルディールと船長が話しているとソアレが海上都市はおとぎ話なのではと尋ねてきた。
「たしかにおとぎ話なんだが、漁師や他の海賊も数は少ないが目撃例はあるな。俺も二回ほど見てる」
「船長の事じゃから見かけたら向かっておるんじゃろ?」
「ああ、行くんだが途中で消えるんだよな…蜃気楼って訳でも無いんだよな~双眼鏡にも映るし船や港も見えるんだが消えるんだよな」
「狐に包まれた感じじゃな」
「何かモフモフしてそうですわ」
「そうじゃ、もふもふしていつまで経っても実体がつかめないから、包まれた感じなのじゃ」
「間違えた時はちゃんと間違ったと言った方がいいですわ」
おとぎ話の様に幽霊船を追いかけて行くんですかね? とソアレが聞き、船長が俺もそう思って幽霊船探したがそうそう見つかるもんじゃ無いと言った。
「で、目障りな海賊船を沈めて幽霊船にしてやろうと思って、沈めたが沈んだだけだったしな」
「まぁ、そりゃそうじゃろうな。じゃが普通に幽霊船はおるんじゃろ?」
「いるにはいるが、骨の海賊が乗ってて襲ってくるだけだからな。まぁ今向かってる処は、幽霊船の目撃例が多い海域だから運が良ければ見られるかもな」
「それは運が悪いと思いますわ……」
「メイドさんはそういうのが怖いのか?」
「そういう訳の分からないのが苦手なだけですわ」
それからしばらく海上都市の事やアンデッドの事を情報交換して進んでいると目的の海域に入ったようでかなり遠くに二隻の船が並んでおり、それにいち早くルディールが気づいた。
「船長、あそこに船が二隻おるが、どちらかが幽霊船じゃったりせぬか?」
ルディールがそう言ったので船長が双眼鏡を手に取り確認し言った。
「ありゃー、どっかの商船と海賊の船だ。襲われてやがるな」




