24.聖女ちゃん避け切る
「ナタリー…もう少し…案内……」
振り向けばイーサック様に手を掴まれて、そのイーサック様の手をアルフが掴んだところだった。
「……なんだ」
「イーサック様、どうぞ中へ!お口に合うか分かりませんが、ナタリーに町を案内されていてはお食事はなさってないのでは?」
「…手を…離せ」
「これは失礼いたしました!!」
アルフは慌てた様子で手を離し深々とお辞儀をすると、こちらを見て、
「フランツ王子はナタリーが屋台で食事を買ってくれたと喜んでいたけれど…君は食べた?」
「あ…いえ、食べてないわ」
首を振ればアルフは仕方ないよねと言うように笑って、
「そうだよね。レディーが外で食べる訳にいかないよね。イーサック様、用事があるのでしたら僕が聞きます。彼女も少し食事させて休ませて上げても宜しいですか?」
「……そうか」
可愛く笑うアルフに頷けば、イーサック様も少し不満気ではあるが頷いてスタスタとみんなのいる食事の場へと入って行くのをホッとして見送る。
「ナタリー、男性と二人になったらダメだよ?」
「もしかして…心配してくれたの?」
「こんな田舎町で誰かに見られてごらんよ。恰好の噂話のネタになるよ。そりゃもう美味しく」
「……たしかにそうね。ごめん」
同じ領主の娘としての噂話の心配だったかと、少し残念に思うが当たり前の様にその手を繋がれて、
「ナタリーこそお疲れ様。彼らを案内してくれてありがとう。僕らもごはんを食べようよ。ナタリーが好きなミートミートポークの肉も準備してあるよ」
そう言って笑うその顔にノックアウトし大きく頷けば、部屋に入るまで手を繋いでくれた。
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「な〜んてことがあったのよ??あれってさ、ヤキモチ?ヤキモチとかそう言うやつなんじゃない??どう思う?クレープ〜ゥ♡」
「う〜ん。見事に手の上で転がされた様に聞こえるのは気のせいかしらぁ?」
無事になんとか寮へと戻って、テヘヘと笑って帰省中の話をすればクレープに笑顔で言葉の太刀を入れられた。
「うぐぅ…」
「あ、ごめん勿論室内に入った時も手は繋いでくれて、これは僕のだよ牽制してたのよね?」
「………扉を開く前にキッパリと離されました」
「…でもまぁ、好感度がゼロなら繋ぐこともないか」
好感度マスターのクレープ様のご意見は胸に刻み、いい思い出にするためには言わなきゃ良かったかもと思いつつ、言わずにはいれなかった実家でのプロローグ。
「でもなんだか聞いてるとイーサック様もそうだし、王子様もあだ名で呼ぶなんて…、ナタリーモテモテなんじゃない?」
「ごめんなさい」
「私に言ってもしょうがなく無い?」
「それにフランツ王子には…」
「失礼いたしますわ!!」
返事より先に部屋の扉がバーーーンと最大限に開くと、そこには取り巻きの皆様、そしてその中央にはシャルティエ様が腕を組み立ってらっしゃる。
「ナタリーさん。少しお聞きしたいのですが、フランツ様が貴方のお屋敷でお休みになられた…と言うのは本当かしら?」
口元にお手を当てて丁寧に言ってくださるが、眼光が鋭くわたしを突き刺す。
「あの…それは…」
ひいいと背筋が伸びてなんと言えば良いのか悩めば、「ふてぶてしいことをしておいてか弱い乙女のつもりかしら?」などと、取り巻きの方々の声が聞こえてくる。
たしかにこのままだと悪役令嬢VSヒロインの姿になってしまうと、胸を張って言葉を返す。
「ごきげんようシャルティエ様。たしかにフランツ王子、そしてブルーノ様、そしてイーサック様は我が家の領土へ来て頂き、戦術や、国防について領主の父と話したりいたしました。シャルティエ様もご承知の通り、我が家の領地は隣国との国境にあり、何度も防衛を…」
そこまで言って、シャルティエ様がお怒りなのかプルプル震えてる様子に気がつく。
「ナタリー…もしかしてだけど、シャルティエ様は貴女の領地の事把握してなかったんじゃない?」
クレープの言葉に、知らない事を突きつけると言うある意味では馬鹿にした様な物言いだと受け取られてしまったのかもしれないと青くなる。
「わ、我が家はですね、西に位置する…」
とりあえず説明しようとするとシャルティエ様は迷い無くスタスタと近付き、手を上げ…
「馬鹿にしないで頂戴!!」
そう言って振り下ろされるのを……身体を後ろに逸らして躱す!!
「…!!またそうやって馬鹿にして!!」
「ち、違います!!わたしの頬が赤ければ、フランツ様にもバレるじゃないですか!!」
「そんな頬が赤い程度で気にして貰えると思っているの!?」
一歩踏み出しまたも打ち付けてくるも、避ける相手に殴る事などないシャルティエ様の掌は遅い…!!
「ですから…!」
「また避けたわね!!」
今度は扇子を出して武器として使われるが、左から流されたそれをしゃがんで躱す。
「ちょっと!喰らいなさいよ!命令よ!!」
「殴るのは構いません!!でも、顔はやめて下さい!」
「ちょっと可愛いからって…!!その可愛い顔を叩いてやりたいのよ!!」
「成る程!褒めいただきありがとうございます!」
ビュンビュンと滅茶苦茶に振られる扇子を交わしていれば、きっと無意識なのだろう。取り巻きさん達から拍手が起きて…我に帰ったのか慌ててやめていた。
「よそ見までして!!」
「シャルティエ様に叩かれた事が分かれば…ほら、おおごとってやつにになるじゃないですか!」
「貴女がっ…黙っていれば…ハァハァ…いい話よ!!」
「噂話は広まります。今日来られた事は寮生達は見てるではないですか!わたし!シャルティエ様が好きなんです!!だから、悪評なんて立って万が一にもフランツ様との婚約が解除されるなんてこと起きてほしくないんです!!!」
だって、いや〜んあは〜んフラグを少しでも立てたくないから!!シャルティエ様には悪女の噂なんて一つも立てて欲しくないのよ!!
振りかぶるシャルティエ様の扇子を2本の指で下から撃ち抜き、天井に当たって落ちて来るのをパシリと掴めば、運動不足のシャルティエ様は、膝に手を置き息切れをしている。
「…お茶、呑みますか?」
「………いた…ハァハァ…だくわ……」
「そしてわたしなんぞに構ってないで、絶対にフランツ王子を手放してはいけませんよ!?押してダメなら引いてみろです!!」
肩ポンして空いた手はガッツポーズして応援すれば、ジトッとした目を向けられて、
「そうね……貴女に構っちゃ行けない気がして来たわ」
シャルティエ様はそう言ってから取り巻きさんが引いてくれたうちの部屋の椅子へと座られました。




