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第38話 鉄道網

将来の遺恨を残さないためにも、この戦争で中国を滅ぼしたい。もちろん、簡単にできることではないのは承知の上だ。


「では秀則様は、どこまで進軍なさるつもりなのですか?」

「北は西安、延安。南は成都、重慶までだ。そこまで進軍して領土を切り取れば、もう中国は国では無くなるからね」

「……中国側が徹底抗戦の構えなので、共産党軍の本拠地である延安はいずれ攻撃しないといけないと思います。全土占領を早めるのであれば、他にも上陸地点を増やして戦線を西に押し上げ、戦線の一本化をするのが先決かと」


愛華さんにどこまで進軍するか聞かれたので、西安、延安、成都、重慶の4都市を指定する。最初は河北、河南、湖北、湖南のラインまで占領出来たら良いな、って程度だったけど、中国の西側、四川までの進軍をするかもしれない。というか彩花さんも共産党軍の音を上げさせるには、どの道延安まで進軍する必要があることには気付いていたか。


問題は、国民党がどれだけ抵抗するかだな。早期に降伏してくれれば成都、重慶までの進軍は楽だけど、祖国が滅びるぐらいなら戦って死ぬ、という人間が多かった場合、日本軍の被害はそれに応じて増える。


日本軍に関しては徴兵を開始しても火薬や砲弾の生産量の方が厳しいことは把握しているから、弾薬を潤沢に使っても大丈夫な限界のライン、250万人を目安に動員を開始。また、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドに駐屯中の常備軍も可能な限り中国に送り込む。


そもそも、前回もインパールの防衛のためだけに80万人以上の人を送っているし、ダッカ侵攻の時は150万人ぐらい使っているから250万人までなら余裕で動員できる。今の日本軍の異質さが表面化してきたな。


「インド方面への抑えは、現状50個師団ならすぐに用意できるんだよね?」

「はい。それも中国へ回しますか?」

「いや、インド方面だけは警戒しておいて。杞憂であれば良いけど、本気でイギリスがビルマを侵攻するなら50個師団でも防衛としては足りないし、備えだけはしておくよ」


これでイギリスが攻めて来たらヤバいってレベルじゃないけど、それでも常備軍合わせて50個師団程度ならすぐにビルマへ配置出来るから大丈夫だと思いたい。少なくとも、これで数カ月は耐えるはず。


……おそらく鉄道網がパンクするだろうから、国民も総力戦を一瞬だけでも体験できるかもしれない。鉄道網を管理する六さんや船で兵や物資を運ばないといけない七海さんは大変な目に合うだろうし、後で褒美に階級でも上げさせよう。


「一応、鉄道課って陸軍の一部なんだよね?鉄道課で1番上の六さんの階級ってどれぐらい?」

「六様の陸軍での階級はそれほど高くなかったはずです。確か、中佐ですね」

「……中将ぐらいまで上げるか。鉄道課って呼び名が悪いから、何か別の名前に変えて、部門自体を大きくしてくれる?」

「秀則様が階級や立場を強引に引き上げさせる時は、それが重要なことだとわかっています。なので四階級特進ぐらいは大丈夫でしょう」


愛華さんに六さんの階級を聞いてみたら中佐だった。年齢にしては良い方なのだろうけど、鉄道の全てを管理しているにしては低い気がするから引き上げさせよう。そして段階的に六さんの階級を引き上げさせるように言おうと思ったら、愛華さんが一気に四階級特進させるとか言ったので驚いて言葉が出なかった。


……まあ、嫉妬とかその他諸々の問題が起きないなら大丈夫、か?六さん自身が優秀なのかわからないけど、今までに大きなトラブルは起きていないようなので問題は無いと思いたい。


鉄道課という枠が小さ過ぎる気もするので鉄道課自体を大きくして、幾つか鉄道課の中に部署を作り、組織の大型化を行いたい。推測だけど、大規模な動員の時には生鮮食品や日用品の物流が止まっているはずだ。軽く脳内で計算しても通常の運行は止めないと無理な速さでの動員だったし。


「次の動員の時には物流を止めないで動員する計画を完成させてから、動員を開始するように言ってくれる?」

「それは、国民の生活に支障が生じないような動員を遂行するということですか?」

「……やっぱり無理か?」

「いえ、時間をかければ可能でしょう。六様や将寛様に通達を出しておきます」


愛華さんが国民の生活に支障が生じないような動員は時間をかければ可能、と言った瞬間に、今までは動員の度に国民の生活には支障が出ていたんだな、と把握した。まあ5月中旬と6月上旬の2回、本土では30万人分の人や軍需品が一気に移動したんだ。軍が優先なら、支障が出ない方がおかしい。それを最低限にするため、やはり鉄道の管理をする組織は大きくするべきだろう。


「7月の上旬までには、各戦線に追加で50個師団が割り振られるんだよね?そのタイミングで本土に戻るよ。

日中戦を体験して、足りないものはだいたいわかった。やっぱり、自動車や飛行機は欲しい」

「自動車ですか。ガソリンエンジンの開発は目立った成果がありませんので、その……」

「俺が技術開発に関わっても大した差なんて無いことは理解しているけど、それでも中国の奥地まで行くなら必要だから関わりたいんだ。

……長期戦が確定したし、いつまでも俺がここにいると軍団長の秀一郎さんがやり辛そうだし」


7月の頭に本土に帰る予定を伝えると、親衛隊にホッとした雰囲気が漂った。やはり戦地では気を張り詰めていたのだろう。俺が護衛役だとして、護衛対象が戦地に赴くような人だったら心労は募りそうだ。2ヵ月間という短い期間だったけど、実際に従軍して近代戦を経験し、足りないものや後回しにしても良い分野はある程度把握したから無駄では無かった。


これで本土から指示を出しているだけだったら、きっと何で時間がかかっているのかも理解出来なかったかもしれない。……北京から延安も、1000キロぐらいはあるだろう。クリスマスまでに戦争が終われば良いな。

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