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It's last first.  作者: 池端 竜之介
2/29

radioactive cloud

 エナーシャルが回されて、誉がくずりながら、排気管から黒煙を出した。 電探により、沖縄方面からのB29の大編隊との連絡があり、343空では、B29の邀撃に入った。


 新谷は、操縦桿を握りしめながら、日々減っていく機体と搭乗員を目の当たりにして、いつか自分も落とされると感じていた。

"敵に撃った弾はいずれ自分に返ってくる"とわかっていた。

一度は、特攻で死にはぐった身だ、未練はなかった。

ただ、竹部さんが命を懸けて助けてくれた命を無駄にしたくはなかった。

B29の邀撃は、一筋縄ではいかない。

いくら、紫電改が20mmを4門積んでいたとしても、初速が遅く地球の重力には逆らないので、接近しなければ命中はない。

また、B29は、爆弾装を開くまで、高高度10,000以上いる。

今の紫電改で、やっと昇ることができる限界高度だ。

しかし、それも取り扱い通りならの話だ。

酸素ボンベも3分も持たないものだ。

10,000以上昇るには、相当の距離がいるし、電熱服も役に立たないほどの寒さだ。

当然、ガソリンでさえあまりの空気の薄さに点火しない、点火用の酸素ボンベが必要だ。

新聞で、落とした米軍兵が軽装(肌着)だったので、、困窮していると書き立てていたが、米軍は高度10,000以上でも与圧して、暖房があるからだと、先般北九州に墜落した機体を見たときに分かった。


 新谷は、7,000までぎりぎりボンベを使用せずに上った。

誉発動機が、カウルの中で光っていた。


熊本上空で、B29の編隊を補足した。


味方機が、20mmの試射をした後に、上空より一斉にB29に降下した。


新谷は、照準器一杯に入るのまで、機銃の握り手に手を懸けたままでいたいた。


 新谷の前方に、曳光弾の黄色光が飛んだ。

慌てて、後方を見ると見慣れない機影が、後ろから銃撃していた。

新谷は操縦桿を倒して、ダイブに入った。

この機体は、零戦と違って、ダイブでもフラッターを起こしにくくなっていた。

しかし、相手の機体もダイブして、距離をつめて、銃撃してきた。

機体の側面を弾がかなり擦っていた。

相手の機体は、武装が多そうだった。

その証拠に、かなり曳光弾と徹甲弾が機体の横を通っていた。

新谷は、やられると思った。

このまま、高度を下げ続ければ、機体も持たない、既に500km/h以上の降下速度だ。

かといって、機種を上げれば、操縦席を狙い撃ちにされる。


その時だった、後方からの銃弾が止んだ。

間を入れずに操縦桿を一杯に引き、スロットルレバーも引いた。

自動空戦フラップが小刻みにフラップを動かして、頂点で下を見ると別の僚機が相手を敵機を追いかけていた。

新谷は、僚機が追いかけまわしている機体の横から銃撃した。

機体は、20mmの炸裂弾で翼が吹っ飛んで、有明海に落ちて言った。


2,000まで降下している以上、B29の追撃は不可能だった。

それでも、新谷は高度を上げた。

低空でのスピードなら、この紫電改にも利はあった。

F6Fとも、コルセアともまだ十分にやれるだけの機体性能はあった。

さらに、邀撃戦のため、比島や台湾と違い落されても、自国内だ。

八幡や小倉を爆撃されれば、日本の3割近くを生産する八幡製鉄が目標であることは、間違いない。


新谷の前方に、多数のB29の機影が見えた。

しかし、その方向に高射砲の弾幕が見えた。

八幡には、B29の高高度にも対応できる三式十二糎高射砲が装備されているため、高射砲との連携訓練を受けていない343空は、誤射される可能性があった。


止む無く、新谷は反転して、基地のある大村へ帰還した。


この日、稼働可能な24機が出撃したが、その半数近くの10機が未帰還となり、殆どの機が被弾または、機体の不具合となった、


次の日、蝉が泣き続けていた空に、新谷は radioactive cloud (キノコ雲)を見たのだった。





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