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二章 交わる絆 八話











8、布衣の交わり








木蓮は今、大急ぎで後宮に向かっていた。


采女所の仕事としてではない。第3公子風蘭から、呼び出しを受けたのだ。






後宮の管理を執り行う中部管轄采女所。それが、今の木蓮の所属する仕事だった。


けれど、出仕初日、彼は出会ってしまった。




自分と同じ志をかざす王族に。


それも、王位を継ぐことのできる地位にある正妃の公子、第3公子に。




出会った当初、木蓮は風蘭が王族とは知らず、いろいろと暴露してしまった。王政を司る王族に、よりによって現状の王政を非難し、朝廷を変える、などと豪語してしまったのだ。






しかし、風蘭はそんな木蓮の態度を気に入り、出会った次の日も、その次の日も、木蓮が仕事を終える夕刻に必ず風蘭からの呼び出しがあった。


初めの頃は風蘭に対し恐縮していた木蓮だったが、風蘭がその態度を嫌い、


「俺のことは風蘭、と呼んでくれていい」


と、呼び方まで強制されたので、彼はそれに従わざるを得なかった。






いや、実際は、うれしかった。


相手が王族とはいえ、歳の近い者と話すことも楽しかったし、なにより風蘭は現状の朝廷を嘆いており、それが木蓮の理想とうまく重なった。




だから、第3公子である風蘭を、ふたりきりのときだけとはいえ、「風蘭」と親しく呼んで、互いの考えをぶつけあえることに、ふたりとも刺激を受け合っていた。


ふたりきり、とはいえ、風蘭のそばにはいつも連翹という傍付がいたが。けれど、彼は寡黙で、木蓮と風蘭が話し込んでいるときには、決して横から邪魔をするようなことはしなかった。








風蘭と木蓮は、この2ヶ月ほど、互いの理想をぶつけ合っているだけではなかった。


風蘭の言う、「民部の怪しい資金繰り」というものを探っていたのだ。


たしかに、彼に民部の資料を見せてもらったが、項目としていくつか首をかしげるものがある。




素人の木蓮でもわかる怪しい項目が2つ。そして、風蘭はそのうちの1つが特に気にかかるようだった。


「でも、この項目を詳しく調べるには、やっぱりもっと官吏たちの証言がいるんだ」


途方にくれる風蘭にとって、木蓮の存在は天の助けのようだった。木蓮の兄ふたりが、というのが正確かもしれないが。




木蓮の兄ふたりは、その怪しき民部に所属している。


木蓮は兄たちに迷惑をかけない程度に、その詳しい話を聞きだした。何人かの民部所属の官吏を紹介もしてもらった。


紹介してもらった官吏は、本当に下っ端の若者たちで、風蘭を見ても彼が王族だとは知りもしなかった。単に同じ下っ端官吏だと勘違いし、彼らは恐れ多くも風蘭に親しげに、色々と民部のことを暴露してくれた。






さすがに部外者の木蓮は、この一件に深くは関われなかった。風蘭も木蓮の立場を考え、強制はしなかった。


それでも時々、自分の考えをまとめるために、風蘭は木蓮を後宮の彼の自室に呼び出した。誰かに意見を聞いてもらうだけなら、傍付の連翹でもいいはずなのに、わざわざ木蓮を呼び出すことに、木蓮自身は頼りにされているようでうれしかった。






