妹? 10
「え? 今度は何?」
春香は持ってきた料理の材料を片手にそういう。御尤もでございます。訪ねた家で家主が女性に跨られてたら疑問の一つや二つ出てきましょうとも。しかも玄関手前でともなれば、「どれだけ早急だったの?」と小バカにもしましょう。
もちろん、春香はそのようなことは言わないが言葉の端から俺に呆れている事は分かった。(違うんだ! 俺は悪くねえ! 今回に関しては、俺は悪くねえ!!)
そんな俺の心の声を知ってか知らずでか大文字が口を開く。
「出ましたわね、山形 春香! 私のお兄様は渡しませんわ! いざ、尋常に勝負!!」
そう言って大文字は立ち上がろうとする。春香は「え? 私!?」と驚く。うん、いきなりだ。俺も驚いてる。だから、俺は取りあえず彼女の行動を押さえる。
「ちょっと待て、いったいどうした!?」
そう言って俺は起き上がろうとする彼女の両肩を掴む。
「やんっ」
俺が大門寺の肩を掴んだことで彼女が声を上げる。それと同時に彼女は体を”ビクンッビクンッ”と震わせる。
「キモイ声出すなよ!」
俺は俺の腰辺りに跨り、小刻みに震える大文字に注意する。注意したら更に体がビクついたのは俺の気のせいだろうか?
「お兄様が急に私奴を激しくお求めいたしましたから……」
彼女はよがるように嘘偽りを並べる。
「嘘を抜かすな嘘を! お前の妄想でことをややこしくするんじゃない! 違いますからねぇ春香さん。今この子が言っていることは嘘! 勘違い! ありもしない虚言だからね!」
俺はそう言って春香の方に顔を向ける。彼女はこちらを見ながら口を半開きにしている。唖然としているといった方が分かりやすいかもしれない。
彼女からしたら服が卑猥に乱れた女性が幼馴染の俺に跨り、いやらしく体を揺らしているのだ。彼女の方から見たら芳しくない事が行われているようにも見えるかもしれない。
俺は急にこちらに顔を近づけて「お兄様、お兄様ー、ムー」と唇を尖らせて頭突きをして来ようとする大文字を必死で食い止める。最近見たゾンビ映画のような壮絶な攻防戦を俺は行っていた。