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#18 陰陽師


 「君たちの考えはわかったよ。我を怒らせたこと、後悔するといい。」

 

 歪な表情を作るクロエ。後ずさりし、その場にいた全員を否定してみせる。

 

 「もうこんなことはやめて、常世に帰るんだ。クロエ。」

 

 天野が一歩前に出て言う。元神だからか言葉に説得力が増している。

 

 「よく言う。この世界を平定するために常世から来たのは貴様も同じだろう?」

 

 「知らないわよ、そんな事情。真護はね、私と一緒にいるのよ。」

 

 「やはり、堕ち神だな。ユリ。どういう運命か知らないが、貴様なんぞと同じ顔をしているとは不快だ。」

 

 「こっちのセリフよ、自分に心酔してる変態と同じ顔だなんて。」

 

 「……言葉はもう不要だな。貴様らを葬る。」

 

 「来るぞ!みんな、戦いに備えろ!」

 

 クロエは一気に力を解放させる。周りにオーラが湧き出て聖なる力を演出している。

 

 長い黒髪はなびき、輝く虹色のオーラによって豪華な装飾を施した服が煌めく。

 

 徐々に体を上空に上げていき、全員を見下ろす。

 

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、天上から閃光を幾つも繰り出す。

 

 「任せて。私が守るわ。式神展開・四神!!」

 

 ソラが先陣を切り、懐から4枚の御札を取り出しそれぞれの方角へと飛ばす。

 

 繰り出された札から術式が展開され『火』『水』『木』『金』という文字が浮かび上がる。

 

 それぞれの色を纏って、美しく顔の整った女性、男性が姿を現す。

 

 全員一度、静かにソラにお辞儀をする。その後左手を空高く掲げると、優たちの周りを囲うように術式が描かれ、クロエの攻撃全てを無効化する。

 

 「ククク。流石は安倍晴明。神の血を引くだけのことはある。たが、人は人だ。どこまで耐えられるかな。」

 

 攻撃を防がられても平気な様子で、攻撃を続ける。

 

 「このままじゃ、埒が明かない!私が行く!」

 

 「僕も行くよ、ユリ。」

 

 「ありがとう、心強い!!」

 

 ユリと天野が術式から外れ、クロエ目掛けて飛び上がる。

 

 「ほう?記憶の力か。神としての力を取り戻したようだな。だが……所詮は堕ち神。」

 

 クロエは言うと、近づいてきた2人を瞬時に作成した光の槍で吹き飛ばしてみせる。

 

 「何が神よ!バカバカしい!!私は私だって言ってんでしょ!!!『憑依・天狗!!』」

 

 体勢をたて直し、ユリは唱えると黒い翼が形成され、姿を和服へと変える。

 

 「天野が残した天邪鬼の片割れか。だが……本物では無いな?紛い物で通じると思ったか!」

 

 ユリは羽扇子で大きくクロエを仰いでみせるが、まるで微動だにしないクロエ。

 

 そのまま、槍で貫こうとするクロエ。

 

 刹那、剣戟が交錯し、ユリの間に一人の少年が入る。

 

 「姉貴ばっか、狙ってんじゃねえぞクソ神!!!」

 

 輝が間に入り、ユリを助けたようだ。

 

 「人間なんかに姿を変えおって。我と共にこい、また神に戻れるぞ!下照姫!!!」

 

 輝はクロエに応戦しながら、歯を食いしばり、クロエを押し始める。

 

 「遠慮するぜ!馬鹿野郎!俺はな!姉貴のことすげえ嫌いなんだ!……だけどよ!アンタには興味がねぇんだよ!!!」

 

 クロエの槍を弾き飛ばし、回転し連撃を与える。勢いのまま地面に落下していく輝を座敷童子が抱え、頭をそっと撫でる。

 

 「成長したな、輝。」

 

 「うっせ。」

 

 クロエは大きなダメージを喰らい下を向く。閃光も止まり、ソラは力無くその場に座り込む。

 

 「止めだ!!!」

 

 天野は隙ができたクロエに間髪入れず、拳に大量の力を集中させ、勢いのまま突っ込む。

 

 「うぐっ!?」

 

 「忘れていたか?僕の力は……牛鬼を取り込んだあの日から『全てを無効にする力』!お前の神としての力を無効化する!発動しろ!『天邪鬼』!!」

 

 天野が唱えると幾つもの文字がクロエの周りに張り巡らされていく。

 

 文字は呪いのように鎖を描き、クロエの心臓から黒光りする結晶が生まれる。

 

 「あとは私が決める!……どうせなら、利用してやるよ!私の前世!『天稚彦』!!!」

 