初めて出会った同志なのだ。大事にしたい。






風蘭と話せば話すほど、彼がいかに今の王政を変えたいと思っているかが伝わってきた。


そして、下っ端の木蓮は未だ会ったことはないが、朝廷を取り仕切る執政官、蠍隼 蘇芳のことを、風蘭は心のそこから嫌っているようだった。








後宮の奥の奥にある公子たちの室がある棟に近づくと、いつものように連翹が彼を迎えにきてくれていた。


「お待ちしておりました、木蓮殿」


申し訳なさそうに、けれどうれしそうに連翹は木蓮を手招いた。


「仕事のあとでお疲れなのに、申し訳ありません」


木蓮よりもはるかに年上なのに、連翹は木蓮に対して見下すことなく、むしろ丁重に、敬意すら示して接してくれていた。


「いいえ。僕も風蘭と話すのは刺激になって楽しいですから」


「坊ちゃんも木蓮殿とお話しするのをいつも心待ちにしておいでです。・・・・・・まぁ、今日はちょっと様子が違うかもしれませんが」


少しイジワルそうに笑う連翹の言葉の意味がわからず、木蓮は首をかしげた。






連翹は、決して馴れ馴れしい態度をとることはなかったが、不思議なことに、風蘭のことを「坊ちゃん」と呼んだ。


特におかしいわけでもないが、だが、16歳にもなる青年にまるで幼子のように「坊ちゃん」と呼ぶのは、なんだか違和感を感じた。


しかも、風蘭が朝廷にいる間は、「若君」と呼ぶにも関わらず、だ。






木蓮は歩きながら、もう一度連翹を仰ぎ見た。彼も視線を感じたのか、木蓮に視線を向けた。


「いかがされました?」


「・・・・・・いえ・・・」


「・・・最近、後宮の回廊がとても綺麗なんですよ」


突然、連翹が話題を変えてきた。木蓮もつられて回廊の床を見る。たしかに、よく磨かれている。




「以前は埃さえ舞っていたのに、ここ最近、後宮内のあちこちの掃除が行き渡っているのです。仕事熱心な女官が後宮にはいったのかもしれませんね」


木蓮は後宮を始め、女官の取締りを行う采女所に所属している。その「仕事熱心な女官」を探すこともできるかもしれない。


「別に、その子を昇格させてくださいと言っているのはありませんよ」


少しあわてたように、連翹が木蓮の考えを見透かして言い加えた。




「ただ、うれしかったのです。後宮内の女官もまた、貴族であるがゆえに地位と権力を望む。掃除などの水仕事が中心な水女は、後宮に住まう王族の方々となかなか関われないので、仕事を放棄する女官が多かったのです」


木蓮も、仕事をしようがしまいが、コネ次第で女官の昇格ができることを知っている。水女は、ただの最初の通過点でしかないのだ。


「だからこうして、地位や権力だけにとらわれることなく、自らの仕事をきちんとこなす女官が、この後宮にいるのだと思うと、うれしくなるのです」


にっこりと笑顔を向けて、連翹は言う。






「連翹さんも・・・・・・地位や権力にとらわれてはいないのですか・・・・・・?」


言ってから、木蓮は自分があまりにも直接的に言い過ぎたと自覚した。


「あ、いえ、その・・・・・・」


あわてる木蓮に、連翹はやさしい笑みをもらした。


「わたしには、地位も権力ももともとありません。わたしはただの平民ですから」


「え・・・・・・?」


風蘭と出会って、気付けば2ヶ月は過ぎている。毎日のように後宮に行き、毎日のようにこうして連翹に向かえられたが、そういえば、木蓮は彼のことをよく知らなかった。






もともと、木蓮は梅と一緒にいるときも、特に彼の素性が気になったことはなかった。


連翹に関しても、風蘭が信頼しているのはわかっていたし、なにより彼に似つかわしくない短い丈の剣の鍔に描かれたキキョウの花が、先王の妃の信頼を得ているなによりの証拠だった。




だから、木蓮は連翹に対しては、どこかの分家貴族の人なんだろう、程しか考えていなかった。まさか、11貴族しか許されない朝廷の後宮に、平民が、キキョウの花を持つ平民がいるとは思いもしなかったのだ。






