50 ギルド証の更新と言えない事
(略しすぎています)
どうも、現在ギルドに向かって歩いている、銀髪ロリエルフになった者です。
サリアたちとの祝勝会という名のお茶会は店員さんに嫌な顔されてないかなと思うほど長い時間開催していた。気づいたときには夕暮れ時のいい時間になっていたのでお開きとなり、皆は各々帰宅していった。
自分も家に帰るか~と流されかけたが、ギルドの人に色々聞きたいことがあるのを思い出してギルドへの歩みを向けた感じである。
歩いている最中は少し暇だし、聞いておきたいことについてまとめてみるか。
1つ目は戦闘能力評価期間最終日のトーナメントで発生した魔物についてだ。
その魔物がドロップしたあやしい魔石をモリスさんというギルド所属の冒険者に託し、魔石の鑑定をお願いをした。魔石の鑑定は自動で行われるし、そこまで時間はかからないはずというのもあり、さっそく聞きに行こうかなというところである。
2つ目は自分の家の周りの怪現象についてだ。
自分の家である館は湖に面した素晴らしいローケーションだが、比較的魔物が多く出没する森の中にある。夕方以降に帰宅しようものなら必ずと言っていいほど魔物に出くわす。その程度までにその森で発生する魔物は多い。だが、ここ最近魔物をぱったり見なくなった。魔物が家の周囲から居なくなることは嬉しいが、普段とは大きく異なる状況が気になっている。この状況についてギルドは何か情報を持っていないかなというところである。
3つ目はギルド証の更新についてだ。
だいぶ前の話、と言っても1カ月くらいかな?その時に魔物を大量にポコした結果、ギルドランクがブロンズから一気にゴールドランクまでランクアップする資格を得た。そういうこともあり、ギルドマスターのキースさんがランクアップ申請をしてくれていた。その件はどうなったのかというところだ。
聞いておきたいことはこんなものか?細かい内容についてはその場のノリで聞くとしよう。それに、もうすぐギルドに着きそうだから考え事を一旦やめるか。
_______________________
「なんか慌ただしいな」
いざギルド前に来てみると、慌ただしく出入りする冒険者が多い。冒険から帰ってきました~という家に帰ってきたという雰囲気ではなく、どこか戦地にでも向かうかのような真剣な雰囲気を纏っている。何があったのか気になりなるが、流れで聞く機会があれば聞いてみるか。
入り口をくぐり、受付カウンターへ行く。いつもなら限界化したミカさんが受付カウンターにいるのだが、今日は居ないな?まだ学園から帰ってきてない感じなのかな?併設された食堂で少し待ってみるか。
食堂へ向かおうとしたところ、カウンターの方から聞きなれた声が聞こえてきた。
「カオリちゃん!ギルドに来てたんですね。帰宅したものと思ってました」
そう声をかけてきたのはミカさんである。だが、いつもの調子みたく限界化してはいない。どうやら仕事モードのようだ。
「色々聞きたいことがありまして来た感じです。今日はかなり慌ただしいですね」
「学園の魔物騒ぎに関連した問題で、ギルドの皆さんに協力を仰いでいます。それで慌ただしくなっているのだと思います。その問題に関連してギルド長がお話を伺いたいようです。カオリちゃん、お時間は大丈夫ですか?」
この騒ぎが学園の魔物騒ぎに関連していたとは予想外だった。面倒なことになっている気しかしない。とにもかくにも話を聞いておかないと、この問題がどこに繋がっているのか分からず敵の虎の尾を踏んでしまいかねない。
ミカさんに快諾して最上階にあるギルド長であるキースさんの執務室へと向かった。
________________________
執務室に入りギルド長であるキースさんと対面する。以前顔を合わせた時よりもキースさんの表情は少し硬いように感じる。自分の知らないところで起きた事件に頭を抱えているのだろうか。
「こんなに早くカオリちゃんを連れきてくれるとは、ミカさんありがとう」
「たまたまフロアで見かけましたので想像するような大変さはありませんでしたよ」
「それはなによりだ。カオリちゃんは久しぶりだな。元気だったか?」
「それなりに元気してました。最近は学園の方が戦闘能力評価期間でしたので友人たちとそちらの方に注力してました」
「最近来ていないようだったから少し心配していたが、学園の行事だったのか。少し安心したぞ。立ち話も疲れるだろう。2人ともソファーに座って話そうか」
自分とミカさんは促されてソファーに座る。キースさんもテーブルを挟んだ向かい側にゆっくりと腰を下ろした。まずはキースさんが話し始めた。
「それじゃ、話を始めるとしよう。カオリちゃん、頭の痛い話とそうでない話のどちらからら聞きたい?」
「最近頭の痛い事件が多いので、頭の痛くない話からでお願いします」
「なら、その話からするか。先日私と面会した時の要件は覚えているかな?」
「はい。ギルドランクの昇格の件ですね」
「そうだ。先日やっとギルドランクの昇進が認められてね。カオリちゃんは晴れてゴールドランクだ。おめでとう。そして、これがゴールドランクのギルド証だ」
キースから金色のカードが手渡された。今まではブロンズランクでだったので普通のカードっぽい見た目だったが、渡されたギルド証はゴージャス感あるな。
「カオリちゃん、やっと正式にゴールドランクにランクアップですね!おめでとうございます!」
「キースさん、ミカさん、ありがとうございます」
「ゴールドランクになると様々な特典が得られる。細かい事はミカさんにでも聞くといい」
「カオリちゃん何でも聞いてね」
「そうします」
聞きたいことリストの1つが消化されたな。ランクアップしたのはいいけど、特典が気になるところだな。今はその点は置いておいて今度聞いておこう。
「それでは、次は頭の痛い話だ」
そう言うと共に、キースさんとミカさんの纏う雰囲気が少し硬くなった。え?2人とも何があったの?もしかして自分が悪いことした感じか?それとも、もう敵の虎の尾を踏んだとか?
