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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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聖獣の寝床

 

「ほんとにっ!? 聖獣さんまだそこにいるかな?」

「いるんじゃないかにゃ。寝床作ってたし、2、3日はいると思うにゃ。昇り階段から1刻半くらい離れたところにゃ。進路はこのまま進めば見えると思うにゃー」


 ナナハが言うには聖獣は一度休むために寝床を作った場合、数日はそこから動かないらしい。

 狙うならば今か、とフィリアは目を爛々と輝かせ、カイオールの方に振り返る。


「……分かってるよ。レウト殿、呼び止めてしまってすまない。それと情報提供に感謝する。礼と言ってはなんだが、これを受け取って欲しい」


 後ろに控えた騎士を呼び、持ってきてもらったのは広場でフィリアが作成した下級気付薬だった。


「これはあそこにいるフィリア師が作成した物なんだが、同じ位階の品物でもこのあたりで出回っている物よりは効果が高いはずだ。今は渡せるような手持ちがこれしかなくて心苦しいが、良ければ受け取って欲しい」

「なるほど、かたじけない。それでは遠慮なく頂戴するとしよう。俺たちはそろそろ町に戻るが、そちらも気をつけてくれ」

「心遣い、感謝する。そちらも道中に気をつけてくれ」


 どちらともなく握手を交わして、ふたりは互いの幸運を願った。


「というわけで、リーダーも話が終わったようだし、アタシもそろそろ行くにゃ。フィリちゃんたちも気をつけるにゃ?」

「はいっ、ありがとうございます。ナナハさんも気をつけて。あ、もし王都に来ることがありましたら、是非『フルハーモニー』っていうお店に来てくださいっ。少しだけしか無理ですけどサービスしますよ!」

「お店をやってるにゃ? 分かったにゃっ。王都に行ったら絶対顔出すにゃー」


 そうして手を振りながらナナハとレウトたち一行はどうやら転移陣を目指しているようで、そちらの方向に去っていった。


「それじゃ、そろそろ行くぞっ」


 冒険者たちが去っていくのを見送って、カイオール率いる一行は目的地を聖獣の寝床に定めた。


 ◇


「そろそろ見える頃ですよね…」

「ええ、そうですね。気を抜かずに参りましょう」


 冒険者と分かれて2刻半、時間は20の刻半になる。本来ならばすでに転移陣まで引き返していなければ、21の刻には宿には付けないのだが、チャンスを逃すわけには行かないとカイオールは仕方がなく強行軍にはしった。

 今から帰るとすれば、13層に登って階段近くの転移陣から帰還したほうが早いだろう。塔の次の層への階段は、『階段』といってもある程度上がると自動的に次の層に飛ばされる仕掛けになっている。

 簡単に言ってしまえばこちらも転移の仕掛けが施してあるのだが、見た目が階段上であるので『階段』と称されているに過ぎない。


「さて、今からでは恐らくフレオたちの部隊を呼んでも間に合わないだろうし…。ラス、伝音器コミュットを出してくれ。帰投命令を送る」


 カイオールが頼むとラスはすぐさま伝音器コミュットを準備する。その速度はやはり何度も訓練された人間の動きだ。


「こちらカイオール。フレオ、応答せよ。フレオ」


 なにやらスピーカーの向こうから慌てて荷物などを降ろす音が聞こえた。それから数追の後、騎士フレオの声が向こうからも届く。


「こちらフレオです。カイオール副団長、ご無事でしたか」

「無事だよ。そっちの状況は?」

「はっ! 今は時間も遅くなりましたので、転移陣前に戻ってきたところです。道中で魔物に何度か遭遇しましたが、これらは撃退。しかしリエイドとブルーミドが軽傷を負いました」


 怪我と聞いてカイオールの顔が険しくなる。軽傷とはいえ、足などに負っていた場合は任務に支障をきたす。


「ふたりの怪我は任務に支障がでるか?」

「問題ないかと。治癒薬も飲ませましたので、任務続行は可能です」

「了解した。今日はそのまま宿に帰還して、宿で荷物の整理にあたってくれ。こちらは聖獣の手掛かりが見つかったからそちらを追う。宿への帰投は21の刻を過ぎるだろう」


 手掛かりを見つけたというカイオールの言葉に、スピーカーの向こうで喜びの声があがる。


「援護に向かわなくてもよろしいので?」

「今からでは間に合わないだろう。それよりも明日に備えてくれ」

「了解しました。それではお気を付けて」


 ノイズと共に通信が終了される。役目を終えた伝音器コミュットをラスが再び荷物袋に詰めて立ち上がった。


「いくぞ」


 一声を合図にそのまま真っ直ぐに進んでいくと、遠目にだが鳥の巣のような物が確認できた。

 離れていてもかなり大きく見えることから、恐らくあれが聖獣の寝床だと騎士たちはあたりをつける。


「あそこに聖獣さんが…」

「ああ、ここからはフィーの役目になるな…」


 緊張で固くなるフィリアの横にネイトが並び立ち、これからの彼女の役目を自覚させた。

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