「昔、わたしは双大后に助けていただいたのです」


先王の妃、双 桔梗は、双貴妃から双大后に呼び名が変わった。連翹は、困惑する木蓮にそれだけ言うと、目的の室にたどり着いたのでそれ以上は何も言わなかった。


「坊ちゃん、木蓮殿をお連れしました」


「入れ」


室の中から、いつもより元気のない風蘭の声が聞こえてきた。心配しながら、木蓮は風蘭の室に入った。




「風蘭?」


「木蓮・・・・・・。俺はどうしたら・・・・・・いや、その話は後だ」


風蘭は、木蓮の後ろに立っていた連翹が含み笑いをするのを見て、話題を変えた。


「連翹、おまえは出て行け」


「・・・・・・かしこまりました。室の外に控えておりますので」


いつになく連翹に冷たい風蘭の言葉にびっくりすると同時に、その連翹が笑いをこらえるかのように告げて室を出て行ったのを見て、木蓮は戸惑った視線を風蘭に送った。


「あいつは、おもしろがっているんだ」


ぷりぷりと怒りながら、子供のように風蘭は言う。


「なにを?」


木蓮は、風蘭とふたりきりのときは敬語を使わない。風蘭がそれを望んだからだ。


「・・・・・・その話は後だ」


なぜか照れるように顔を赤くしていた風蘭が、突然きりっと表情を引き締めた。






「木蓮の兄上たちが紹介してくれた民部の者たちと、少し話をした。やっぱり、というべきか、この項目にも濁りがありそうだ」


とん、と見慣れた書類のある項目に、風蘭が指を落とした。


「下っ端だからよく知らないだけ、かもしれないけどな。だけど、もっと上の位の持つ民部のやつらに聞けば、霜射長官に筒抜けになるだろうな・・・・・・」


「次官に聞いてみては?」


「民部次官か?たしか・・・・・・蟹雷家の人間だったな」


「高官同士では、不正ももみ消しているかな・・・・・・?」


「可能性はある。長官のやっていることを、次官が知らないわけないしな」


ふと、木蓮は出会ったばかりの風蘭に言われた言葉を思い出した。






味方が必要。


多くの味方が。


そうしないと、朝廷を変えることはできない。






「味方・・・・・・。多くの味方か・・・」


「木蓮?」


「風蘭の調査を裏付けるには、多くの味方が必要でしょう?でも実際、風蘭の考えに同調する人間は、探せば意外と多いような気がするんだ」


「そうか・・・?でも、俺が政治堂でいくら叫んでも、誰も何も言わないぞ?」


「それは、高官だけしか集まらないからだよ。もっと下位の官吏だったら、風蘭に同調してくれるかも・・・。それを示せることができたら・・・・・・あ!!」


木蓮は、ぱっと顔を輝かせた。


「どうした?」


風蘭が驚いたように、木蓮に問いかける。木蓮は、自分が今思いついたことがこの上なく素晴らしい案だということを、もう一度頭の中でかみ締めたあと、興奮気味に口に出した。






「署名だよ、風蘭!!署名運動をするんだ!!」


「署名運動?」






風蘭には、何のことかわからない。


無理のないことだ。朝廷に、万人の意見を取り入れる署名運動なんて必要ない。


高官が決め、執政官が判決を下し、王がそれを容認する。


そこの過程に、いくら多くの反対があろうとも、高官の、執政官の決めたことに文句を言える貴族はいない。


みな、おのれの身がかわいいからだ。






けれど、風通しのいい統治を行っていた、桃魚 華鬘が治める春星州で育った木蓮は、署名運動の力を知っていた。


ひとつの案件に、多くの民が賛同し、または反対し、その意見を多く集め、それを州主に訴える。州主は、その署名と嘆願書を見て、これだけ多くの民がそう望むのなら、と必要ならば、己の考えを改めた。




