Encounter of destiny
新谷は、淡々と日々を生きていた。
巷では、東京裁判が始まり、A級戦犯(平和に対する罪)とBC級(戦争犯罪.人道に対する罪)が収監され続けていた。下士官であった新谷もいつか収監されるのではないかという思いもあった。
"敵に向かって撃った弾はいつか自分に返ってくる"という思いだった。
国際法上 国家の戦闘行為は、合法であるされていたが、"平和に対する罪"という罪状で裁判が始められていた。A級戦犯で28名が起訴されて7名が死刑となった。BC級においては、約5,700人が起訴されて1,000人以上が死刑になったと言われていた。
町には、戦勝国の軍人があふれていた。
新谷は、ふと思い出すことがあった、白菊にのって暗い海上を飛んで行った少年たちの姿を、彼らの犠牲の上に成り立ったこの国の現状が正しいのかどうか。
新谷達が生死をかけた空は今もかわらない。
授業を終えて、下宿への帰り道、新谷の横をジープが猛スピードで砂ぼこりをあげて通り過ぎた。
陽気な米兵が3人乗っていた。
数十m先でいきなり止まると、米兵の一人が新谷の先を歩いていた女子生徒を追いかけだした、新谷は走り出した。
「stop」
と新谷は大声で叫んだ。
米兵は、生徒を抱えてジープに乗せようとしていた。
「What do you do?(何をするんだ)」
米兵は笑いながら
「 Get out of my way.(邪魔をするな)」
新谷はその男に近づくと
「Free my student(生徒を放せ)」
といった。
米兵は笑いながら
「Piss off!(消え失せろ)」
といって、拳銃を抜いた。
新谷はやや力を抜いて腰を低くして相手の腰からしたにタックルをした。
不意をつかれた米兵は生徒を抱えたまま後ろに倒れた。
新谷は、素早く生徒を抱きを起こすと
「早く逃げなさい」
と恐怖で足がすくんでいる生徒を叱咤した。
それと同時に、米兵が放り出した拳銃を拾あげると、起き上がった米兵の腕をねじ上げてこめかみに銃口を突き付けて
「Freeze(動くな)、 I shoot him if your works(動けば撃つ)」
他の二人から狼狽が見られた。
もつろん、銃口を突き付けられている本人は、ガタガタと震えていた。
新谷は、服装と年齢から新兵か戦闘経験の浅い米兵だと察した。
毎日どこかで、占領軍がらみの事件はあり、特に性犯罪は多かった。
国が、新聞に公設の慰安所の人員の募集をしたくらいだ。
やじ馬が集まってきて新谷達を取り囲んでいた。
「HEY Araya First lieutenant(新谷中尉)」
という声がした。人ごみのなかから、礼装に身を包んだ米兵が出てきた。
「Did you forget me?(私を忘れたかな)」
といってニッコリすると、ジープに乗っている米兵に対して
「Do you want to be court-martialed?(軍法会議にかけるぞ)」
と脅していた。
新谷は、締め上げていた男の手を離すと、拳銃の弾倉から弾を抜いて本体をスライドさせて弾を抜くと米兵に返した。
階級を見れば、上官とわかるのか米兵たちは、ジープに乗って去っていった。
周りで、歓声があがり人々が新谷を取り囲んだ。
先ほどの米兵が新谷に近づいてきて
「At last I was able to encounter my savior(やっと会えましたね、私の命の恩人)」
といって、いきなり新谷を抱擁した。
「Rechard?」
と新谷はかつて尋問した捕虜の名前を口にした。
「Yes」
と強くRechardは抱擁した。
「I was able to survive that war on the coattails of you. Thank you!(私は、あなたのお陰で戦争を生き抜くことができた。ありがとう) was looking for you all the time. Thanks want to say to you (あなたにお礼が言いたくてずっと探していた)」
新谷は、自分がかつて撃墜して、助けた人に救われることになるという不思議な縁に戸惑っていた。
もう何人ものパイロットを撃墜したのに、そのバイロットから救われたことが信じられなかった。
「Anyway, let's toast to celebrate the reopening(とにかく再開を祝う)」
Rechardは、そういって新谷と肩を組みながら歩き出した。




