第48話 出港
ソアレ達【火食い鳥】がルディールを呼びに来たので、釣り竿をアイテムバッグに直して商会長の所に向かった。
「……ルディールさん釣れましたか?」
「なんとかカバ魚が一匹とイカが一杯じゃな」
「へー、ルディって見た目は貴族っぽいにそういうのするのね。後で一緒にやる?私はなかなか上手いわよ?」
と、カーディフがとても恐ろしい事を口にしたので、スナップが慌てて止めていると商会長がいる目的の場所についた。
その場所は酒場のような所で、イオード商会が貸し切っているようで他に客はおらず商会長と髭の生え左腕がフックのあからさまに海賊のような男が話をしていた。
中に入ると商会長達がこちらに気づいた様で声をかけてきた。
「オントさんお待ちしていましたよ。それと先ほどの嵐は大丈夫でしたか?」
「うむ、魚釣りをしておったが特に何もなかったぞ。そちらは?」
「ええ、オントさんに紹介しようと思ってた海賊さんですよ」
と、商会長が説明しようとすると男が立ち上がり商会長の言葉を遮った。
「イオードの旦那!海賊じゃねーよ!嬢ちゃんも覚えておきな!俺の名はダッチマンだ!超海賊ダッチマンだ!」
その言葉を聞いて商会長は頭を左右に振り、ルディール達は笑っていた。
「……確かに大海賊では無かったのう」
「大海賊はいたからな!俺はそいつらを超えるから超海賊だ!嬢ちゃん名前は?」
「ルディール・ル・オントじゃ、魔法使いじゃな」
「ルディール様、超魔法使いとか言ってませんでしたか?」
スナップがそう言うと、ダッチマンが立ち上がりルディールの背中をバンバンと叩き、似たもの同士仲良くやろーやと言って豪快に笑っていた。
「うむ、まぁもう超魔法使いでええわい」
ルディールも商会長から会わせたい人がいると聞いていたので、そのキャラの濃さに猫をかぶる事を忘れ普段通りに話してしまった。
「それで商会長。会わせたいと言っていたのはダッチマン船長で良いのか?」
「ええ、そうですよ。まだダッチマンさんに聞く事があるので少々お待ちくださいね」
と、言って机の上に大きな海図を開き商会長とダッチマンは話を始めた。
「前に教えて頂いた安全な航路と変わったりしていますか?」
「あーそうだな、時期的なものも有るが大海蛇とか、暴れカツオドリとかのエリアが変わってるな」
そう言って船長は海図に安全なエリアと危険なエリアを細かく書き分けていた。
「そこまで気にする事はないと思うが、幽霊船の目撃エリアも描いとくか?別料金だけどな」
「う~む、できるだけ危険は避けたいのでお願いしますよ」
「さすが商会長だな。じゃあおまけに最近沸いた海賊が出る所も書き込んでおいてやるよ」
その事に商会長はお礼を言い、別の要件を船長に尋ねた。
「ダッチマンさんは、また宝探しに沖に出る予定はありますか?」
「ん?ああ、商会長に金もらったら食料を買い込んでまた海だな。それがどうかしたか?」
そう言うと商会長がルディールの方を見て、魔法使いのオントさんは落ちた隕石を探しているので良かったら乗せて貰えませんか? と言った。
「ほー。また懐かしい物を探してるな。別に構わんが、女子供が乗る船じゃねーぞ?」
「わらわはその様な事は気にせぬが、船長はいいのか?」
「ああ、俺も海上都市を探してるのと、たまに海賊沈めて金稼ぐのが仕事だからな、戦闘に巻き込まれていいならいいぞ」
「では、すまぬが乗せてもらおうかのう。何か持って行く物とかはあるか?」
「特にはねーが……嬢ちゃんと他は誰かいくのか?沖に出てすぐ戻る事もあれば、一ヶ月ぐらい帰ってこない事もあるが、まぁ戻りたくなったら送ってやるか」
そう言って船長は商会長から情報料を受け取り、準備できたら港に来いと言って去って行き、その後でルディールは商会長に質問した。
「海賊なんじゃろ?どこまで信用していいもんなんじゃ?」
「そうですね、本人が海賊が好きなので海賊と名乗っているだけで、海賊では無かったりしますね。宝探しがメインの船乗りと言った所です」
「船に乗せてもらえるだけでもありがたいしのう……先ほどは航路等も聞いておったが、船長はそういうのも詳しいのか?」
「はい、この辺りでは一番詳しいと思います。あの人と知り合うまではイオード商会の商船も何隻か沈んでいますからね、海図に書いて貰った情報と同じく信用していますよ」
商会長に船長の事を聞きこれからの事を話していると、ソアレがルディールに話しかけて来た。
「…ダッチマン船長は、魔法使いから見ても有名な方で精霊に愛されていますから、たぶん大丈夫ですよ」
「ふむ、ソアレや商会長がそこまで言う人物なら特に何も無いじゃろな、わらわから見ても悪人には見えぬしな。ではスナップよ準備して乗り込むのじゃ」
「わかりましたわ」
そう言って商会長とルディールは話を詰め、少し買い物をしてくるといって商会長やソアレ達と別れると、カーディフが商会長に話しかけた。
「商会長さん、護衛の事なんだけど報酬下げて頂いて大丈夫ですので、ソアレを別行動にしていいですか?」