そう、署名は、その証拠になる。


自らの意見を、多くの者が賛同していると証明する、動かざる証拠となる。






「署名運動とはなんだ?なにか運動するのか?」


「ひとつの案件に対し、多くの者がその案件に賛成している、と署名をもらうんだ。署名をもらうことによって、多くの者がその意見を支持していることの証明になる」


「だめだ」


木蓮が目を輝かせて説明すると、即座に風蘭がそれを否定した。




まさか否定されるとは思ってもいなかった木蓮が、瞠目する。


「だめ?なぜ?」


「署名、するんだろう?」


「うん」


「署名したものを、蘇芳のやつに見せるんだろう?」


「そりゃ、見せないと、これだけの人たちが味方していることを示せないし・・・・・・」


「じゃぁ、だめだ」


「なんで?!」


木蓮は、風蘭が頑なに拒む理由がわからずに、すがるように問いかける。風蘭は厳しい表情のまま、首を横に振った。


「民部や他に所属するやつらの名が書いたものを、蘇芳のやつに見せたらどうなる?ヤツに歯向かう者たちの名が連なった書類を見せたら。・・・・・・あいつは、その者たちをひとり残さず廃するだろう」


悔しそうに吐き出す風蘭の言葉を聞いて、木蓮もすぐに気付いた。


「俺は、誰かを犠牲にして、民部の不正を暴きたいわけじゃない。だから、そんな危険なことはできない」


「そうか・・・・・・そうだね、ごめん。僕が浅はかだった・・・」






穏やかに統治されていた春星州とは違う。


ここは、朝廷は、26年もの長い間、王に成り代わって執政官が独裁していた戦場なのだ。


そこに歯向かうには、退官すら覚悟しないといけない。


いや、官吏ひとりの退官ならまだいい。


もしかしたら、その官吏一族にまで、なにかしらの報いが生じるかもしれない・・・・・・。






「・・・でも、木蓮のおかげで、結構な証言はとれた。礼を言う」


「だけど、このままでは何も前には進まないよ?」


「もう一度、民部長官と話をしてみる。ふたりきりで」


「ふたりきりで?」


落ち込む木蓮をなぐさめるように言った風蘭の言葉に、彼は問い返す。


「あぁ。政治堂で話せば、また事は大きくなるし、蘇芳の邪魔も入るしな。直接霜射長官と話をしてみることにする」


くるくると『証拠書類』を丸めながら、風蘭はうなずいた。


「でも、署名運動とは、いいものを聞いた。蘇芳が執政官じゃなくなったら、ぜひ取り入れたいな」


満足そうにうなずく風蘭を見て、木蓮は思う。






やはり、風蘭こそ、王にふさわしい。


満足そうにうなずくその風蘭の横顔も、王の顔だ。


けれど、彼はそうしなかった。


彼の長兄、芍薬公子にその役割を譲った。


執政官、蠍隼 蘇芳と真っ向から戦うことができるのも、風蘭だけだというのに。






「どうした、木蓮?」


「いや・・・・・・。・・・そうだ、蠍隼執政官は、一族当主ではないんだよね?」


この朝廷、言ってしまえば星華国を独裁的に操っている執政官だが、11貴族当主にのみ許される官位、星官はどの官位とも両立できない。


「そうだ。あいつは分家の人間だ」


「じゃぁ、蠍隼一族の当主に、執政官を諌めてもらうことはできないの?」


「それは・・・・・・」


言いづらそうに、風蘭が言葉を濁す。木蓮には、風蘭のその態度の意味がわからない。


「・・・・・・蠍隼一族の当主は若いんだ」


「執政官より?まぁ、そうかもしれないね。彼が26年間執政官をしていたということは、相当の年齢だろうし・・・・・・」


「いや、本当に若いんだ」


はぁ、とため息をついて、風蘭は言った。




「蠍隼一族当主は、俺たちと同じ、16歳だ。まだ、当主になりたてだ」


「・・・・・・え?」


星華国では、16歳となって初めて成人として扱われる。つまり、蠍隼一族当主は成人なりたて、ということか。


「それまでは、しばらく蠍隼一族当主は空位だった。前当主の奥方が、『形だけ』務められていたが・・・・・・。まぁ、蘇芳が握っていたんだろうな」


自嘲気味に、風蘭は言い加えた。そして、鋭い視線を木蓮に向ける。


