野次馬
いつも通り拙い文章ですが、お付き合いくだされば幸いです
ザザン――ザザン――
波の音が心地よい程度に聞こえてくる。
ルーたちは岩陰になって見えないところに入口がある洞穴で昼食をとっていた。
「んむむ、これ結構いけるね。どこで買ったの?」
ルーはもぐもぐとローストビーフのサンドイッチを食べながらそばのレオーネに聞く。
「ラスコのとこの店。どうしても買ってけっていうから買ってみた。」
「あら、ラスコってばそんなことしてたの。後でからかいにいかなきゃ。」
ノーチェは湯気の立つアールグレイを飲みながら、にやりと不穏な笑みを浮かべる。
そんなノーチェに苦笑いしながら、ルーはふむ、とレオーネに聞いた。
「ラスコってレオーネの友達だよね?割といつも一緒にいる。」
「そういえばそうだな。話すのもあいつとが一番多い気がする。」
「学校入ってからもう一年近くよ。その認識はどうかと思うわ。」
ノーチェはあきれ気味につっこむ。
ルーたちは14歳。
今年入学したばかりの一年生なのだ。
「うーん。でもあれだよね。最初の方って近所の子とか、もとから知ってる子とかで固まるからなかなか新しい友達ってできないよね。」
かくいうルーもずっとレオーネといた弊害(?)で入学当初はなかなか女子の友達ができなくて困っていた。
まあ、入学当初に出来た友達がノーチェというのはまた別の話。
「それもそうだけど、ルーの場合は少し特殊だと思うわ。みんなが牽制していたというか、なんというか。…その隙にルーをゲットできたから私はいいんだけど。」
ふふふ、と母親そっくりの黒い笑みを浮かべるノーチェ。
「どういうこと?っていうか私がなかなか友達できなかった理由知ってるの!?」
対して、入学当初に本気で悩んでいたルーは若干必至めに聞く。
…ちなみに、今はいる。
誤解を招かないようにもう一回言っておくが、今はいる。
男子の友達はいまだにいない彼女だが、同性の友達はそれなりにできたのだ。
「んー?まあ、色々と裏での攻防があるのよ。あっ、ルーのコミュニケーション能力に問題はないから安心しなさい。…男子の友達がいないのは、主に私とそこの幼馴染のせいだから。」
「ええ!?なにそれ!!!どういうこと!?レオーネは知ってるの!?」
いきなり振られたレオーネは、しかし慌てることなくさらりと答える。
「それに、じいさんも追加だな。」
「おじいちゃんも!?…もうどういうことだかわからなくなってきたよ…。」
しゅんと肩を落とすルーにぽん、と両側から慰めの手。
「慰めるくらいなら教えてよ…。」
「まあまあ、アップルティーでも飲みなさいって。」
渡されるカップ。
ルーは素直に受け取り、それに口をつけた。
「…おいしい。」
「それはよかった。」
レオーネは嬉しそうに笑う。
そして、おもむろに立つと
「じゃあ俺、呼ばれてるから行く。」
「ふへ?どこに?1年生は特にやることなかったよね?」
2年生から上は祭りで出し物をやるので、今頃準備に忙しいが、1年生は特にやることはなかったはず。
「さっき、ラスコに泣きつかれてだな。ノルマ売らないと自由がもらえないから、お前手伝え…だとさ。」
「確かに、あんたがいけばすぐノルマはクリアできそうだけれど。結構親切ね?」
含み笑いをしながら言うノーチェにレオーネは嫌そうに返す。
「しつこかったからだ。とにかく、そういうわけだから…。またあとでな。」
そう言ってさっさと洞穴を出て行った。
残されたルーとノーチェはクスクスと笑う。
「照れなくてもいいのに。ほんと、昔から照れ屋なんだよね。」
「あら、やっぱりあれは昔からなのね。」
ひとしきり笑ったあと、ルーとノーチェも移動し始めた。
「さてと、私たちはいろいろ周ってみようか?」
「私はいいけど、ルーは大丈夫なの?天使役やるそうじゃない。」
「全然平気。決まったルートを飛ぶだけだから。時間までに戻ればいいから、沢山時間あるよー。」
「…飛ぶだけって。相変わらず自分の魔法の凄さをわかってないわね~。」
やれやれと首を振るノーチェ。
「みんなそう言うけど本当はそんな大したことないんだよ?
『天使の魔法』なんて仰々しい名前ついてるけど、実際は障壁に結界、治癒に飛ぶ?くらいのことしかできないし。それに前3つに関しては普通の魔法でも出来るじゃん。」
「でも眷属は使わないで発動できるじゃない。それってどこでも属性を無視して魔法を使えるってことよ。」
「まあね…。強いて言えば、それぐらいじゃない?私は、ノーチェが火の魔法と地の魔法、両方使えるっていう方がすごいと思うけど。」
普通、人が扱える眷属の数は1つで、2つの眷属を使える人間はめったにいない。
「そんなのレオーネだってそうじゃない。」
「レオーネもおかしいの。同じ育ち方をしたはずなのに何であいつは学年主席で私は赤点におびえていなきゃならないのよ…。」
はあっと溜息し、うらめしそうな表情をする。
そしてキッと、ノーチェの方を見た。
「大体、ノーチェも成績よすぎ。私はもう軽く泣いてもいいレベルだと思う。」
「一応、昔から母親に叩き込まれたからね。そりゃ、少しはできないと。」
「ううう…。」
私も昔から魔法使ってるはずなのに…。
あ、でも『天使の魔法』ばっかで普通の魔法は使ってなかったら、そのせいか。
あーあと思いながら歩いていると前方で立ち往生している大きな集団を発見した。
二人は同時に顔を見合わせ
「どうする?」
「…行くしかないでしょ?」
きらきらと顔を輝かせるノーチェ。
ルーもそれに頷く。
そうして二人は野次馬精神で、集団に近寄っていった。
読んでくださってありがとうございました!
自分の中で最後の方の話が2つに分岐してしまって困ってます…
どっちにしたら、間がうまくかけるんだろう…?