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ぼっちは、たまに助けを求められる③

「大丈夫か?」

 大和が俺を覗(のぞ)き込みながら、様子を伺ってきた。

「大丈夫だ。走り回って少し疲れただけだ」

 荒かった息が整ってきたので、座ったままだが体勢を起こす。

 周りを見回すと、倒れている氷室に目が行く。目線で大和に状態を問う。

「大丈夫そうだ。気を失っているだけだ」

 この夜の時間に受けたダメージは、怪物を倒すとある程度までは回復するらしい。そんな事がありえるのかと思ったが、実際に大和は、車との接触事故並にぶっ飛ばされたのに、翌日には学校に来ていた。

 よくはわからんが、ここでの闘いは精神世界とリンクしているらしい。説明が面倒臭そうだったので、俺の着ていた上着を畳んで、意識を失っている氷室の頭に敷きながら話を聞いていた。

 無理やりに起こすのは気が引けたので、氷室が起きるのを待つかとはなった。

「なぁ、いいか?」聞きたい事があったので、この待ち時間に大和に話し掛ける。

「ああ、あの怪物の事が知りたいんだろ?」

 大和はわかっているという風で、そう応える。

「いや? 別にいい」

「は?」

 意外な答えのようで大和は呆気にとられる。だが、何でもかんでも正義に理解が深いとは思わないことだ。というより正義に絶対もないしな。

「俺が知ってどうするんだよ。倒したならそれでいいんだろ?」

 俺がここでの戦いに対してアレコレを考えることはない。結果も結論もこれに尽きる。これ以上に何を求められることがあるんだろうかと、逆に疑問でもある。

「そうだが、そうなんだがな」何か言いたそうな感じで、大和は勝手に説明し始めたから無視しておく。

「あっ、あの赤く光っているヤツ、飛んでいったけどいいのか?」

「…あの怪物はハイエンド級と呼ばれていて…、聞いてねぇな。まぁいい。そうか、ソウルが綾音に戻ったのならそれでいい」

「綾音とか、ソウルが戻ったってのはどういうことだ?」

「それは…。気になるのか?」

「人に害がある可能性があるなら、それは知っておきたい」

 俺の影響で何かあってからでは、この状況では後悔もできない。

「わかった。まずは知らないだろうから教える。俺たちがもし、バグに負けた時どうなると思う?」

「まさか…世界が滅…」

「なんで、そこまで極端なんだよ…。そこまでの事にはならない。ただ、もし負けた時はさっき見た赤い光“ソウル”を奪われる。そうなると俺達はこの夜の時間に戦っていた記憶を失って戦う力も失う。」

「じゃあ、さっきのヤツって誰かの力の塊みたいな物だったわけか?」

「そうだ。明日辺りに話掛けてくるかもな」

「誰が?」

「響 綾音だよ。クラスメイトだろ?」

 たっぷり五秒使い、思い出せないとなりかけてから、ギリギリで思い出す。

「アニメ声か…」

今日、揉めた時に絡まれた氷室の友達か…。

氷室と大和は戦いを忘れたアニメ声に対して、どう接してきたのだろうか。少し見方は変わるが、記憶を亡くした事を気づかない友人と、その事を隠しながら普通に接する事はできるものだろうか。

「んで、もし誰も倒さなくなって、あの怪物が増え続けたらどうなるんだ?」

「学級崩壊って知っているか?」

「ここは私立の進学校だ。そんな事ありえる訳ない」

「じゃあ、なんでここ数年でこの学校の偏差値は下がっていると思う?」

「それは…」

 現状の学校の状況を上げていけば、それなりに原因だとはいえる。だが、それはこの不思議空間を前にしては無意味な事でしかない。

「この夜の時間に三年がいないだろ?」

「そうだな。偶然二人だけかと思っていたが、違うのか…」

「ああ、半年前にスタンピードが起こったんだ。その時は二年だった、今は三年の先輩達はその時に全滅した。俺と澪と綾音は、偶々(たまたま)ゲートの近くにいた。綾音が喰い止めてくれたから澪と俺は逃げられた」

 男のお前が逃げたのか?とは思わない。これが現実の人間同士の戦争だったらなら、ありふれた話にも聞こえたはずだ。コイツ等が戦っている姿勢は、限界で戦う奴らの本気のそれだ。

「そうだったのか…」

 悲しい出来事なんだろう。だが、俺が変に気遣うような事でもない。先輩達から記憶と力がなくなっても、生きている限りはやり直せばいいとも取れる。

「それでだ。その時に溢れ出したバグが学校を汚染した。この半年で澪と俺で少しだけその時の残滓(ざんし)のバグを倒すことはできたが、時々出てくる強すぎるバグからは逃げることしか出来ていなかった」その強すぎるバグというのは今日の怪物のようなものの事だろう。

「それがこの学校が荒れている原因なのか?」

「いや、学校が荒れるわけじゃない。生徒が荒れるんだ。もっと正確に言えば生徒の心だ」

「つまり、お前達は学校の平和を守っているって事なのか?」

「簡単に言えばそうなる…はずだ」

「確信が無いことなのか?」

「いや、確信はある。ただ夜時間で戦うことを簡単な要約にはできない」

 そんなものだろうか。人生と一緒で案外シンプルなものだと思うがな。


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