「蘇芳のやつを諌めようとした当主は、この26年間何人か、いた。前当主もそうだ。だが・・・・・・『不思議なことに』、蘇芳を諌めた当主はすぐに亡くなった」


その意味を、木蓮はすぐに理解する。自分の顔が青ざめているのが、自分でもわかる。


「そんな・・・・・・こと。それを、王は、許していたのですか・・・・・・?」


思わず、風蘭が王であるかのように、敬語で問いかけてしまう。先王芙蓉に問いかけるように。


風蘭は悔しそうに答える。


「王は・・・・・・朝廷は、一族の問題にまで介入できない。一族の誰かから要請があれば、もちろん是正することはできる。・・・・・・だが、蠍隼一族からは何の要請もなかった。何人当主が怪死しようとも」


もしくは、もみ消されていたか。






「そんな人を相手にしようと・・・・・・しているの・・・?」


「怖かったら、木蓮は手を引いていい。だが、俺は戦う。俺には保身しなければならないものはなにもない」


まっすぐに、理想をみつめる風蘭。木蓮もまた、そのそばにいたかった。


「・・・大丈夫。僕も一族の3男だから、何も怖いものはないよ」


ふと、木蓮は思い出す。


「蠍隼一族って秋星州だよね?州主は・・・・・・女月一族だっけ?彼らは、執政官に何か言われたりしないのかな?」


「・・・・・・そういう・・・報告は・・・ない、みたいだ・・・」




急に、風蘭が顔を赤らめて答えた。何か体調に異変があったのではないかと、木蓮はあわてて風蘭の顔を覗き込んだ。


「どうしたの、風蘭?大丈夫?」


「・・・・・・大丈夫だ。・・・・・・実はこの前、女月家の姫に、会ったんだ」


先ほどの王のような顔つきとは一変して、迷子になった子供のような顔で風蘭は突然、木蓮に話し始めた。


後宮の庭院で出会った、女月家の姫のことを。








「お妃候補か・・・・・・。たしかに、3人の姫君が後宮にいるとは聞いているよ」


すべての話を聞き終えて、采女所に働く官吏として、木蓮はそう答えた。


「女月家の姫君もいたね、そういえば。・・・・・・それで、風蘭はその紫苑姫に、恋しちゃったんだね?」


「恋?!」


ばっと風蘭は顔を上げて、木蓮を凝視した。


「違うの?」


「・・・・・・いや、わからない。わからないんだ、ただ、紫苑が姫だって・・・・・・芍薬兄上の妃候補だって知って・・・驚いて・・・」


「がっかりした?」


笑いをこらえていた連翹の気持ちがわかる。木蓮も、にやにやしそうになる表情を引き締めて、風蘭に問いかけた。


「・・・・・・あぁ・・・」


小さく小さく、風蘭は答えた。






先ほどの執政官と戦うと言った彼とは別人のようだ。






「じゃぁ、今度、僕、その紫苑姫に会ってみるよ。彼女と話をしてみるよ」


「できるのか?!」


「できなくはないと思うよ。僕の所属は采女所だからね」


後宮全般を取り締まる采女所。


現状を鑑みると、風蘭よりも木蓮のほうが妃候補の姫君に近づくことができた。


「紫苑姫じゃない姫が、芍薬様のお妃になられるといいね」


紫苑姫には申し訳ないが、木蓮は本心からそう告げた。




木蓮のその言葉に、風蘭は「うん」とも「いや」とも言わずに、ただうつむいた。


そんな彼が、急にまた近くに感じられて、木蓮は思わず笑みをこぼした。






室の外で控えている連翹も、そんな風蘭をかわいいと思ったのかもしれない。




帰り道でまた連翹と連なって歩くことになる木蓮は、この気持ちを連翹と共有することに、なんともいえないくすぐったい思いを抱いていた。














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― 新着の感想 ―
[気になる点] まさか否定されると思っていなかった木蓮が、瞠目する。という一文ですが、瞠目とは決して予想外の事態に目を白黒させる様を表す言葉ではありません。瞠目とは感心して目を見張る様子で使います。度…
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