第17話 空中艦隊
国民による暴動が起きた中国は、人民解放軍全軍(主に陸軍)が国民の暴動に加わりさらに過激化していた。政府首脳は頼みの綱の軍を失い首都を放棄、地方へ逃げていたが、軍がこれを見つけ抹殺。首都を占拠した国民と軍によって新政府が樹立され、日本との講和をいち早く望んだ。新政府は日本の政治を見習い、一党独裁の廃止を決定。これによって社会主義から民主主義へと変貌を遂げた。
香川総理
「アメリカの演習は断る方針で行く」
外務大臣
「ですが、今後の関係の為にも受け入れたほうがよいかと・・・・」
香川総理
「アメリカは確実に先日報告があった空中艦隊をぶつけてくる。まだ中国も完全に民主主義へ移行した訳ではないし、警戒を解く訳にはいかないしな」
外務大臣
「そうですか・・・分かりました。そう伝えます」
アメリカ ホワイトハウス
米外務大臣
「大統領、日本が演習を拒否しました」
米大統領
「我が空中艦隊の恐れをなして逃げたか!まぁいい。予定通り太平洋公海上空にて空中艦隊の演習を行う。軍に連絡、すぐに発進準備だ」
空中艦隊計画
原子力重巡航航空艦 CVN-112 アルヴィト
全長 542.5m
全幅 1157.4m
全高 125.7m
航空甲板面積 縦520m×横150m
カタパルト 6基
武装 30mm対空ガトリング砲23基
SAM6連装発射機12基
Mk.45 mod.25 VLS(30+15セル)10基
・新型核巡航ミサイル『アニマ』
・SAM、ABM、VLA、SUM
アメリカが2005年から建造を開始した空中艦隊計画の中核を担う巨大航空空中母艦。名の通り海の上の空母と同じように航空機の発着艦、補給、整備が出来、6機もの艦載機の同時発着艦が可能。しかしその巨大さ故に外部からの攻撃に弱い。だが自艦にも対空兵器を搭載し万全の迎撃体制をとっている。もし敵機の接近を許した場合には、防空専門であるフリストとの連携をとる。そしてアルヴィトへの搭載を念頭に置いて開発された長距離攻撃用の核巡航ミサイル『アニマ』を搭載している。名前のアルヴィトは北欧神話のワルキューレの名前である『全知』を意味する。『アニマ』はラテン語で光。
原子力重巡航防空艦 DDGN-113 フリスト
全長 225.5m
全幅 501.6m
全高 50.2m
武装 30mm対空ガトリング砲45基
SAM6連装発射機35基
25mm機関砲15基
空中艦隊計画の中核であるアルヴィトの防空支援のみを任務とする艦である。そのため対空兵器しかつんでおらず、全方位への弾幕を瞬時に展開できる。3隻建造された。名前のフリストは北欧神話のワルキューレの名前である『轟かす者、援軍』を意味する。
原子力巡航電子支援艦 DDEN-114 ゲンドゥル
全長 225.5m
全幅 501.6m
全高 50.2m
武装 25mm機関砲4基
SAM6連装発射機2基
外見はほぼフリストと同じである。主任務が電子支援であるため対空兵器は申し訳程度にしか積んでいない。僚機、僚艦に対し戦術的サポート、情報処理を担当。ゲンドゥルの存在は空中艦隊の対空戦闘能力強化に貢献している。こちらは2隻建造された。名前のゲンドゥルは北欧神話のワルキューレの名前である『魔力を持つ者』の意味。
日本 中央防衛局 航空宇宙防衛作戦室
天照通信員
「あと少しで天照の報告にあった、アメリカ空中艦隊の太平洋上での演習の開始時刻です」
香川総理
「わかった。出来るだけ情報を集めろ」
ハワイ基地から。6隻の巨艦が離水する。その巨大さ故、陸上では運用出来無い。原子力で飛んでいる為、燃料補給は事実上必要ないが、燃料交換時には海へ着水する。管轄は海軍である。
ゆっくりと6匹の鯨、いやマンタが空へ舞い上がる。あまりにでかい為、気持ち悪いぐらいにゆっくりと飛んでいく。
太平洋上空1500m
オペレーター
「こちらアルヴィド。これより演習を開始する。通常陣形で5分間巡航速度で飛行後、防御陣形での飛行に移行。その後、艦載機の発着艦の試験に入る」
通常陣形は先頭をアルヴィドが、その左右斜め後方をゲンドゥル2隻が、そのまた左右斜め後方をフリスト2隻が、そしてアルヴィドの真後ろにフリスト1隻が飛ぶ。
防御陣形はアルヴィドを中心に左右にゲンドゥル2隻、アルヴィドの前方をフリスト2隻、そしてアルヴィド後方にフリスト1隻が飛ぶ。この防御陣形は最大限まで各艦が接近する。
オペレーター
「防御陣形解除。続いて艦載機の発艦試験に移行」
航空甲板上の2基のハッチが左右に開き、そこからアルヴィドの艦載機用に改修を受けたF-22、2機が姿を現す。このF-22は空軍のそれと性能などは変わらず、発着艦の際や、艦内での移動に使われる機体固定用のアームを取り付けたものだ。
オペレーター
「管制室よりタイガー隊。各機発艦準備」
タイガー1
「タイガー1了解。エンジンスタート。アフターバーナー最大」
オペレーター
「管制室よりタイガー隊。オールグリーン。発艦のタイミングを各機へ譲渡」
タイガー1
「タイガー1了解。タイガー隊、発艦する」
ぐんぐんと速度が上がる。甲板の先端まで来たところでアームが外れ、空へ放り出される。
無事、発艦は成功だ。管制室から歓声が上がる。発艦は予想していた通り比較的容易に成功した。だが問題は着艦である。水上艦の方の空母に着艦する際は甲板後方のアレスティング・ワイヤーにアレスティング・フックを引っ掛け機体を急減速させ停止させる。だがこのアルヴィドの着艦は艦載機についたアームを、アルヴィド側のアームが掴む、というものだ。通常の空母は広く見て有効な着陸区域は何十m程ある、要は面に着艦するということだ。しかしアルヴィドの際は点に着艦することになる。難易度の差は歴然だ。そのためシュミレーターを使い訓練はしたものの、相当な操縦技術を要求される。
オペレーター
「よし、タイガー1貴機が先に着艦しろ。後方の気流の乱れに注意しろ」
タイガー1
「タイガー1了解。・・・・アルヴィドに接近。着艦アーム視認。ギア、アームダウン。相対速度確認、速度、アルヴィドと同調。着艦!!」
ガクン、と大きく機体が揺れる。機体は静止していた
タイガー1
「着艦成功、エンジンストップ。2、お前も決めろよ!」
タイガー2
「タイガー2了解」
このあとタイガー2も無事着艦に成功し、本当の意味で試験に成功しパイロット、管制官、乗組員全員が歓喜した。
この日の空中艦隊の演習は大成功を収め、ハワイへ帰還した。
この演習と同時にアメリカは、有史以来アメリカ以外は1度もしたことがない事を、もう1度、実行する計画が進んでいた。
作戦コード 『CRIB』




