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骸鬼王と、幸福の花嫁たち【第13部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第13部

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第六章 交渉の行方⑤

「……そうか」


 一方、その頃。

 木崎圭吾は銀城の部屋に訪れていた。

 そして茉莉がエルナたちに話した内容を、ほぼそのまま銀城に告げた。

 パイプ椅子に座った銀城は大きく天を見上げて、


「すまねえ。圭吾」


 まず同じくパイプ椅子に座る圭吾に詫びた。


「結局、お前さんたちを危険にさらすことになるんだな」


「俺たちについては気にしないでくれ。虎先生」


 圭吾は苦笑を浮かべて返した。


「虎先生には返しきれないほどの恩がある。俺たちが今日まで生き続けれたのも虎先生がいたからだ。俺たちには誰一人異論はないさ。ただ……」


 そこで眉根を寄せる圭吾。


「申し訳ないのは御影さんに対してだ。ほぼ無関係だというのに、彼女には最も危険で重要なことを頼むことになってしまう」


 小さく嘆息した。


「いま茉莉が御影さんの説得にいってくれているが、断られても無理強いはしないつもりだ。代わりに俺が奴らに力を示して見せる」


 強く固めて、圭吾は自分の拳を見やる。


「完全化できる俺では説得力が薄いが、それでも同じ条件の奴を圧倒してみれば交渉材料にはなるはずだ。今の俺にならそれが出来ると思っている。それに奴らが相手ならもう一つだけ切り札もあるしな」


「……圭吾?」銀城は片眉を上げた。


「あの切り札も使うのか。まあ、それに関しては俺も効果ありとは考えていたが、それにしてもお前さんらしくもねえ自信だな。お前さんは体を鍛えていても、どちらかというとスポーツマンだ。競い合うことは望んでいても、暴力や相手をねじ伏せるようなことには苦手意識があるように思ってたんだが……」


