48 事後処理とかなんとか
(略しすぎています)
ミカさんの応援に応じて演習場に駆け付けたのはギルドの皆さんだった。そのリーダーはモリスさんというおじさんで、いかにも冒険者の様な風貌だった。無精ひげが何とも言えないくたびれ感を演出していた。剃ったらイケメンになるタイプだな。
それはさておき、困惑しているモリスさんに駆け付ける理由が発生した経緯など諸々説明を行った。
「と、以上が事の経緯です。質問はありますか?」
「大丈夫ですぜ、簡単に話は聞いていたからな。それにしても、てんs...カオリちゃんはオーガに続いてエリートゴブリンを単独で倒すんだから大したもんだよな。俺たちなんてこの数で応戦するのがやっとだというのになガハハ」
フィールド上に魔物が発生したり、それを単独で倒したりと、突飛にも聞こえる話をモリスさんは聞いて受け止めてくれた。話が早くてとても助かる。
あ、そういえばドロップした魔石について話してなかったな。事後処理とかで魔石が必要かもしれないし渡しておくか。ついでに、魔石の調査もお願いしてみるか。
「ゴブリンとの戦闘でドロップした魔石ですが、事後処理で必要ですか?」
「ああ、あるとありがてぇな。何せ街の中に魔物が出るなんて超レアケースだからな。細かく調査しないといけないらしい」
「それなら、渡した方がいいですね」
ポケットに入りきっていない大きな魔石を取り出してモリスさんに手渡す。
「確かに受け取ったぜ」
「それで、その魔石なんですが実は、少々気になることがあるんです。魔石を見てもらったらわかるんですが」
モリスさんに魔石を見るように促すと、モリスさんの眉間にしわが寄った。
「おいおい、こいつは見たこともねぇ程の濁りをしてんな」
「そうなんです。その濁りが気になっているんですよ」
「俺も長い事ギルド関係で魔物を狩ってきたがここまで濁ってるのを見るのは初めてだ。」
「不思議な魔石なので、せっかくだし検査してもらおうかと思いまして」
「俺も気になるし、検査に回すように俺からも頼んでおくわ」
「よろしくお願いします」
「そのくらいお安い御用よ。それはそうと、カオリちゃん疲れただろう。ここの事後処理は俺たちに任せてゆっくり休みな」
確かに気が張って疲れたし、そうさせてもらうか。
「お言葉に甘えさせてもらいます。」
魔石をモリスさんに渡し、フィールドを後にすることにした。
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通路を歩いて待機室の前に来ると、ドアの前に見覚えのあるナイフが転がっていた。
「これは...間違いなく自分のナイフ型MSDだな。」
核が木っ端みじんになって使用不可能になったナイフ型MSDだが、まさか帰ってくるとは思わなかったな。MSDの検査を求められたため提出したが、後からゲセスターの策謀によるものだと分かった。だから回収して処分されるものとばかり思っていたのだが...まさかの返却だ。罠とかない?柄に何か仕掛けられていたりとか?
手に取って怪しいところが無いか確認していく。怪しい物体はついていないな。魔力を流すと...何もないな。単なる金属の塊といったところだ。
そんな感じで思い当たる事も試したけれど、変わったところはなかった。
「何もないか」
壊れたMSDが返却されたはいいけど、どうするかな。捨てるのもなんだし、持って帰るとするか?初代相棒として記念にでも飾っておくのもありだな。
とりあえず持ち帰ることにしたので、壊れたMSDを脚のホルダーに仕舞う。
ホルダーにかかる重さがどこか心地よいな。かなり自分の戦闘スタイルになじんでいるし、2代目相棒も同じ奴にしておくか。
そう思いつつ、視線を待機室の扉に移す。エルバ先生はまだ居たりするのかな?
とりあえず、扉をノックしてみる。少し待ってみたが、一向に反応が返ってこない。念のため扉をそっと開けて室内を確認しておく。
「コンニチワー」
その声は誰も居ない真っ暗な部屋に消えていく。部屋は荒らされたり前衛的な落書きがあったりといったことはなく、エルバ先生に見送ってもらった時のままだ。
エルバ―先生の居ない間はいたずらをやり放題なんだが...。ゲセスターがダウンしたことによって命令が手下に飛ばなくなったのだろうな。なんにせよ被害が無い事はいい事だ。
なんか被害が飛んでこないと思うと気が楽だな。諸々片付いたし、元凶も吹っ飛ばせたし、気分はそれなりにいいぞ。るんるんよ。るんピカびーっとそれ以上はいけないな。
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演習場の外に出た。演習場前には魔物の件で追い出された多くの生徒がまだ立ち話している。体感的にかなりの時間が経ったように思えたが実際はそうではなかったようだ。それだけ戦闘に集中してたってことなんだろう。とはいえ、自分だけ学園ハードモードじゃない?もっと暢気に過ごせるところだと思ってたよ?
謎の流れに文句を垂れていると、こちらへ向かってくる足音が耳に入った。今度は何事だ?
足音のする方向に体を向けた途端、自分に飛び込んでくるサリアとリナ、シルフィアの姿が見えた。
「「「かおりちゃーーん」」」
「ちょ、倒れるうう」
予想していなかった場面に受け身が取れず、3人に押し倒される。
「ぐへぇ」
これ、どういう状況だ?と頭が真っ白になっていたところ、のしかかったままの3人から声がかかる。
「心配したんだから」
「ケガが無くてよかったです」
「カオリちゃーーーんうわあああん」
みんな心配で自分の姿が見えて駆け寄ってきてくれたようだ。リナ、シルフィアはホッとした表情を浮かべている、一方でサリアは自分の服を掴んでギャン泣きしている。そういえば前にもこんなことあったな。
「みんなありがとう」
3人に押しつぶされながらもなんとか声を発する。
ここまで思ってもらえるなんて素直にうれしいと思いながら3人の重みを感じる。転生して友人もいない場所で生活することになり心細く感じていたが今はそれがない。それどころか毎日が楽しいとさえ感じている。本当にありがたい存在だ。
もう少し3人の重みを感じていたいところだが、周りからの視線が気になり始めたので背中を軽く叩いて離れるように促す。シルフィアとリナは渋々離れてくれたが、サリアはまだ離れてくれる気配はない。
シルフィアとリナに目線を配って助けを求めたが、首を振られてしまった。サリアが落ち着くまでは胸を貸してあげてということなのだろう。2人がその反応をするということは、サリアは自分が来るまで相当心配していたのだろうな。
しょうがないなと思いつつ、サリアの背中をさすって落ち着かせるのであった。