23.聖女ちゃん疲れる
「ナタリー、どうかと思うよ?」
「はい。すみません…」
「どうしたらこんな辺鄙なところへあの3人を連れて来ることになるの?」
「わたしこそ被害者だもの!」
浮かべた涙は幼馴染のアルフには響かず、大きなため息を吐かれてしまう。…何故っ!何故この幼馴染が攻略対象に入らないのか…!!もうちょっとヒロインらしく甘くして!!
「ごめん、ナタリーのお母様に理由はそれとなく聞いて、ナタリーが悪くないのはわかってるんだ。責めてごめんね」
…眉尻を下げて笑うアルフは天使だろうか?
「でも切っ掛けはわたしだから…」
「それはもういいよ。責めてごめん。…ところで、ウチの領地の良いところは案内した?」
「……してません」
「折角王家からの支援に繋がるかもしれないんだから、今からでも案内してこようか?」
「か…帰りたいな。学園に♡」
そんな言葉はその有無を言わさない笑顔に打ち消されてしまった。
*****
「この噴水は名物でして、後ろを向いてコインを投げて、あのお皿の上に乗ると願いが叶うと言われているのですよ〜。是非思い出にどうぞです!」
「そうなのか、一気に投げていい数は何枚だ!?」
「魔力は……使って…いいのか…?」
「魔力はダメだし、投げていいのは一枚だけですっ」
王家のブルジョワ発言に、運とか無視した魔力馬鹿の発言を必死で止めれば、
「成る程。上手く行けば願いが…、トウドくん、僕の分まで試してくれるかい?」
「えぇ!?ブルーノ様のお願いはブルーノ様が叶えて下さい」
「そうか…、なら叶ったらいいなと思って投げるよ」
そう言ってわたしの弟に妙な色気のある笑顔を浮かべるショタっ気に囚われ始めてそうなやつのコインは、投げた途端後ろ手の小石を親指で弾き、そのコインを弾き飛ばす。
「あれぇ?ブルーノ様のコイン、僕のところへ飛んできました」
「ふふ、ならば叶うのかもしれません」
『何がだぁぁぁぁ!!!』
と叫んでその後頭部を蹴り飛ばしたいが、そうも行かずにグッと堪える。しかしなんて運をお持ちなのか!!
「おいニャタリー、コインは金貨でいいのか?」
「小さな町に争いごとの種を蒔かないで下さい…。銅貨で充分です」
「ナタリー……あそこに入ったら…誰が願いを叶えてくれるんだ…?」
「叶うかも〜??みたいな、おまじないみたいなものですわ」
世間知らずの御坊ちゃま達を引き連れて、町の観光名所を案内する。
「おいニャタリー!美味そうだな!買っていいか?」
「あの…屋台に大金貨を出したらお釣りの準備がありませんわ。ごめんなさい、これで…」
そう言って王家の王子様へとお小遣いから串焼きを買い、
「お客さん!凄い腕だけど勘弁してくれぇ〜!!」
いつの間にか的当てをしていた弓の名手がど真ん中ばかり当てて的を真っ二つに割っているのを止め、
「ほら、笑顔で撮りましょう」
いつの間にか映えスポットで我が町に導入されたばかりの最新鋭の写真機でトウドと写真を撮る賢い頭にお花畑が咲き始めてる方に声を掛ける。…ここ!いつかアルフと結婚写真撮りたかったのに先越されてるし!!
「お疲れ様でした。小さな町ですが楽しんでいただけましたか?」
「そうだな。なかなか庶民的で、俺の正体にも気が付かれず楽しかったぞ」
そりゃぁ王子様がこんなところにいらっしゃるなんて夢にも思わない田舎ですから…。そう思いつつゴールはアルフの屋敷に着いたところで、満足気な御三方を見てアルフも微笑み、
「お帰りになられる前に名産物を使った食事でも召し上がってくださいませ。大したものは御座いませんが、少しでもお口に合えば幸いです」
そう言って中へと連れて行ってくれた。
「姉様…お疲れだね」
「トウド……うん、大丈夫!心配してくれてありがとう!」
背中から掛けられた心配そうな声に、まだ幼い弟に余計な心労をかけてはいけないと振り向き笑顔を返せば、何故かそこにはイーサック様。
「あれ?!トウドは?」
「ブルーノが……連れて行った」
「NOW!!」
慌てて中へと入ろうとすれば、その手をぐっと引かれた。
ブクマ評価、感想等、ありがとうございます!