 そこで、銀城はポンと手を打つ。ニヤリと笑い、


「お前さん、遂に茉莉を抱いたな」


「……うぐっ」


 圭吾は顔を上げて、銀城の顔を見やる。銀城はふっと笑った。


「そいつは守る者が増えた時の男の顔だな。俺にも覚えがある。嫁さんを貰った時。そんで娘が生まれた日だ」


 一拍おいて、あごに手をやる。


「この前の話だと志穂が子供(ガキ)を授かったって感じじゃねえだろ。なら、お前さんにとって大切なもんっていうと、茉莉以外には考えられねえな」


「……確かに俺は茉莉を抱いたよ」圭吾は小さく嘆息した。


「昨夜、志穂と茉莉が部屋に来たんだ。二人とも真剣な顔で。まさか志穂にまで勧められるなんて思ってもなかった」


「ほう。いきなり正妻公認かよ」


 銀城は目を丸くした。それから煙草を一本咥えると火を点けて、


「志穂も大胆だな。だが、言っただろ。今の時代ならあり得ねえ話じゃねえって。むしろ女たちの方が野郎どもよりも遥かに柔軟で危機には敏感なんだろうな」


 ふうっと紫煙を吹かす。


「ともあれ、お前さんも覚悟を決めたってことだな」


「……ああ」圭吾は強く頷く。


「改めて思ったよ。茉莉も俺にとってこんなにも大切だったんだって。あいつの泣き出しそうな顔を見た時、気付けば抱きしめていたよ」


 改めて拳を強く固める。


「茉莉も志穂も俺の嫁さんだ。俺には守るべき人たちがいる。もう誰にも負けない」


「その意気だ。圭吾」


 銀城は優しい眼差しを向けた。


「ただ願わくは、そこにもう一人加えてくれ。寧子もお前さんの嫁にしてくれや」


「……いや。虎先生。それは……」


 困惑する圭吾に、銀城は双眸を細めた。


「お前さんは俺の知る中では一番誠実で頼りになるからな。寧子を託したい。あの子にすでに想いを寄せる野郎がいるんなら、少し話は変わってくるが……」


 そこで煙草の火を灰皿に擦りつけて消す。


「ただ、あの子はきっと傷ついている。心身ともに深くな。あの子を支えてその傷を癒してやって欲しい。そのためにも――」


 銀城は両膝に手を置き、深々と圭吾に頭を下げた。


「どうか力を貸してくれ。圭吾」



       ◆



 翌日。

 とある改造されたマンション。

 そこに一人の男が大の字になって眠っていた。

 顔も含めて、無数の入れ墨(タトゥー)を上半身に入れた筋骨隆々の巨漢だ。名前をガラと言った。本名は久しく名乗っていないため、誰もが彼をそう呼んだ。

 裸でキングベッドの上で眠るガラの隣には、一人の女性の姿もあった。


 同じく裸体であり、右肩にはライオンの入れ墨(タトゥー)を刻まれている。

 ガラは、特にお気に入りの女には自身の手で入れ墨(タトゥー)を刻んでいた。

 これは言ってみればマーキングだ。肩の入れ墨(タトゥー)を見せればガラの女ということ。流石にボスの女に手を出す野郎は《イーターズ》にもいない。


 なお、いまガラの隣で眠る彼女は、もと警察官であった女性ではない。

 直近の戦利品ではあったが、彼女にはもう飽きてしまっていた。ガラ好みの気丈な女に見えたのだが、あっさりと心が折れた彼女には、結局、入れ墨(タトゥー)を入れることもなく、部下たちにくれてやった。ガラとしては少しがっかりとしたものだ。


 情欲以上に、相手の心を喰らう。

 それが、ガラという男の歪んだ欲望だった。


 その時だった。


『……ボス』


 部屋の扉の奥から声が掛けられる。

 その声に目を覚ましたのは女性の方だった。美女ではあるが、どこか女獅子を思わせる大柄な女性だ。彼女は前髪をかき上げて、ゆっくりと体を起こす。


『報告があるっす。ボス』


 続けて、そんな声が聞こえてくるが、ガラが起きる様子はない。


「……ガラ……」


 女性は面倒そうな声で、ガラに声を掛ける。


「あんたの部下が来てるよ。とっと起きな」


「……あン?」


 ガラが不機嫌そうに声を上げて上半身を起こした。


「誰だ? つうかもう朝か?」


 ふわあっと大きな欠伸をする。それからドアの方を見やり、


「入って来い」


『うす』声はそう答えて、ドアを開けた。


「ボス。結構面白い報告があるんすよ」


 そう告げて入ってきたのは側近の一人だ。その手には手紙が握られている。


「何だそれは? 手紙なんぞ珍しいな」


「実はこれ、もっと珍しいもんが持って来たんすよ」


 一拍おいて、側近は興奮気味な声で告げる。


「持ってきたのはドローンすよ! ドローン! 久しぶりに見たっすよ!」


「はあ? マジか!」


 流石にガラも驚きで完全に目を覚ました。同じく驚いた顔をする女性を置いてけぼりにして側近の元に駆け寄ると、


「おい。そいつを見せてみろ」


 そう言って、側近から手紙を取り上げた。

 そして目を通して数秒後、


「……へえ」


 ガラは不敵に笑い、


「こいつは驚いた。なかなかに魅力的なお誘いじゃねえか」


 そう呟くのであった。






読者の皆さま。いつも読んでいただき、ありがとうございます!

すみません。一つ宣伝をさせていただきたく!

新作を投稿しました!


『マイホーム・ザ・アトラス ~新婚旅行は快適無双なキャンピングロボで~』

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異世界転移でも異世界転生でもなく、ハイファンタジーに分類されると思います。

第1話だけでも読んで頂けると嬉しいです!


ほぼサブタイトル通り、新婚夫婦がキャンピングロボで自然豊かな世界をのんびり旅行をする物語です。なお、キャンピングロボは快適と撲殺を得意としております。


よろしければ本作ともども応援していただけると大変嬉しく思います!

何卒、よろしくお願いいたします!m(__)m

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