 刹那、ユリの体は光り輝き、翼は白を描いていく。

 

 大きな翼を何枚も形成し、ユリは白一色に染る。

 

 繰り出した右手がクロエの結晶に触れ、大爆発を巻き起こす。

 

 ーーーーーー。

 

 「やったか!?」

 

 ソラを支えながら、ヒロが声を漏らす。

 

 煙が巻き上がり、ユリと天野はその場に降り立つ。

 

 クロエがどうなったのか全員が息を飲み、見届ける。

 

 「フハハハハハハっ!!!!!やはりこの程度か!!!人間!!!我は絶対にして究極の神ぞ?紛い物の力が届くはずなかろう!」

 

 煙は勢いよく晴れクロエの瞳が怪しく煌めく。

 

 クロエはニヤリと妖艶な表情を浮かべ、唇をひと舐めする。いかにも悪魔的な美しさがある。

 

 「おい!座敷!何とかならねえのか!あいつさらに強くなったみてえじゃんか!」

 

 輝が声を荒らげ、座敷に助けを煽る。

 

 輝、天野、ユリによる攻撃を全て耐え抜いたのだ。

 

 いくら人間と神に差があると言っても、神の記憶を取り戻した三人の猛攻を全て受けて無傷なのだ。

 

 「さすがにヒヤッとしたさ。事実、神の力を無効にされたからね。……でもそれだけだ。君たちでは我に届かない。」

 

 「お前さんを倒す方法はあるさ。半端者よ。」

 

 暗がりで薄笑いを浮かべる座敷。

 

 クロエを煽っているようだ。

 

 「……なんだ?貴様。ハッタリだな。我を倒す方法だと?抜かせ、一介の妖怪風情にそんな術はないだろう?」

 

 「……さて、どうかな。本当にお前さんが最強の神ってやつなら、簡単にワシらを殺せるだろう?それに数千年前まんまとインバート・マリスを受けたのは何故か。お主にも効き目があるということだろう?」

 

 「ハッハハハハハ!!ならばやってみるがいい。以前と同じ結果に終わるだけだ。何度も運命を繰り返すだけだぞ?」

 

 「それは、前回の術式が未完成だったからだ。そして、お前はそれを知っている。今この場においては完成すること。……だから真城優が欲しかったんだろ?」

 

 「ほざいてろ!三下がぁああああっ!!!!」

 

 クロエは激怒すると、座敷目掛けて、槍を振りかざす。光のエネルギーを一点に集中させ解き放つ。

 

 座敷は為す術なく吹き飛ばされ、宙を舞う。

 

 「……そうさ、ワシはいつも物語を見守るだけの存在さ。だが、幾度となく崩壊しかけた世界に光が指すことを見届けてきた。……やってやれ、『陰陽師よ!』」

 

 座敷が意識が遠のく中、叫ぶと優とソラの体が光り輝く。

 

 「なにこれ……力が回復していく……」

 

 クタクタの状態であったソラの肉体に力が漲ってくる。

 

 「これは一体……。今なら、分かる……私の力の使い方が!今なすべきことが!」

 

 優も全身に力が溢れ出てくるのを感じる。

 

 刹那、力を自覚した二人に白と黒の膨大なエネルギーが降り注ぐ。

 

 ソラは全身を赤と白の装飾なされた美しい着物を身に纏う。

 

 オーラはさながら雑念を感じさせない白く透き通ったものだ。

 

 優は髪の毛を解き、髪の毛をストレートに流し、黒と青の装飾がなされた儚い着物を身に纏う。

 

 オーラは禍々しく、闇と混沌を想像の通りに描いたような悪意の塊だ。

 

 陰と陽。

 

 まさしく、これこそが『陰陽師』である。

 

 神であったユリ、天野、輝にとっては記憶から力を増幅させることは簡単であった。

 

 だが、人間である二人には人間であった枷を超えることは出来ない。前世という過去があったからこそ、今という結果になった。

 

 その因果を座敷童子は見事結合させたのだ。幾重にも及ぶ悲しい結末を見届けた座敷童子にしかできない力である。

 

 「恐れるに足りんなあ!擬態複製!!!」

 

 クロエは表情を歪ませ、自らとそっくりな肉体を数体形成する。

 

 それぞれ、ユリ、天野、輝、優、ソラ、ハジメ、ヒロ、茨木、橋姫の前に形成される。

 

 「雑魚は俺らに任せろ!!二人は術式を完成させろ!!!」

 

 ハジメが大声で指示すると、鬼である橋姫、茨木は続くように鬼の姿に変化する。

 

