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dog fight (空戦)

 ドッグファイトでは、先に高度を取った方が有利になる。

レーダーが発達していない時代、先に敵機を発見したほうが、有利である。

 既にF4Fは高度を取っている、上昇中で頭を抑えられれば、高度がない以上降下による離脱は不可能だ。

新谷は失速しないように右手で操縦桿を引き、左手でスロットルを操作した.

案の定、F4Fは上昇中の新谷の頭を抑えにるように頭上で旋回し始めた。

新谷は上昇をやめて水平飛行で加速してF4Fを振り切りった。

翼面荷重(翼の面積を機体重量で割ったもの)が小さい零戦は、上昇速度が速く旋回性能がよかった。

新谷は素早く上昇に転じてF4Fより高度をとった。

負けじと上昇してきたが、新谷もさらに高度をとった。

6千以上になるとさすがにお互い、過給機がないため馬力が落ちてきた。

新谷は上昇をやめて、F4Fの向かって旋回した。

相手は、ダイブでされを交わした。

ダイブアンドズーム、グラマン製鉄所と呼ばれていた会社が作った戦闘機だ、アメリカナイズされていて量産とパイロットを守ることが目的だ。

一方零戦は、ダイブスピードには制限がある。

徹底的な軽量化により、航続距離と運動性能を得たが、急降下速度は650kwh以下で運用されており、急降下後の引き起こしに機体が持たなかった。

それゆえに、F4Fの後続のF6Fの900kwhを超えるダイブについて行けずに、ダイブアンドズーム戦法により、防弾装置が皆無の零戦は、燃料タンクを撃ち抜かれて爆発するか、操縦席に被弾してバイロットが死ぬかで撃墜された。

熟練バイロットの損失としては、米軍の方が多く、2万人以上のパイロットを第二次大戦では失っている。だからこそ、パイロットの生存率を優先した機体の開発を進めて、F6Fを登場させた。

初期の構造からマイナーチェンジしかできなかった零戦は、力量が同じ米軍パイロットに撃墜された。

機体の性能を十二分に引き出して戦った日本人パイロットの力量を機体性能で補った米軍パイロットの勝ちである。

新谷はフットバーを蹴ってラダーを動かして旋回した。

相手も続けて旋回した。

機体が軽い零戦は相手より内側を回り、速度を緩めて相手の尻についた。

新谷は無意識に、左手のスロットルレバーについている機銃発射のレバーを握ろうとしていた。

だがそこにはレバーはなかった。

7.7mm機銃を発射して頭を押さえて、照準器目いっぱいで20mm機関砲の炸裂弾で止めをさす。

紫電改ならば、4門の20mm機関砲が火を噴く。

F6Fでも炸裂弾ならば翼は吹っ飛ぶ。

新谷は、フ―と息を吐いた。

喉がカラカラになっていた。

すると、再びF4Fは急降下での離脱を試みようとしていた。

すかさず新谷は、急降下してF4Fの前方で宙返りをして急降下をやめさせた。

F4Fは急降下から機首を上げた。

新谷は、F4Fに並走して飛び、翼で相手の翼を叩いた。

F4Fのパイロットは、キャノピーを開けて、手を振った。

新谷もキャノピーを開けて手を振った。

無線のレシバーから雑音の交じった声が聞こえてきた。


 「You're excellent zero fighter(あんたは、本物ゼロ戦乗りだ)」


新谷も


 「you too」


と返した。


「Let's delight an audience together.(一緒に観客を楽しませないか)」


とF4Fのパイロットがいった。


 「all right」

といって新谷は、操縦桿を引いた。


2機は並んで上昇して同時に旋回した。

水平飛行して、右に左に旋回したり、背面飛行をしたりもした。


その様子を見ていた地上の観客は大きく手を振っていた。


今度は2機で急降下して、地上近くで急上昇して上空で旋回した。


新谷は思い出していた。

戦闘の帰りに、竹部とこんなことを繰り返して訓練していたことを。

背面飛行は、低空で急上昇してくる敵機を警戒するためのものだ。

ひねりこみや、巴戦などの練習で旋回も必要だ。

旋回でも3Gくらいはかかっているので、首を鍛えねのも必要だった。

そのすべてを、竹部から新谷は教えられた。

Gによる貧血にを防止するために戦闘中も下半身を強く縛ることも教えてくれた。

F4Fと並走しながら、不思議な気分だった。

落とすか落とされるかの緊張の中、相手のことを考えこともなかった。

こっちは、7.7mmでも一発食らえば火が付く機体だ。

相手は、7.7mmを100発以上食らっても落ちない。

戦艦と駆逐艦の戦いみたいなものだ。

新谷は、すがすがしい気持ちで飛んだいるの感じた。

農場で農薬をまくために飛んでいる時よりも、この機体で空を飛べたことに感謝していた。

この機体は、戦うことでもなくこうして、楽しんで飛ぶことのできる機体なのだと感じた。

目の前の7.7mm機銃取り外された左右のコンソールと、スロットルレバーについていた機銃発射のスイッチが無くなっているこの機体は、戦うこと運命づけられて性能以上に期待されたものだが、本当は飛ぶことを楽しめる機体でもあったのだと感じた。


