願わくば死を、そしてうなぎを。
氷川神社を後にして、僕らは小江戸の町を歩く。ふと、凛花が僕に質問を投げかける。
「ねぇ、翔太は何にした?」
「100円玉。」
「違うよ、願い事。」
「だろうね。」
「で、何にしたの?」
「この旅が、よい旅になりますように。」
「なるわけないのにね。」
「そりゃあそうなんだけどね。それでもやっぱり、願いたくもなるよ。」
「それもそう。」
「それじゃあさ、凛花は何にしたの?願い事。」
「ちゃんと死ねますように。」
「なるほどね...。」
「ごめん。気分悪いよね。そんな事言われたら...。」
「別にいいよ。そりゃあいい気分なんかじゃないけどね。」
僕は言葉を継ぐ。
「でもね。凛花にとってそれが救いなら、僕は何の後悔もないよ。だから今は楽しもうよ。最後くらい、幸せになってもいいじゃんか。」
「かっこつけちゃって。」
「かっこつけるさ。彼女の前だからね。」
「そりゃどうも。」
「つれないね。」
そんなことを言いながら歩いていると、ふと芋けんぴのお店が目に留まった。
「ねぇ凛花。」
「ん?何?」
「知ってる?芋けんぴの名前の由来。」
「ううん。知らない。」
「実はね。高知県には芋けんぴの由来になったと言われる、ケンピっていうお菓子があるんだよ。それで後から高知県にサツマイモが渡って、芋のケンピが生み出されて、芋けんぴと呼ばれるようになったんだ。」
「ふーん。翔太ってさ、昔から結構物知りだよね。」
「新しい事を知るのが好きだからかな。まぁ、知ってたところで意味のあるものじゃないんだけど。」
「別にいいじゃん。意味なんかなくても。それにさ、何が意味のあるものかなんて、人それぞれだと思わない?」
「まったくその通りだね。例えば僕らにとっては、死ぬことにだって価値がある。」
「それが最適解なだけでしょ。人生という負の遺産を捨てて、ゼロになるだけ。」
「現実なんか見なくてもいいじゃない。見たってどうにかなるものでもないんだからさ。」
「確かにね。」
「ところで凛花、そろそろお腹が空いてくる頃だね。」
「そうだね、私もそろそろかなと思ってた。」
「せっかく川越にいるんだし、うなぎがいいな。凛花はどう?」
「異議なし。」
「決まりだね。」
「うん、決まり。それでお店は?色々なところがあるけど。」
「有名どころだと、いちのやなら行ったことがあるよ。」
「美味しかったの?」
「もちろん。」
「じゃあそこにしよっか。」
「それじゃあ早いとこ向かおうか。これから更に混むだろうからね。」
「旨いものは宵に食え、ってやつだ。」
「だね。」




