表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/49

第19話 また一緒に探索しよ

 残響していた笑い声が消えたことにより、ようやく終わりを告げる。

 シャーリーはそのことに安心したかのように、力が抜けて足から崩れ落ちてしまった。


「うぅっ」


 安心したせいか、目から涙が溢れてしまう。

 一気に堤防が決壊したかのように感情も押し寄せ、シャーリーは泣きたくて泣きたくて堪らなかった。


「泣き虫なところは変わらないな」


 そんなシャーリーに、皮肉めいた言葉をマギアがかけた。

 思わず睨みつけるとマギアは懐かしむような顔をして、優しく微笑んだ。


「そこは前と変わらないな。腕を一本失ったかいがある」


 マギアはそう言って、抱えていたドリーの身体をシャーリーへ預ける。

 思わずドリーが行きているかどうかと確認すると、小さな寝息が囁くように耳の中へ入ってきた。

 シャーリーは心の中で胸を撫で下ろし、ドリーの身体を優しく抱き締める。

 マギアはそれを見て、何も言わずに背を向けた。


「待って!」


 そのまま去ろうとしていたマギアを、シャーリーは呼び止めた。

 どんな言葉をかければいいかわからない。だけど、このまま別れたくなかった。


「なんだ?」

「えっと、その、腕だけど、勝手に使ってごめんなさい!」

「ふん、必要だったからやったんだろう。なら謝るな」


「でも――」

「お前は前から自分勝手だからな。今さら気にすることでもない」


 シャーリーは申し訳なさでいっぱいになった。

 そんなシャーリーを見て、マギアは大きくため息を吐く。

 一度だけ振り返り、とても似合わない笑顔を浮かべた。


「オレはお前が嫌いだ。だからこそお前を信用している。お前がお前である限り、我が主を預けられるんだ。わかったか?」


 どういう意味が含まれた言葉なのか、シャーリーはわからなかった。

 だが、少なくとも褒められているということだけはわかった。

 だからこそ、シャーリーは訊ねる。


「あなたの名前、教えて」


 マギアは表情を変えない。ただシャーリーを見つめ、ハッキリと自身の名を告げた。


「マギアだ。忘れるなよ」


 シャーリーはマギアの名を呼ぼうとした。

 ありがとう、という感謝を添えて呼ぼうとした。

 しかしその寸前、聞き覚えのある声が響き渡った。


『シャーリー!』


 アルフレッドの心配する大きな声が耳に入る。

 シャーリーが反射的に振り返ると、泣きながらアルフレッドが抱きしめてきた。


『大丈夫か、シャーリー!』

「はい。先生は、大丈夫でしたか?」

『当たり前だろ! それよりどうしたその姿は! なんでここまでボロボロなんだ!?』

「えっと、それは……」


 思わずマギアのほうに顔を向けるが、そこにはもう姿はなかった。

 アルフレッドは呆けているシャーリーをドリーごと抱き締める。

 とにかく無事でよかった、という気持ちを込めて二人を優しく包み込んだ。


「おおっ、これは〈ヘブンズ・セブン!〉」


 そんな中、グレアムが興奮気味の声を上げた。

 顔を向けるとそこには倒れている虹色竜ヘブンズ・セブンがあった。


「お二人が倒されたのですか!? すごいですな!」

「えっと、その、それは――」

「たぶんそうだと思うよ。さすがだよ! 僕が見込んだだけはある!」


 シャーリーが説明しようとした瞬間、スレインが割って入った。

 思わず見つめると、スレインは自身の口に人差し指を当てて笑う。

 何も言わないで、というメッセージだろうか。そう受け取ったシャーリーは、スレインの指示に従って黙り込んだ。


「もっと精進しなければ!」

「そうだねそうだね! あ、こんなところに〈七色ダイヤ〉が!」

「なんと! ついに手に入ったのですな!」

「でもこれ、一つしかないね。どうしよっかなぁー、これ?」


「私にください! スレイン殿、私それが欲しいです!」

「よし、じゃあ取引しようか。十ゴールドでどうだい?」


 唐突に、スレインとグレアムがくだらないやり取りを始める。

 グレアムが唸りながら値下げ交渉をする光景を、シャーリーが苦笑いしながら見つめていた。

 そんな中、抱き締めていたドリーの身体が僅かに動く。


「んっ……」

「ドリーちゃん!」


 寝ぼけた顔して、ドリーはシャーリーを見つめた。

 シャーリーは優しく顔を綻ばせると、ドリーに「もう大丈夫だよ」と声をかける。


「シャーリー? あれ、私なんで……」

「大丈夫、大丈夫だから」

「……うん」


 抱き締める力が、自然と強くなる。

 ドリーはそれに嬉しさを覚えていた。

 だけど、同時に一緒にいてはいけないとも思ってしまう。

 なぜそんな想いを抱くのかわからず、ただただ抱き返していた。


「シャーリー。私ね、怖い夢を見たわ」

「怖い夢? どんなの?」

「シャーリーをひどく傷つける夢。嫌で嫌で堪らなかった」


 シャーリーは一瞬、言葉に詰まる。だけどすぐに、「夢でよかったね」と言い放った。

 うん、とドリーは頷く。だけどその顔は、どこか不安げだ。


「ドリーちゃん」

「何?」

「今回もいろんなことがあったね」

「うん……」

「次も大変かもしれない。それでも、また一緒に探索しよ」


 シャーリーはそんなドリーに向けて、優しく言葉をかけた。

 ドリーはその言葉を受けて顔を柔らかく崩し、ただただ安心してシャーリーの胸の中に顔を沈めた。


「うん――」


 ドリーにどんなものがあるかは、シャーリーはわからない。

 だけど、シャーリーにとってドリーはドリーだった。だからこそ約束する。


 また一緒に探索しよう、と――



このエピソードで第三章は終了です。

お読みいただきありがとうございます。


いつもブクマと評価をくださりありがとうございます。

大変励みになっております。

感想などくだされば、さらに大きな励みとなります。もしよろしければ感想もお願いします。


明日4月11日は3日ほどお休みします。

早ければ月曜日頃に更新再開しますので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