第29話 帳簿を読む
「この帳簿を見てどう思う?」
三代目から新橋へ
「どう思うと言われても……私には数字にしか見えないんで、申し訳ない。四代目は?」
新橋から四代目へ
「俺に投げるなよ、新橋。ん?お義父さん?」
「新橋で構いませんよ。それに四代目にお義父さんと呼ばれる方が気恥ずかしいです。組員からの視線も気になります。そうなると自然と茜への視線も…」
「茜に組員の視線が行くのは迷惑だな。若姐というのか?立場的に仕方ないが、ヤローの視線が茜に向かうのは好ましいことじゃないな」
「同感です」
「おい、新婚さんと親バカはいいとして、川野はどう思う?」
「明らかに表と裏に数字の違いがありますね。どういうことでしょう?詳しいことは俺らよりも姐さんの方がこういう事は得意じゃないかと思います」
「聞いたか?俺はこういう具体的な答えを求めてたんだよ!お前ら二人で茜談義してるんじゃねーよ」
「姐さんを呼んで参ります」
私は朔斗君に呼ばれた。
私が赤川の表帳簿と裏帳簿と対面した。私には茜ちゃんが若姐として同行していた。
「表帳簿は前に想像した通り。三代目が継いだ直後の上納金が突然増えてる。そして、ちょい出し。茜ちゃんわかるかい?この数字なんだけど…。あ~!グラフとか作れると分かりやすいんだけど、今ちょちょいと作るかい?」
私はグラフで説明した。
「この辺りで三代目が襲名。直後に上納金が突然の増額。これは三代目へのアピールって昔はみてた。それで、そのままわりかし高い水準で上納金がここに払われてるんだけど、この不況の中、おかしいと思わないかい?」
「収入は突然増えたりしないですよね。そして、高水準をキープ…」
「そこなんだよ!それを三代目が襲名する以前から赤川が不正に懐に入れていて、襲名後ちょい出ししてきたと考える。さて、その不正とは?で、使うのが今回の帳簿さ。表の帳簿と裏の帳簿の金額を同時にPCでグラフ化した時に差が出るのは……。交際費の支出?収入は?‘その他の収入’の部分が増えてるねぇ」
茜ちゃん曰く、私は悪そうな笑みを浮かべていたらしい。
「三代目、‘その他の収入’について調べておくれよ。これは調べると真っ黒かもしれないよ?」
「そうだな……」
真っ黒……薬を売買して収入を得た可能性が大きい。警察が関与して逮捕・起訴するのは簡単だけれど、それは極道の掟『薬を扱ってはいけない』というものを大きく守っていないことにあたり、極道的には処刑。警察が関与してしまうと法的な裁きになり懲役刑となるだろう。しかも悪いことに赤川くらいになるとスケープゴートを使ったりもするし、金を積んでムショから出てくる可能性もある。
いかに迅速に警察よりも早く証拠を固めるかが勝負となる。
「『交際費の支出』は…やっぱりお得意様というのがいるんだろうね。それも結構な立場の人だ。交際費がかかるような人だからね。その辺でホイホイできないんだよ。まぁ、モノがモノだけど」