カーディフのその言葉に商会長と、他の火食い鳥のメンバーは驚き彼女を見た。
「それはどうしてでしょうか?」
「ん~説明しにくいんですけど、あの子見てると何処かに行きそうな感じがするんですよね」
そう言うとソアレがカーディフに話しかけた。
「…ルディールさんですか?私はいつもと変わらないと思いましたが?」
「う~ん、じゃあ気のせいかな~。ほんと感覚的なものだから確証があるわけじゃないのよね。で、ソアレはあの子と仲いいでしょ?だから着いて行かそうかと思ってね」
商会長もよく護衛に火食い鳥を雇い、カーディフの勘に助けられた事も数多くあったので、その言葉を信じた所で不利益になる事が無かったので了承した。
「わかりました、シアイスさんの勘には助けられていますし、貴方とヴァンキッシュさんがいれば護衛は大丈夫でしょう。オントさんにいなくなられると困りますので、フォーラスさんもお願いしましたよ」
「…分かりました」
「って、スティレがリーダーなのに勝手に決めちゃったけどごめんね」
「ああ、大丈夫だ。自分が影で空気のスティレと言われているのは知っているからな……」
と、地味に火食い鳥のリーダースティレが落ち込みながら話が決まり、準備をするのにソアレが一度その場から離れた。
少しして、ルディールが買い物から戻って来て地味に落ち込んでいるスティレを見て影で言われている二つ名を聞き、一番重要なポジションと言う意味では無いのか?といい元気にさせた。
「では、ルディール殿が悪口に近いような二つ名をつけるならどの様なのを付けるんだ?」
元気になったスティレに聞かれたので答えたら周りに引かれた。
「あんた……今まで私に言う時は手加減してたのね……」
「聞かれたら答えたのに貶されるとかひどくないか?」
「もの事には限度と言う物がありますわ」
などと話をしていると準備をしていたソアレが戻ってきて、自分も宝探しに着いて行く事を伝えた。
「……ルディールさん、急ですみませんが私も宝探しに着いて行く事になりました」
「ソアレも行くんじゃな、護衛は大丈夫なのか?」
「ええ、灯台の街はそこそこ平和ですし、火食い鳥の皆さんは優秀ですからね。余力があるならお宝探しに行って貰おうかと思いましてね」
「うむ、了解したわい。なにかあったらルディールお姉さんが守ってやろう」
「あんた、この中で一番、小さいでしょうが……」
「うむ!態度は一番でかいぞ?」
「ルディール殿……それは自分で言う事ではないぞ」
「…ルディール姉さん任せました」
などとくだらない話で盛り上がりながらダッチマン船長がいる港に向かった。
港に着くと大きな船が大量にあり、その中で船長の指示でガレオン船の様な船に荷物を積み込む海賊の姿があった。船長はルディール達の姿を見かけると声をかけて来た。
「おう、嬢ちゃん準備は出来たか?」
「準備はバッチリじゃな!でかい船じゃな!かっこよいな!船長、この船はなんと言う名前じゃ?」
「おう、かっこいいだろ?俺の船だからなダッチマンが空を飛ぶって意味で名付けたぞ!」
(という事は、あれか?前の世界でも有名な幽霊船のフライング・ダッチマン号とかそんな感じの名前なのかのう?)
と考えていると船長が名乗りその名を教えてくれた。
「この船は俺の嫁さんだからな!フライング・ダッチワイフ号だ!」
そう叫ぶ船長の言葉に空飛ぶアレを想像させルディールに恐怖させた。
「……想像するだけで恐ろしいのう」
「だろ?俺の嫁さんだからな、他の海賊達からも恐怖の象徴だぞ?」
海賊達の積み込みが終わり、ルディールが一緒にいくスナップとソアレを船長に紹介した。
「船長、悪いがこの魔法使いも一緒にいく事になったからよろしく頼むのじゃ」
「おー、了解。メイドさんとイオードさん所の護衛の奴か」
「…急ですみませんが、ダッチマン船長よろしくお願いします」
「おう気にすんな、全員女好きだが、子供に手を出すような奴は海の藻屑だからな、ゆっくりしていけや」
「海賊と言いますといいイメージが無いように思いますわ」
「まぁ、そうだわな、でも俺は愛も欲しいからな!女を抱くにしても愛がないとつまんねーよ」
そう言いながらルディール達を簡易ではあったが部屋に案内した。
「簡単な作りだが三人ぐらいならゆっくりできるだろ、この部屋を使ってくれ。アイテムバッグがあるなら荷物は持っとけよ、取る奴はこの船にはいねーが、大砲とか直撃したら海に落ちるから、回収できねーぞ」
部屋を案内してもらっていると、手下の海賊が出港準備が出来たといいに来たので、ルディール達は一度デッキに上がり、港にいる商会長とスティレ達に別れを言った。
「オントさん、お土産楽しみにしていますよ!」
「うむ、任せておくのじゃ!」
そして船長が出港の合図をかける。
「よーし!今日は良い日だ!やろー共!帆を張れ!出発だ!」
そのかけ声と共に船員達が帆を張り、風の魔法を唱え張った帆に風を当て、船はゆっくりと沖に向かって進み始め、ルディールは元の世界とはまた違う船に心を躍らせ、見たこともない水平線に思いを馳せた。
次回の更新はたぶん明日です。