 「はい、任せました!でもこれ、使ってください!!!『召喚・悪鬼!!』」

 

 空に歌うように指を走らせ、瞬く間に悪鬼を形成し、その全てが偽物のクロエへと突撃していく。

 

 「いくよ、優。」

 「うん、今度は二人で世界を救おう!!!」


そう、二人で証明するのだ。すべて、悪意も善も必要だったということを。

二人はお互いの心に言い聞かせ、力を解き放つ。もうそこに迷いも躊躇いもない。

 

 「させてたまるかぁああああっ!!!!」

 

 本体であるクロエが2人目掛けて飛んでくる。

 

 「邪魔はさせない!!!『来い!茨木童子!僕の体を使え!!!!』」

 

 「待ってたぜ!相棒!!!!俺の力使わせてやる!!!」

 

 刹那、間にヒロが入り込み、クロエを牽制する。

 

 体全身を青く染め、巨大な咆哮を浴びせる。

 

 「僕は誰よりも力を使いこなす!この悪意を更新していく力で、誰よりも醜く君に食らいつく!!!」

 

 ヒロは、クロエの頭を掴み加速させ、なるべく遠くへと移動していく。そのスピードは移動する事に速さを増していく。

 

 「邪魔をするなあ!出来損ないがぁああああ!!!我の世界には不必要だ!!!」

 

 クロエはヒロに掴まれ、離せと言わんばかりに暴れる。

  クロエの複製が目の色を変え、標的をヒロに変更する。

 

 10体にも及ぶ悪鬼を簡単に吹き飛ばし、複製がヒロへと向かってくる。

 

 そのうちの5体ほどを天野とユリ、輝、橋姫、ハジメが食い止める。

 

 「バカなにやってんの!ハジメは2人を守ってて!」

 

 既に一体相手にしていた橋姫が、同時にハジメの相手である複製の間に割って入る。

 

 「いいのか?」

 

 「常世の時もそうだったろ、アンタが守りきれないものを私たちが守るのさ。……行ってこい、今度は守るもの間違えるなよ?」

 

 橋姫はウインクして、ハジメに微笑んでみせる。

 

 信頼している仲間だからこその想いにハジメは「ああ!任せたぞ!」とひと声かけ、優とソラの前方に構える。

 

 一方ヒロは複製に囲まれ、本体がヒロから離れる。

 

 「手間取らせやがって!やれ!!」

 

 そのひと声で、複製はヒロに一斉攻撃を放つ。

 

 刹那、青い光が解き放たれ、青鬼が2体その場に現れる。

 

 「なにっ!?」

 

 「もう完全にコツは掴んだ。行けるか、茨木。」

 

 「当たり前だ。相棒こいつら蹴散らすぜ。」

 

 「背中は預けたぞ!」

 

 「ふっ……この俺が人間に背中を預ける時が来るなんてな。……相棒、お前さんは俺の知ってる人間とはちげえ、真っ直ぐで、でっけえ男だよ。」

 

 「そりゃ、どうも。人間も悪くないでしょ?」

 

 「ああ、悪くねえ。……行くぞ!!」

 

 「チッ!!どいつもこいつも!だが、もうこれでおしまいだ!!!ハジメ!君を倒せば、陰陽師を潰せる!!!」

 

 「やってみやがれ。お前が立ち向かうのは、最強の鬼『酒呑童子・境一様』だぞ!」

 

 ハジメは咆哮をあげると、肉体から稲妻を放出し、力を漲らせる。

 

 「壊す力しか持たぬ貴様に何が出来る!!!」

 

 「分かりきってんだろうが!!てめえをぶっ飛ばすことだ!!!……そして、めんどくせえ柵全て優と一緒に乗り越えていくんだよ!!!」

 

 ハジメは想いの全てを拳に乗せ、勢いのまま飛び上がる。

 

 クロエも同様にハジメに向けて拳を解き放つ。

 

 「いい加減終わりにしてやる!周りみんな巻き込みやがって!!……てめえは一人の世界に浸ってろ!!!」

 

 「一生理解出来んだろうな!!我の理想なぞ、貴様ごときには!!!」

 

 「分かりたくねえんだよ!」

 

 激しい力と力のぶつかり合い。

 

 ハジメは徐々に押され始め、クロエはさらに力を高めていく。

 

 「いまだぁああああ!」

 

 ハジメが押し負けたと同時に大声で叫ぶ。

 

 刹那。

 

 『根源反転術式!!!!』

 

 二人の陰陽師による術式が発動したのであった。


そして、それは悪意を二人の少女は乗り越えたことを証明するかのごとく、陰と陽の輝きは世界を包み込んだ。

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