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第9話 父への挨拶と商人の息子の企み

 しばらくして、ライオット家から結婚の支度金を持ったジョナルド卿が、私の屋敷に正式な婚約を申し込みにやってきた。


「きょ、今日は、正式な婚約の申し込みに参りました」


 応接間に通されたジョナルド卿は、私と両親の前に座った。

 かちこちに緊張している。


「ジョナルド卿、もう娘は君にやる事に決まっている。そんなに緊張せんでもいいぞ」


 見かねた父が、助け舟を出す。


「はっ、申し訳ございません。これを、お納め下さい」


 ジョナルド卿が、支度金の金貨の入った木箱をテーブルの上に置いた。

 父が中身を検める。

 私と両親は、中身を見て驚いた。


「ジョナルド卿、これは多すぎる。相場の5倍はあるぞ!」


 その中身は、伯爵家の人間でも驚くほどの額だった。


「私は、あまり金を使う事に興味がありませんで、この様な日の為に魔物討伐の報奨金を全て残してあったのです。どうぞ気にせず、お納め下さい」


 ジョナルド卿が、そう言った。


「いやいや、娘の嫁入り道具を揃えるにも、これは多すぎる。二人の新生活の為に使いなさい。支度金の額に応じて嫁入り道具を揃えねばならん。支度金よりも多くの物を持たせたいのが親心というもの。多すぎる額は、相手の家の負担になるのだよ」


 父は、半分の額を袋に入れてジョナルド卿に返した。


「はい、物を知らず、申し訳ございません。額については、両親とも相談すべきでした」


 ジョナルド卿が、頭を下げる。


「そうだ、では、お返しした金貨で新しい馬車を買ってくださらない」


 私は、そうジョナルド卿に言った。


「馬鹿を言いなさい!ジョナルド卿には、うちの馬車を1台差し上げる。こんな額を貰っておいて、贅沢な要求を彼にするでない!お前には、アースキン伯爵家にふさわしいだけの嫁入り道具を用意する」


 父が、私をたしなめる。


「ははは…やはり、自動車は駄目ですか」


 ジョナルド卿は、苦笑いして頭をかいた。


 まあ、仕方ない。

 私は、それで納得する事にした。


「ところで、新居はどうするのだい?それに合わせて、嫁入り道具の大きさを決めねばならんが」


 父が、ジョナルド卿に尋ねる。


「はっ、ライオット家の屋敷は大きくありませんので、我が家が古来より守りを任されているライオット城の一部を改造して住居にしようかと。職場と住居が一緒になってしまい、恐縮なのですが」


 ジョナルド卿は、自領の城を提案してきた。


「まあ、素晴らしい!お城住まいが出来るなんて」


 私は、目を輝かせた。


「あの城は、魔物の多い森から首都を守る位置。危険ではないかね?それに、城は住むには向かんと聞く」


 父が心配そうに言う。


「城には、勇猛な部下達も多くいますし、城まで魔物の侵入を許した事も、この数百年ありません。お嬢様の住居として、ふさわしいように充分な改造を行っています」


 ジョナルド卿が言った。


「そうか、ならいいだろう。広ければ、娘にも充分な嫁入り道具を持たせられるしな」


 父は、安心した様だ。


「お父様、私、一度ライオット城に、お邪魔したいわ。一度泊まって、どんなところか確かめたいの」


 私は、父にお願いする。


「お前は、もうジョナルド卿のものだ。三度目の結婚で、心配する事もあるまい。好きにするといい。ジョナルド卿、娘を頼んだぞ」


 父は、そう言ってくれた。


「はっ、必ず、お嬢様をお守りいたします」


 ジョナルド卿が、頭を下げる。




 その頃、大商人の跡取り息子コーデニスと、妹ジャスリンが、コーデニスの別宅で逢引きしていた。

 二人は愛人関係だったのだ。


「もう、二人目を妊娠しているのだろう。私の種は必要あるまい?」


 ソファーに身を投げ出し、ワイングラスを片手にコーデニスが言う。


「あら、いやだ。妊娠した女には興味が無いって言うの?へたれの種無し王子といても、つまらないのよ」


 窓際に立って、ワインを飲むジャスリンは、外を見たまま言った。

 第二王子との子供と思われた赤ん坊は、実はコーデニスとの間に出来た子だった。


「そんな事は、ないさ」


 ソファーから立ち上がったコーデニスは、ジャスリンを後ろから抱いて囁く。


「お前の姉、ジョナルド卿と婚約したそうだな。あんな、生意気なだけのマグロ女のどこがいいのやら。あの獣人め、私に人前で恥をかかせて、このままではおかんぞ」


 コーデニスは、顔をしかめて言った。


「私も、あの生意気なお姉様が泣いているところを、もう一度見たいわ。今度は、未亡人なんて最高ね」


 ジャスリンが、ニヤリと笑う。


「いいだろう。お前の願い、叶えてやるぞ」


 コーデニスは、そう言うと、ジャスリンと唇を合わせた。

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