12.毒属性の毒屋敷
ヴェノム邸の周囲
「さあ、待ちに待ったこの日がやってまいりました。本日はヴェノム対代官様の模擬攻城戦です。司会は私、冒険者組合のロイが務めさせていただきます。解説にはトリートさんに来ていただいています。トリートさん、本日はよろしくお願いたします」
「はい、あの、なんか大事になってませんか」
「いいんです。こんな楽しそうなことは、みんなで楽しむべきですから」
「そ、そうですか。よろしくお願いいたします」
「さて、経緯は詳しくわかりませんが、ヴェノムが貰った家を魔改造して、誰も忍び込めない家にしたそうですね」
「はい、あの、ご主人様が辺境伯様をお助けしたお礼に家を頂戴しました。それを魔改造?したというか、一緒に住んでいる私たちを守るために改築してくれたんです」
「そうなんですね。ちなみにこの家はヴェノムとトリートさん、トリートさんの妹のジストちゃんの3人が住んでいます」
「はい」
「それでトリートさん、ヴェノムとはどこまでいったんですか?」
「それが寝室も別で未だに何も、って何言わせるんですか!」
「おっと、そろそろ代官様の精鋭がそろってきたようです」
「皆さん強そうですね」
「代官様も気合が入っていますね。ここでルールの説明です。あの家の2階にヴェノムの寝室があるそうですが、そこにヴェノム人形が置いてあります。攻撃側がその人形を持ち帰れば攻撃側の勝利。日没までに持ち帰れないか降参すればヴェノムの勝利となります。あくまで侵入が目的なので多少の破壊は許されていますが、家自体を壊すのは禁止となっています」
「せっかくいただいた家ですので壊されるのは嫌ですね」
「家の周りは鉄柵で囲われていますね」
「はい、守るだけなら板塀で見えなくしてしまえばとご提案したのですが、見栄えが悪いとのことで鉄柵にしたそうです」
「最初はなかったんですね」
「はい、ご主人様が建てました」
「おっとー、代官様の兵士が攻略を始めるようです。門を開けずに鉄柵を登ろうとしてますね」
「ああ!やめた方がいいです!」
「鉄柵に手をかけた兵士がそのまま落ちてきます!」
「鉄柵の所々に麻痺毒が塗ってあります。鉄柵には触らないように言われているんです」
「兵士たちも鉄柵を乗り越えるのは諦めたようです。門を開けようとしてますね。当然鍵がかかっているようです」
「はい、鍵はご主人様と私しか持っていません」
「どうやら鍵が開かずに門を壊すみたいですね」
「鍵を忘れたら大声で呼ぶように言われています。どのみち私では力づくでは開けられませんけど」
「門が壊されました!あれ、なんか煙がでてますね。門の近くにいた兵士がバタバタと倒れています。死んでないですよね?」
「はい、あれは睡眠毒だと思います。ご主人様はいろんな毒を作れるんですよ!」
「毒が作れることをそんなに誇らしげにいわれても…。眠らなかった兵士が門からなだれ込みます。門から玄関まで敷石がありますね」
「はい。敷石以外歩かないよう言われています」
「あ!敷石から外れて進んでいた兵士が他の兵士に殴りかかっていますね」
「あれは幻惑毒ですね」
「そんな毒があるんですね」
「はい、幻惑もいろいろあるらしくて、ああやって攻撃的になるものから逆に無気力になるものとか、い、いやらしくなるものとかあるそうです」
「そこらへんは後で詳しくヴェノムから聞きましょう!さて何人かは玄関にたどり着きました。ただ門でのことがあるので攻めあぐねているようです」
「鍵がなければ壊すしかないですからね」
「お、話し合いの結果、扉を諦めて2階から侵入するようです」
「絶対にやめた方がいいです」
「梁に捕まってよじ登ろうとしてますね」
「屋根には絶対に出るなといわれています。ヴェノムさんの目が本気で、結構怖かったです」
「他の兵士の力を借りて1階の屋根に登りました。なにも起こりませんね」
「わざと少し遅れて効くようにしてるんです」
「1階の屋根に登った兵士が慎重に2階の窓に近づきます。あれ、なにか様子が変ですね」
「全身が痒くなる毒です」
「何ですかそれは!ああ、搔いてます。背中、足、首。とうとう立っていられなくなって屋根から転げ落ちました」
「ああ、あそこは…」
「もしかして幻惑毒」
「はい…」
「なんということでしょう、落ちた兵士は全身を搔きむしりながら玄関前に佇む兵士たちに殴りかかろうとしています。こんな異様な光景は今まで見たことがありません」
「悲惨ですね」
「残った兵士も異様なものを見るように同僚を見つめています。あ、意を決した兵士が玄関の扉を壊すようです」
「もう諦めた方が」
「玄関の扉が壊されました。また煙です!」
「はあ」
「あれ、今度はみんな笑い始めましたよ」
「笑い毒です」
「なんですかそれ!」
「毒キノコの中にはワライダケというのがあるといっていました」
「兵士が笑い転げて、転げて…」
「敷石から転げましたね」
「ああ、笑いながら殴り合ってます!」
「もう無茶苦茶ですね」
「おーっと!ここで白旗です。代官側から白旗が出されました」
「よかったです。これ以上の醜態は見せられませんよね」
「ところでヴェノムがあそこで笑い転げてますね」
「仕込んでいるときもずっとニヤニヤしてました」
「あひゃひゃひゃひゃ、いかがですか辺境伯様」
「わはははは、ヴェノムよ、笑い過ぎだぞ」
「これで安心していただけましたか」
「ああ、そうだな護衛をつける必要はなさそうだ。代官!余計なことを頼んだ。忘れてくれ」
「は!」
これ以上ない巨大な苦虫を嚙みつぶしたような顔の代官が答える。
「代官よ。今回のことは気にするな。ヴェノムが1枚も2枚も上手だっただけだ。兵士たちにも気にしないよう伝えよ」
「はい、ありがとうございます」
「ところでヴェノムよ」
「はい」
「家の中に入ったら、もっと酷い目に会うのか?」
「何をおっしゃいます辺境伯様、家の中にあんな仕掛けがあったら住みづらくてしょうがないじゃないですか」
「それも、そうか。わはははは」
「ちょっと兵士さん達を解毒してきますね」
「おお、そうだったな」
『まあ、ヴェノム人形には毒が仕込んであったから、持ち帰ることなんてできなかったんだけどね』