「2人は事件の当事者だから詳しい事を省くが、カオリちゃんがモリス君に託してくれた魔物の魔石が襲撃者に盗まれたとの報告を受けた」
「え?本当ですか?」
自分が悪い事をしていたわけではないようだが、それはそれで悪い話だ。鑑定して謎が多い魔石について調べてもらおうとしていたが、奪取されたのでそれができなくなったのだ。魔石について自分が見てきた以上の事を知ることのできるいい機会だったのになぁ。
ミカさんが話を受け受け継いで話始める。
「それが本当なんです。モリスさん突然黒いローブを被った人に襲われて持っていた魔石が奪われたんです」
「モリスさんは大丈夫だったんですか?」
「かなりの重傷を受けました。魔物戦闘のために用意していたポーションを使って即時に回復できたこともあり今は無事です」
「そうですか安心しました。それで、黒いローブの人については何か情報はあるんですか?」
「それが何も手がかりが無い状態です。相手はモリスさんから魔石を奪うとすぐに逃走しました。魔法戦闘もなかったので魔力痕跡も無く、魔力を用いた追跡もできない状態でお手上げ状態です」
「それはお手上げですね...」
現状態では黒いローブを被った不審者という話しかない。それは情報が無いに等しいが...。いや、情報はある。相手がかなりの手練れだということだ。
モリスさんを含め冒険者がゾロゾロと移動していた状況だ。その中に単騎で襲撃して、魔法も使わずに完全な逃走を決めた。それは比較にならない程の実力差があることを示している。もしかしなくてもヤバい相手だ。
「私は相手が襲撃までして、なぜ魔石を奪ったのかその理由が分からなくてね。カオリちゃんは何か知らないかと思って話を聞いた次第だ。知っているならできるだけ詳細に教えてくれると助かる」
「わかりました。知っていることを話します。あの魔石は学園に突如発生した魔物からドロップしたものです。その魔物からは禍々しい何かを感じましたが、ドロップした魔石からもそれと同じものを感じました」
「そうだったのか。盗まれたのはドロップした魔石だったのか。それに禍々しい何かか...」
「加えて、魔石はかなり濁っていました」
「禍々しさに加えて魔石の濁りか...」
キースさんは何か思い当たるところがあるようで、渋い顔をしている。一方で、ミカさんは何も引っかかるところが無いようで表情に変化は見られない。キースさんはギルド長というのもあって多方面から情報を得ていそうだし、その情報に引っかかったのかもしれないな。少し聞いてみるか。
「何か引っかかる事でも?」
「いや...あるにはある。だが私の権限では言うことが許されていない。すまない。ただ、これだけは言える。この件から手を引いた方がいいということだ」
「「え?」」
キースさんが話してくれた情報からは中々に話が飛躍している結論のように思う。だが、闇魔法が世の中から消されていたように、表に出してはいけない情報があるのだろう。それに、情報を知る立場の人がそう判断したのだ。その判断を尊重するに越したことはないだろう。
「わかりました。この件については追及しないことにします」
「そう言ってくれるとありがたい。ギルドの皆を危険にさらしたくはないからな」
「えっ、えっ?」
ミカさんは急な流れについてこれずに視線を自分とキースさんの間を行ったり来たりしている。なんか可愛いな。その仕草のおかげでこの場の空気が軽くなったように思う。ありがとうミカさん。
「ミカさんもそれで納得してくれると助かります。私の方からギルドの皆さんには追って納得できるような指示を出しておきます。」
「とりあえず?わかりました」
「すまないな。私からの話は以上だ」
_____________________________