 空を眺めていたRechardは、Charlotteの方に手を置いた。


 「新谷は、死線をくぐってきた男だ。そしてカミカゼに出撃した」

Rechardの言葉にCharlotteは驚いた顔でRechardの顔を見つめて


 「カミカゼ なぜ」


 「それが、俺たちの戦争だから、空に上がれば落とすか落とされるかだから。出撃すれば敵であれ味方であれ誰かが死ぬ。そした、戦いの中で、必ず死ぬ作戦のカミカゼは特別だ」


 「どうして?」

とCharlotteはRechardのカミカゼに疑問を呈した。


 「戦争は、経済の問題だ。つまりは、損か得かで始まって終わる。だが、日本人は損か得かで考えない、生きるか死ぬかだけを考える。如何にして生きるかではなく、如何にして死ぬかを考える。だが、新谷は、前者を選んだ。如何に生きるかだ。きっと苦しかったと思う。自分が生きるために相手を殺す。矛盾だが、それが戦争だと思う。」


 「それならば、なぜ話して分からなかったの。そうすれば誰も死なない。Jimmyも死なずに済んだ。とてもやさしくて、飼っていた犬が死んだときなんか一晩中その犬を抱きしめて大泣きしていた人が、人殺しなんかできるはずないのよ」


Charlotteはいつしか涙ぐんでいた。


 「人は知らないものを恐れる。知らないということは恐怖を生む。その恐怖は生きるということを優先させる。だから恐怖は敵で排除しなければならないいう心理が働く。自分と違うもの異質なものへの恐怖が人の心を支配する。だが、新谷は違っていた。俺を助けてくれた。理解しようとしてくれた。あの狂気の中で新谷は人間らしい行動をしてくれた。きっと、新谷のなかの何かがそうさせているんた゜と思う。Charlotteの思い人のJimmyもきっとそういう男だったんだろう。だから新谷が気になるんだろう」


Rechardの言葉に、Charlotteは、うなだれた。

Charlotteの脳裏には、Jimmyと過ごした日々が映画のスクリーンのように映し出されていた。

出会った頃、初めてのデート。

初めての口づけ。

初めての朝。

愛しい人の残り香。

"必ず帰る"と笑って敬礼した姿。

"結婚しよう"と言ってくれた。

"子供は3人で、女の子と男の子が二人"だと

"除隊したら大学に行っていい会社に就職して楽をさせる"と

"ヨーロッパに行くから"とロンソンのライターをくれたこと

そして、戦争が終わっても帰ってこなかっさたことを

CharlotteはJimmyを心から愛していたこと

すべてを思い出して、空を見上げた。


そこには、かつて死闘を繰り返した2機戦闘機が、そんなことすらなかったように小鳥が戯れるように飛んでいた。

もう何年も前のことなのに、Jimmyの死を引きずり、思い出の中で生きようとしていたことにCharlotteは気づき始めていた気づいた。

新谷と過ごした時間が、Jimmyと過ごした時間と融合していた。

ささやかだけれども、誠実な思いと新谷の相手を理解しようとする気持ちに包まれていたことを。

それは、恋愛感情ではなく、人間としての至極当たり前のこと。

Rechardの対するものと同じ態度で、新谷がCharlotteに接してくれていたと気づいた。


"人は知らないものに恐怖を抱く"


だったら、知ろうとすれば、知ろうと努力すれば人は分かり合えると


エンジン音が近くなってきた。

Charlotteが見上げると、F4Fと零戦が並んで着陸してきた。


Charlotteは、着陸してプロペラが止まり、多くの観客がそれらの機体に集まる中。

新谷の乗る零戦に向けて駆けだしていた。


その後ろ姿をRechardは見届けると踵を返すとひとり会場を後にした。


それが、Rechardと会った最後になった。


この小説はフィクションの前提で書いています。アメリカに置いて航空ショーはあったらしいですが、零戦が民間に払い出された記録はあっても実際に飛んだがどうかの記録はありません。

現在アメリカには、オリジナルエンジンで飛べる52型があるそうです。

そのほかはエンジンが換装されたものもあるようです。

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