ぼっちは、助けた結果を見る。②
そろそろ朝練の部活の奴らが、早めにクラスに来る頃合いになった。
俺たちの出番はなかったのかとはなったが、それはそれでいい。二人だけの時間だったのは必然だろうと納得しかけた時、アニメ声がポツリと氷室に話し掛ける。
「ねぇ、助けてくれた中に、大和と澪の他に誰かいた?」
「うん。いたよ。彼がいなかったらきっとバグに皆やられていたわ。…呼ぶ?」
「えっ? ここにいるの?」
氷室は少しだけ苦笑したあと、全てを話す。
「私も少し怖かったから、隠れて見ていて欲しいって頼んだのよ」
「そうだったんだ…。どんな人なのか、私も知っておきたい」
なんだろう。自然な流れではあるが、いざ、姿を表すとなると躊躇する。
大和の方に視線を送ると、頷きを返される。
少し重い足取りで、大和と一緒に教室に入る。手に掛けた扉が緊張で普段よりも重く感じる。
俺の姿を見たアニメ声は、整った大きな目を更に大きくした。
何かを言われるのではないかと少し身構えるが、まずはアニメ声は一つ頷く。
「朧げだけど、そいつがいたのは覚えてる」
「そう。最近、覚醒したみたいよ。……おそらくは大和よりも強いわ」
「え? 大和より?」
意外そうに俺の方を見た。言わんとしている事はわかる。平凡な見た目のヤツが、規格外の大きな力があると言われれば、そういう目にはなる。
「変な物を見る目で見るな、俺は知らん」何かを言われる前に先に釘を刺す。
「彼は特別みたい」氷室も表現を変えてフォローする。
「そうなんだ……。あんたなんかに頼んだわけじゃないけど…、ありがと」
涙の後を雑に拭いながらアニメ声は目を背け、そう告げた。やはり、最初に話した時の第一印象がよろしくなかったようだ。だが、俺にも言い分はある。
「お前って…お礼とか言えるんだな」
本当に驚いたから、口から溢れてしまった。
「あんた失礼でしょ」
アニメ声も半眼で、俺の事を睨めつける。
「お前ほどじゃないと思うけどな」何だかんだで先に失礼なのはコイツだと思ったので、言い返す。
「……何よ」
「…なにも」鼻で笑う仕草は、敢えて付ける。
「…マジで、ムカつく」
「あっそ」
「そういう所よ」
「こういう所は俺の長所だと思っているからな」
「減らず口、バカ、あほ」
幼稚な罵倒が飛んでくるが、俺の勝ちでいいだろう。
「…あなた達って仲いいのね」氷室は泣き笑いのような顔で、ポツリとそう言った。
「可能性はゼロじゃないが、俺は遠慮する」
「謙虚なふりだけしてんじゃないわよ。虫酸が走るわ」
「言い過ぎだろうが…オブラートって知らないのか?」
「アンタの言い方がオブラートってなら、捻くれ過ぎでしょ」
「俺は自然体なだけだ」
「それが捻くれてるって言ってんの」
「ふふ、やっぱり仲いいのね」氷室は完全に笑いながら、目尻に涙を溜めている。
笑顔を見せた事に、少しだけやはり安堵を覚える。知っている奴が泣いているのは精神衛生上よろしくない。多少の道化のようであっても良かったと思った。




