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窓の向こう
壁、と言っても積み重ねられている丸太がむき出しになっている表面を伝ってロロは歩いた。
黒塗りのマホガニーの箪笥があって、やっぱりロロの背丈では見ることのできない上部には宝石類が無造作に、天鵞絨の風呂敷の上に拡げられていた。
窓があって、こちらもヴェールで覆われていた。陽射しの入る隙はやはりない。この部屋の住人は背が高いようで、八歳のロロが手を伸ばしてやっとその縁に届いた。
「クロアァ。」
天窓の高くにいると思っていたアランが、この窓のすぐ向こう側にいた。
黒光りする美しい羽根に包まれた漆黒の身体をロロは認めることはできずにいたが、窓の向こうに確かにアランが居ることを認めた。