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第72話「疑心暗鬼」



一方、ノイム達は屋上から玉座を目指していた。そこにローゼリアがいると踏んでいたが、そこはもぬけの殻。

代わりにいたのは大勢のプレイヤーだった。


ソウル、タクト、セシィの範囲攻撃で敵のHPの大部分を削り、テロルの氷魔法で足止め。

ノイムの爪装備による猛毒付与で寸止めの瀕死にさせて、敵を昏倒させていく。HPが1になれば毒は消滅する。


もちろん敵側にも僧侶と旅芸人、この2種の回復職がいる為、そちらを優先して倒す。


あらかた片付いて、眠っている魅力解除のアイテムをプレイヤー達に使用し終わった、その時だった。






『皆城から出て!!!早く!!!!』


「ヒメカツちゃの声なのだ!!」


そうノイムが声を上げたのと同時に、地面が激しく揺れ始める。

それと共に噴き出す緑の閃光。


「外出た方がいいんじゃないか?!」

「けどこの人達をこのままになんてっ!」


タクトとセシィが慌てた様子で意見を交わす中、ソウルは顔を歪ませて怯えるノイムに気がついた。


「ノイムちゃん!どうしたんだ!?」


「光、あの光、が」


上空を雲に覆われた薄暗い城下町と、城を隔てるように。

城の窓枠から漏れ出す蛍光緑の輝きが、地響きによって崩れた外壁から溢れ出す様が。

ノイムの瞳に映り込んでいた。



「……回復させますよ、《リベヒール》」


冷静を取り戻したテロルのその一言で脈動を打つようにプレイヤーの傷口が輝く。


僧侶を優先して叩き起こし協力を促すその姿は歴戦の戦士そのものだった。

タクトとはまた一味違うゲーマーとしての攻略姿勢が垣間見える。


「ノイムさんが視認出来る程の異変が起こってしまった以上、もう城からの脱出は無理と私は判断します。ノイムさんは《鑑定》して、高レベルの回復職を今から私が起こす人に教えて下さい」


「…わかったのだ。にいさま、マッマ達も手伝って欲しいのだ」


ノイムが《鑑定》を使って気絶したプレイヤーの中から僧侶と旅芸人を見つけ出す。


「…僕は、何を」

テロルが起こした赤い短髪のオーガが起き上がる。


たわしはにいさま達に近くに持ってくるようお願いして、その中から高いレベルの人間を今起きた彼に回復してもらうように頼んだ。


「洗脳を解いてくれてありがとうございました。もう2度と、あんな目になんて遭いたく無いですね。


《エンプティヒール》さぁ、起きて…まず忌々しい記憶は一旦置いておいて、この方と協力しましょう。貴方も手伝って下さい」


魅力されている間も意識や記憶あるようで、事情を説明しなくてもスムーズに受け入れてもらえた。



「皆ッ!!!!」



玉座の間の扉が勢いよく開いたかと思うとワードさんがそこにはいた。


ついでに。


「あ!!はるなんちゅの犬!!!」「グッドだ苔玉ァッ!!!」


うーん素晴らしいツッコミ。


ボーフゥの町で知り合った懐かしい黒髪ロングのオーガがそこにはいた。


「地下にいたローゼリアがヒメカツを使って城に魔術を仕掛けやがったんだ!急がないとヒメカツの命が!!」

「…俺はワードさんの魔法を阻止しなかったからローゼリアに確実に教育されちまう。……もう、あの人についていけねぇ!」


その瞬間グッドの足元に展開された魔法陣が浮かぶ。


おどろおどろしい邪悪なオーラを纏ったその呪文はグッドにまとわりついて、霧散した。

「これ、即死魔法の、」


グッドがそれを自覚した瞬間発動者を探しながら一歩後退する。


先程蘇生を頼んだ男がゆらりと視線を合わせる。


「……不発か。……ローゼリアの犬、反抗した僕達に汚れ仕事は押し付けて、ローゼリアに諂う貴方の事を僕は信じません。」


咄嗟にノイムは《鑑定》で男のステータスを覗く。


プレイヤーネーム:ピースター

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種族:オーガ

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メイン職業:僧侶 Lv100 サブ職業:針子Lv45

ーーーーーーーーーーーーーーー

HP 741 MP 458

ーーーーーーーーーーーーーーー


急いで確認してたから、レベルまで確認していなかった。


彼は、テロルと同じ、最高レベル100。

この男は、敵に回すのは得策じゃないのだ。


「それでいいのだ、ピースターさん」


「……プレイヤーネームを教えた覚えがありませんが」


「たわし、一回死んでしもたのだ。その時に新しいスキルをもらったのだ。《鑑定》というスキルなのだが」


「……貴方は何を言っているんですか。僕も死んでますが、そんな特典なんてありませんでしたよ」


「へ……?えっ、身体と魂が数式や文字の集合体みたいにこうブワァ〜と分解されて再構築されてないのか!?」


「それはありましたけど……。」


おかしい。この感じなら、新しいシステムに組み込まれてる筈なのに。


「貴方が死んだのは事実のようですが、嘘をついてもロクな事になりませんよ。僕を起こす直前にステータスでも見たのでしょう?

とにかく、グッドさんには従いません。

こんな土壇場で嘘をつくような人間も信頼出来ません」


「嘘じゃないのだ!……たわしにそれをするメリットは無いとだけ伝えさせてもらうのだ!とりあえずパラディール城やばいから協力求むのだ!」


「……危ないと思ったらすぐ離脱させてもらいますから、はい、これが妥協案です。

さぁ、貴方も、起きて」


ビジネスライクな冷たさにムッとしつつ、このパラディール城で最高レベル100の僧侶が死ぬような要因なんて、大体想像がついた。


恐らく、ローゼリアは反抗的なプレイヤーを処刑したのだ。

その魅了の魔の手を使って。


だから、彼はローゼリアの言いなりになって正気を保ったままを維持出来たグッドの事をも憎んでいるのだろう。

そして嘘つきという人間もまた、彼の地雷に違いない。


ツードで何が起こったのか。それを話す時間は、たわし達に残されていなかった。



話を通して面白かったと思って頂ければ高評価どうぞよろしくお願いします!

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