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骸鬼王と、幸福の花嫁たち【第13部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第13部

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第八章 崩れ落ちる虚構④

「あんたら! いつまでも腑抜けてんじゃねえよ!」


 その時、《イーターズ》の新たなリーダーであるカオリが一喝した。

 動揺していた《イーターズ》のメンバーはカオリに注目する。


「《覚醒者(ネクスト)》だろうが我霊(エゴス)だろうが、そんなもんどうでもいいだろうが! 分かってんのはこいつが敵だってことだ! あたしらを皆殺しにしようとする敵なんだよ!」


 そう叫んでから、カオリは機甲脚装(メタルブーツ)を全身に纏った。

 次いで、同じく完全化している圭吾を見やり、


『今だけはあんたらも手を貸してくれるかい!』


『ああ! 分かっている!』圭吾も改めて身構えた。


『茉莉! 虎先生を連れて下がってくれ! フォスターさん! 御影さん!』


 圭吾はエルナたちに目をやった。


『色々と聞きたいことがある。けど今は君たちを味方だと信じていいんだな』


「ええ、もちろんよ」


 エルナが頷く。

 それと同時にエルナが着る制服が、しゅるりと解けて織り直され始める。

 圭吾たちが驚く中、瞬く間にエルナの衣服は戦闘用へと変化した。

 紫色の光沢を持つレオタードに似た装束。臀部には小さな尻尾を持ち、頭部には後天に伸びた金色の小さな二本角の冠を被っている。エルナの戦闘装束である龍鱗の衣(スケイル・ドレス)だ。

 手には龍体へと繋がる棍を持っている。神楽の紫龍だった。


「エ、エルナ……?」茉莉が目を見開いて驚いた顔をする。


「やっぱり、あなたも刀歌と同じ霊能者なの? え? けど、なにその恰好? 刀歌とは違う能力なの? というより流石にエロくない?」


 エルナが纏う龍鱗の衣(スケイル・ドレス)

 龍の鱗を模した鎧のように見えるが、露出が何とも多かった。肩と背中は白い肌が剝きだしであり、胸元や腹部も菱形状に大きく露出している。実に艶めかしい姿だった。同じ世代の少女として、茉莉は反射的に顔を赤くしていた。


「うぐ。やめて。風評被害よ。今なら露出も抑えられるんだけど……」


 一方、エルナも少し頬を染めた。

 力量面でも魂力の総量面でも、今のエルナはかつての頃の比ではない。

 今なら全身を余すことなく龍鱗の衣(スケイル・ドレス)で覆うことも可能なのだが、エルナは神楽の紫龍のクオリティアップにリソースを振っていた。おかげで棍を通じて宙を舞う紫龍は、今まで以上の力強さを放っている。龍体の強度も桁違いだった。要は防御よりも攻撃の強化に全振りしているのである。師としても、またエルナを愛する夫としても、真刃としては出来れば防御側に振って欲しかったのだが、これはこれでエルナの性分なので仕方がない。


 まあ、それはともあれ。


 戦闘スタイルになったのはエルナだけではなかった。

 圭吾の仲間たち、《イーターズ》。一般人である銀城以外の全員が機甲脚装(メタルブーツ)を装着した。しかもおよそ半数が完全化している。


「ハハハハハッ!」


 その時、哄笑が響いた。両腕を広げるジェイの笑い声だ。


「モブどもまでやる気満々だな! いいぜ! 本気で遊ぼうじゃねえか!」


 そう宣言すると、ニタリと嗤った。


「全員招待してやんよ。俺の世界にな」


 直後、エルナたちの背筋に悪寒が奔った。

 世界は一瞬にして変貌した。

 空は曇天。泥と腐臭に満ちた大地には無数の墓標。


「な、なにこれッ!」


 茉莉がギョッとする。圭吾やカオリたちも流石に動揺した。


封宮(メイズ)よ!」


 そんな中、エルナが叫んだ!


