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第63話「新たな風」



「っ……、クイーンは……」


爆発が鎮まり煙が晴れてくると、クイーンの残骸が露わになる。


そこには焦げて黒ずんだイバラの塊が鎮座していた。


周りにいたアイヴィ達も奇声を発して萎れていく。


手下達が干からびたあとホロホロと脆く崩れ去るその様は、まるで桜のような儚さがあった。



「念の為イバラを完全に焼くぞ」


警戒しながらリュウが魔術師達に指示を出す。


クイーン達がいなくなった広間は、とても広々としていて明るく美しかった。


屋根にあたる部分には天窓が備えられており、ステンドグラスから差し込む彩光が薄暗かった室内を明るく照らす。


壁にはエジプトの壁画のような複雑な紋様にオリエント式をプラスしたような、古代の美しさが煌めいている。


一部の空いた窓から吹く風がクイーンやアイヴィ達の残骸を桜吹雪の如く巻き上げる。


紫ともピンクともつかぬその嵐は陰鬱だった空間を完全に払拭したのだ。




「綺麗、なのだ」




荘厳な雰囲気に飲まれそうになったその時、シャラリと、耳につけられたエーテルメモリーが音を鳴らした。


「動力室に、いこう」


にいさまに抱えられたまま、そう呟くとにいさまはこくんと頷いた。


「俺もついていくからね」


たわしを抱かかえたまま、にいさまが動力室への移動を開始する。

クイーンを退治した事で隠されていた扉がブルーヘブンアイヴィの残骸を前に現れたのだ。


花弁のように散ったモンスターのカケラをにいさまがドアノブから払い、手をかける。




薄暗い室内が広がっている。

広間への扉を閉めれば瞬く間に何も見えなくなってしまうだろう。


中に進んでいくと、一際強い風が後ろから吹き付けてきた。


「っ扉が」


薄紫の残骸が押し寄せてくる。

視界が光と薄紫に覆われて、そして。

手をかける前に扉が閉まってしまった。


「ノイムちゃん、ごめん」

「しゃーなしなのだ……ん?」


片耳につけられたエーテルメモリーが蛍光石のような光を帯び始める。


耳から光を増し始めたピアスを外して部屋の奥にかざす。


エーテルメモリーの光と同じ光彩を持つ石が奥にキラリと輝いたのが見えた。

ピアスが吸われるような感覚があったのでそのまま石の方角に進むようにいさまへ伝える。


近づけば近づくほど輝きが増していく。

引き寄せる力も強く。


ぐぐっ、ぐぐぐっ


「あにゃっ」


持っていられなくなるほどの力で引き寄せられたピアスが手元から離れてしまった。


ピアスは呼応して輝いていた石の上の飾り爪に金具をかけると、メモリーから発されていた光を砂のように落とし始めた。


石の中へ輝きが零れ落ち、吸い込まれる。



砂のように石の中で動き回るその様は、銀河の星々のようだ。

星が増え、瞬き、そして他の光とは比べ物にならない大きな粒が落ちると、石座が動き出した。


今度はピアスが下になるように石座が回転した。


「砂時計みたいなのだ」

「凄い、綺麗だね」


月並みな感想しか出てこないが、CGとはまた違う不可思議な輝きを見て純粋に感動した。



今度は石座から星が流れ出す。

星と共に間隔を開けて産み落とされたのは3つの大きな粒だ。


最後の星々が落ちた瞬間、アナウンスが聞こえた。


「ーーーエーテルメモリーの同期完了、バグを修復、システム再構築。箱舟を起動します。」



ピアスと石座の間に光球が生まれ、大きくなっていく。


ピシャッと光が広がり、眩しくて目が開けられなくなりにいさまにしがみつく。








「ノイム、よく、やった」



青年とも少年ともつかぬ声がたわしの耳に入る。


目を薄く開けると、動力室のその向こうに新しい空間が出来ていた。


そこには複数のモニターと、スタディグ像。

そしてウツボカズラのような植物群と、水槽の中に入ったスタディグの姿があった。


外から光が差し込んでいて、外の景色が見えた。今日の砂漠は砂嵐もなく晴天な気候らしい。


「スタディグ、いるのか?」


水槽に向かって声をかけると返事が返ってきた。


「あぁ、まだ水槽には戻れないがな」


「……?あ、こっち?」


座っていたスタディグ像がのそりと動き出し、たわし達に手を差し出す。


魚人マーマンの子よ」


「は、はい」


「ノイムを頼んだぞ」


いきなり動き出してビビっているにいさまとスタディグが握手を交わす。


「スタディグ、これからどうするのだ?」


「とりあえずこの都市……いや、箱舟を完成させようと思う。大都市アウリウムや小都市ハコナカも動かす事になるから、その時になったらエーテルメモリーで連絡する」


「動か……え?え?おいスタディグ、まさか箱舟って……?」


「このフィンクス大陸の都市が箱舟のパーツだな」


「とんでもないスケールなのだっ?!」



ピアスを返してもらってからスタディグ像と一緒に動力室から出てくると、キララで捕まっていた全員が広間に集まっていた。



「外は安全なのか」


リュウさんが代表としてこちらへ近づいて来る。


「あぁ、クイーンの影響で魔導兵がバグを起こしてしまった事、深くお詫び申し上げる。

これからの生活についてだが、ハコナカで植物の改良育成、アウリウムで食糧になり得る魚の放流をしてくれると助かる。

キララの博物館の書物を見たいならルトテッカ語も教えよう。少なくとも都市周辺には戦闘用魔導兵を配備してあるから都市の中にいる限りは安全だ、衣食住は保証する。……本当に、すまなかった」


リュウさん、そしてキララ組の方へ向かってスタディグが膝を折り謝罪する。


声は音魔法が発動しているのか広間にいる全員に聞こえるほどの大きさになっていた。


「食料や衣食住の心配は無いんだな、わかった」


そう言うとリュウさんがスタディグを立たせてキララ組の元へ共に歩き出す。


「君たちを巻き込んで、すまなかった。必ず、元の世界へ帰すと約束する。死ぬと帰還が難しくなる。絶対にあちらへ帰りたい人は、フィンクス大陸の都市で生活を送って欲しい。勝手をして、すまない」



スタディグ像が膝を降り、手を合わせてお辞儀をする。



誰かが、声を発した。


「おい!スタディグー!俺は誘拐されてこの世界に来て、度しょっぱつ負けイベントでめちゃくちゃ怖かったけどよ!




俺はなぁ、向こうにこの世界しか居場所がない引き篭もりだったんだ!

無くしてた、生き甲斐をくれてありがとう!」



そう答える声が聞こえた。他の人々も無理やり連れてきた事には怒ってはいるものの、憧れの世界に招待してくれた事は感謝している

ようだ。

スタディグに怒ってからフォローする声もわんやわんやと聞こえる。


スタディグがめちゃくちゃペコペコするのはちょっと面白かったのだ。



「む、コウモリブタの通路が無いな」


スタディグがそう言うと目がカッと発光した。


天井にあったステンドグラスのいくつかが解放され、外から多くのコウモリブタが飛来する。


たわし達やリュウさん、キララ組に向かって何匹ものコウモリブタが舞い降りて一斉に呼び出し音を発した。









リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ




「「「うるせぇええええ!!!」」」





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