「ここはあいつの造り出した世界よ! 気を付けて!」


「ああ。そうさ。ここは俺のホームグラウンドさ」


 ジェイがクツクツと笑う。

 そして、


「行きな。お前ら」


 そう命じると、一斉にゾンビたちが走り出した。

 しかも、橘花を筆頭に元々呼び出されていたゾンビだけではない。泥の中から次々と新手のゾンビが這い出てくる。あまりに悍ましい光景だった。戦う覚悟をしていても、生物の根源的な恐怖が茉莉たちを硬直させた。


「――かなた!」


 対し、エルナが弐妃の名を呼んだ。


「半分お願い! 薙ぎ払って!」


「承知いたしました」


 淡々とした声でかなたが答えた。

 直後、何もなかった空間から、かなたが姿を現す。

 彼女の姿はすでに戦闘用へと変化していた。全身には硬質の黒いラバースーツ。背中からは大きく抱きかかえるかのように楕円を描いた黄金の(レール)が伸びており、そこからは数十本の細い蛇腹剣(ガリアンソード)が並んでいる。黄金のティアラを被るその姿は、まるで赤い茨の外套を纏う女王のようだった。専属従霊である赤蛇と協力して生まれたかなたの戦妃武装(オーバーレイド)だった。


 赤い茨が不協和音を上げて、ゾンビの群れを迎え撃つ!

 同時にエルナも神楽の紫龍を構えていた。


龍鱗(ド・ラ・ゴ・ン)……」


 エルナは紫龍を横に振るう。


散牙(シューター)ッ!」


 そして龍体から無数の龍鱗が弾丸として撃ち出された!

 龍鱗の弾丸は最前列のゾンビに当たっても勢いが全く衰えず、後列まで穿った。まるで徹甲弾の乱射のようだ。かなたの赤い茨もまた、濁流のようにゾンビどもを呑み込んでいく。ゾンビの群れを一気に押し戻した。


「こいつらは倒せない相手じゃない!」


 エルナが圭吾たちに告げる。


「あなたたちは自分の身を守ることを優先して! あの男は私たちが倒す!」


「はン。言ってくれるじゃねえか。お嬢ちゃんよ」


 ジェイが鼻を鳴らした。

 ゾンビどもの大半を一蹴されても、その表情には余裕がある――が、


「……む」


 不意に両腕を左右に向けた。その直後、鋭い音が響く。

 左右から襲撃した蒼火の蹴りと、武宮の拳を受け止めた音だ。


「まだ伏兵がいたか」


 ジェイが不快そうに舌打ちすると、目の前で火の粉が散った。刀歌が熱閃を振りかぶったために散った火の粉だ。蒼火たちの奇襲に合わせて間合いを詰めていたのだ。

 咄嗟にジェイは後方に跳躍して回避するが、前髪のひと房は斬られてしまった。


「……速いな」


 斬られた前髪に触れながら、ジェイは双眸を細めて言う。


「流石は俺の花嫁だ」


「黙れ。誰が貴様の花嫁だ」


 炎刃を薙いで、不快そうに刀歌は返す。


「私はすでに主君の花嫁だ。それこそ身も心もすでにな」


 少女として微かに頬を染めつつもそう告げる。

 一方、ジェイは「うげ」と嫌そうな顔をした。


「マジかよ。茉莉ちゃんだけじゃなくて刀歌ちゃんまで非処女か? 今日はマジでバッドニュースばっかだな。まあ、刀歌ちゃんの方は、引導師ってのは元々そういうもんだし、GETにまごついてた俺のミスでもあるか」


 額に片手を当てて後悔するが、その手をあごに移して、


「済んじまったのは仕方がねえ。刀歌ちゃんにしても茉莉ちゃんにしても、じっくりと寝取らせてもらうさ。いずれにせよ、刀歌ちゃんがここにいたのはラッキーだしな」


 そう呟いて、ニタリと口角を上げた。


「俺もさ。この二カ月半、それなりに備えてたんだぜ。今回の大イベント――三千神楽で刀歌ちゃんと桜華ちゃんをGETするためにさ。この封宮(メイズ)にしてもそうだ」


 そこで一拍おいて、ジェイは告げる。


「さて。早速見せてやんよ。俺の切り札って奴をさ」








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